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一人きりのワルツ

「米島さーん、第2診察室へどうぞ。」



診察室に入るのを見届ける。



「先生・・・・この前の検査結果はどうだったんですか??」


「榊原さん落ち着いてきいてください。米島さん、あなたの病状は・・・・・」









診察室から出てくる。


「アリン・・・・どうだったの??」


アリンは首を横に振る。


「そう・・・・」


「ごめんね、メイ。」



「仕方ないよ。できる日まで一緒だよ。」










私はアリンと病院の前で別れた。

午後は練習をしなくてはならない。

私たちは背中を預けあった存在だ。



空を見上げる。



夏空はこんなに青く澄んでいるのに。

私にはそれが青くは見えなかった。


視界が揺れる。

感覚がおかしいのだろうか。


前から来たそれに私は気づくことはなかった。










♦♦♦

目を覚ます。

これは誰の夢だろうか。

誰の思い出だろうか。


「あ・・・・・」


車いす生活になってから、排せつ行為が非常に不便だ。



「また・・・やってしまった。」


頑張れば間に合うのに自堕落な性格なのか、自覚がないのか、またやってしまった。


「まあ・・・いいか・・・・」




下着なんていくらでも替えがあるから。

また洗って干せば元通りだ。



私の体は1つだけなのに。




「人間は不便だな。」


取返しのつかない、故障が人間にはある。

それはけがかもしれないし、病気かもしれない。


ただ私はまだリハビリをすればもとに戻ることができそうなあたりは救いがあるのだろう。



「まあ・・・今やそのダンスをする場所すらないわけだけどさ。」



のそのそとした動きで下着を替えて、鏡の前でお気に入りのショートカットヘアを櫛でといて

人前に出せるくらいには整える。



もう人前に出ることはできないのかもしれないのに。




何かできることはないか。

踊ることができないか。




いや、私は踊ることはできないのだけれども。






「部活の解散とか・・・・瑠璃大学始まって以来じゃね?」



ふふっと笑う。

泣けてくる。



急にやることがなくなって、心にぽっかり穴があいてしまった。


カーテンを開く。



「ああ・・・今は夜だったのか。」




りょーちゃんにこの部屋に押し込められて1か月は経っただろうか。

大学の授業はおりしも、リモートでもできるようになっているから単位は何も問題がないのだけども、

今日は全部すっぽかしてしまった。



携帯が鳴る。




「今日、何食べたい?足りないものは?」



りょーちゃんからだ。

この連絡だけが1日3回来る。




なんて便利な生活だろうか。

授業は家で受けられて、

ごはんも日用品も、嗜好品もすべてりょーちゃんが調達してくれる。



そう。

何も困ることはない。



なのに、なんでだろうか。






ふとした瞬間にこの瞳から流れ出る涙は、

いったいなんなのだろうか。









このりょーちゃんは本当にりょーちゃんなのだろうか。

私は世界に一人ぼっちなのではないだろうか。

月明りが煌々と私を照らす。



照らすことができるのはあなたしかいないんだよと言わんばかりに。

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