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話すことのないMTG

頼んだアイスコーヒーの氷がカランと音を立てて溶け出した。

アイスコーヒーの中身自体はとっくに飲み干されている。


このレストランは夜勤者の為にも開かれており、

私が来たときはぎりぎりランチメニューだったのが、

いつの間にかディナーのメニューになっていた。


追い出されるかと思いきや、病児保育にも力を入れている病院のようで比較的

夜間も門戸を開いている病院なため、追い出されることはなかった。








いや、追い出された方がよかった。



「は・・・はじ・・めまして。」



それ以来だ。



DM上ではテルと名乗っていた青髪の女の子は

何も話さなかった。




「えっと趣味は?」

「どの辺住んでんの?」

「仕事は何やってんの?」



すべて無反応。


何か話そうとしていた気配はあったものの、

口を開こうとすると謎に「ひゃう・・・」

とか細い声を上げて、肩をすくめてしまう。


前髪で目元を隠しているが、ちらりと見える瞳は

藍色のきれいな瞳だ。




あんなに熱いDMを送った人物とは思えないくらい、

無口であった。




ダンス部にはあまりいないタイプだった。


ダンスは自己アピールがとても大事な競技だ。

部長へのアピールもだし、観客へのアピールも大事なのだ。



だから自己主張ができる子が比較的多い。

もちろん、寡黙なタイプもいるが、必要に応じて会話をするはたまた、

計算して寡黙キャラを装うタイプに分類される。




だからテルのように肩をすくめたまま、ときおり上目遣いでこちらを

ちらりと見て、少し顔を赤らめたと思うとまた顔を伏せるタイプの子は

はじめてだった。


服装もGパンに黒パーカーと地味目な印象だ。


ただ、スタイルはよさげでスラっとしているのが、

パーカーごしにもわかる。




さて、レストランから見えるのは夕焼けから夜景に変わった。





「きれいな夜景だよねえ。」



リアクションを期待せずに独り言のように発言してみる。




「・・・・・・っ。」



何か話したそうにしている。



「さて、そろそろディナーになるわけだけれども、

私もそろそろ帰らないとお迎えがあるのよ。」




「・・・・・っ!!」




そう話すとテルは明らかに焦りを見せた。





テルは脇に抱えていたリュックから何かを取り出す。





1枚の紙。


それを私に見せてくる。





「何これ・・・・?企画書??」




裏面を見る。




すっきりとしたデザイン。

しかしながら、あますことなく企画の趣旨や目的などを見やすく

書いたプレゼン資料だった。



本人から説明がなくとも理解できる。





ああ。





「つまりさ、この通りやれば動画再生数が伸びるってことなのかな?」



テルは2,3度頭を縦に振る。

目で訴えかけてくる。




企画内容は悪くない。。。

ただ。




「これ・・・・私一人じゃ成り立たなくない?」



「・・・・っ・・・」



テルは親指を噛む。


私が監督で、、だってダンサーが後2人は必要だもの。





テルはもう1枚紙を出してきた。




「ああ・・・・・まじか。」




それはキャスティングや脚本が書かれた、プレゼンの詳細資料であった。

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