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悪夢

その日は、同じような夜だった。


「おかーさん!今日の夕飯はなあに??」


「今日は肉じゃがよ!!」


「わーい!!」



お母さんは汗まみれでそのまま浴室に入る。

炊飯器のスイッチを入れてお風呂に入った。


お母さんが作る肉じゃがは炊飯器で作る時短レシピだ。



時間がたつにつれていい匂いが部屋中を充満する。



今日はお母さんの誕生日だ。

ちょっと驚かせようとした。



お母さんはいつも30分くらいお風呂に入る。

お母さんにもらったお小遣いをためていた。


何を渡したら喜ぶかわからなかったけど、

とりあえずコンビニに向かった。

ばれないように電気はつけたままで。

私が家にいそうな感じで。




コンビニで何を買うべきか。

お母さんはいつもお仕事で疲れている。

ならば、疲れないようななんかそんなものを渡せばいいのかもしれない。



「よし。。」


買った。

あとはちょっとお母さんを驚かせて・・・

家に私がいないってだけでも・・・驚くかな。



だからあえてこの時間に

外に出た。












私は、空気が入れ替えられた、真っ暗な部屋に帰ってきた。

消したはずのない部屋が真っ暗になっていた。

粉々に割れた窓ガラスを見ながら。













私は起きた。

目をこすりながら、涙をためながら、

その涙をぬぐいながら。


あの日からどのくらいの時が経ったのだろう。




母さんを傷つけた犯人はいまだ見つかっていない。

金目当てだったみたいだ。

たまたまお風呂から出てきたお母さんは鉢合わせになり

そのまま犯人がもっていたバットで1発、2発、3発。



致命傷にはならなかったものの、あの日から母さんは

カレーも肉じゃがも作ることができなくなった。






現実から目をそらしたかった。

身よりのない私が暮らしていくのにこの社会は厳しかった。

それでも支援したいという人は現れた。



その人は悪い人には見えなかった。

表向きには悪い人ではなかった。

だいたいお金もない、身寄りもない小さな子供によってくる

大人の目的なんてたかが知れていた。



何かうま味がない限り。

うちはお金はない。

資産もない。

私はそういう子供たちが集められている場所に入ることになった。



そこでの暮らしは思い出したくもない。


私は世間から「女」として認識されるくらいの年齢には

そこを飛び出した。




お母さんと一緒に暮らしたい。

お母さんを楽させてあげたい。

お母さんのカレーをまた食べたい。




ただそれだけ。

だから飛び出た。


生きていくためにはなんでもやった。

そうしていく中で、私はあの人に会ったのだ。






「メイ」というダンサーに。


メイは私と同じ境遇だった。

ダンスでのし上がった。


ダンサーになる前は何をしていたかよくわからないけれど、

彼女も同じだったそうだ。




「ダンスってそんなに人生を変えられるものなのか。」


だとしたら。




私は素人ながらダンスパブのようなところでバイトを始めることにした。

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