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金と命と百合

テルとの顔合わせを終えた私は、

病院の外に出た。



「お迎えにあがりました。」



黒ずくめのスーツの男に、黒塗りの高級車。

私はなぜりょーちゃんにこうやって拘束されているのか

ふと疑問に感じた。



表向きは世間の風当たりの強さを感じさせたくないということ

なのだろうけれども、なんだろうな。



ダンス部である以前に、私は健全な市民なのだ。





「いや、今日は自分の家に帰るよ。」


「・・・・・。それはわが雇用主の意に反します。」


「それは君とりょーちゃんの指揮命令関係においてだろ?私は関係ない。」


「ですが・・・・」


「要は君がわたしを守り切ればいいのだろう?だとしたら

私の家の周りを張ってもらって構わないから、家に帰してほしい。」


「・・・・・。わが雇用主に確認します。」


「いいよ、別に。タクシー拾って帰るからさ。」



黒ずくめの男は携帯で電話をし始める。

そんなことは知ったことでない。



私はタクシー配車アプリを立ち上げた。




「ぐえ、、、ここから家までだと4000円かあ・・・・

高い買い物だ。」



それでもあんな隔離生活まっぴらだ。


だってそもそもテルの企画に乗っかるならあんなところで

リモート的な生活を送るわけにはいかないのだ。




キャスティング通りにやらねばならない。




そう。

私はテルの企画は悪くないと思っている。

だけど、この企画は私一人では遂行できない。



だから、人と会う必要がある。



買った高い機材も実はすでに自分の家に送る手はずは済ませた。



あとはこの体が家に戻れば事なきを得るわけだ。


「どうだ?雇用主は忙しくて出れないか?」


黒ずくめの男に手向けの言葉でも送ってやるかと思って声をかけてみた。



「もしもし・・・?大丈夫・・・ですか?」



「っ・・・・・・」



「なんだ?りょーちゃんと電話してるんだろ?」



「それがですね・・・なんだか様子がおかしいんです。」



「ちょっと変わってくれる?」



携帯を黒ずくめの男に渡してもらう。





「りょーちゃん・・・・?」





電話の先から聞こえてきたのは下卑た笑い声。


その中に聞こえる何かを押し殺すような女の声。


「うっ!」という声とともに

息使いが荒いようなそんな音が聞こえてきた。

何かを蹴り飛ばし、突き飛ばすような音。




そのあとはすすり泣く、女性の声。





「ねえ・・今りょーちゃん、どこにいるの??」



「た・・・・たしか。瑠璃市駅前のダンススタジオで練習しているはずです・・・・・」





「至急、そこに連れていって。あんたも。できればあと1人くらい

ボディカードがほしいところだけど・・・・」



「はあ・・・・しかし・・・・・」



「わからないのかしら?あなたの雇用主が傷ついてるのよ?

守ってやらないの?」



「しかし・・・・そのようなことは契約に・・・・」





ドン!!


札束を出す。





「あんたを臨時で雇うわ。私の言う通りにしなさい。」



軽く100万円はある。



「は・・・はあ。かしこりました。」




嫌なの世の中だ。

金がなければ人助けもできないなんて。


だが、私はお金を出してまでりょーちゃんを助けるべきだと思った。



黒塗りの車は、瑠璃市駅前まで高速ですっ飛ばしていった。


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