思いもよらない
そんなはずはない。
私は・・・
こんなことの為にあいつを落としたわけではなかった。
「今回の事故を受けて、イベントの参加自粛を大学から要請されました。これにより、
瑠璃市から受けたお話は瑠璃体育大学の舞踊科にお願いすることになりました。」
その言葉を絞り出すように発した。
見ていられなかった。
歯を噛んで、声を震わせながら、涙をこらえているのがよくわかる。
そんなりょーちゃんの姿を見るために、あいつをあの練習場の
仄暗い底にたたき落としたわけでなかった。
「そ・・・・そんな!!りょーちゃん、私たちが悪いわけじゃないじゃない!!あの練習場が
整備を怠ってその結果、ルナが落ちて・・・・それを私らのせいにするって・・・・」
りょーちゃんは何も言わなかった。
ただただうつむいていた。
何かどろっとしたものが胸の奥からあふれ出ないように。
「もう決まったことです。解散。私たちは、後期のダンス大会に向けて目標を切り替えていこうと
思っているわ。」
りょーちゃんは私の方を見ることなく、全体に向けてそう宣言した。
そう言って出て行ったりょーちゃんは練習に出ることはなかった。
部室全体に重苦しい雰囲気が立ち込めている。
副部長である私がとりあえずこの日は仕切らねばならなかった。
♦♦♦
その日の練習はつつがなく終えた。
ドン!!
部室に取り巻きの一人を呼んだ。
「あんた・・・・どういうことよ。」
「え・・・だって・・・ケイさん・・・床に穴をあけろって・・・・」
「なんでこんなことになるのよ!!あのルナってのが邪魔だったからちょっと脅かすだけでよかったのに・・・・」
「で。でも・・・・・」
取り巻きの一人に命じて行ったことだった。
練習場のエリカのポジションのところに床を開けろと。
で、その為に切れかかった電球をつけて、食堂のおじさんには
「ルナってのがたぶん、電球の付け替えの依頼に来るから、、電球を渡して。
自分でやるようにって。。。。」
食堂のおじさんは快諾した。
だって。彼の雇用は私の一言でなしのつぶてになる可能性があるから。
りょーちゃんとルナの知られざる関係性・・・・
「ああ・・・あの部屋はね・・・・・・お嬢様がオーナーに頼み込んで作った部屋なんだ。
大切な人の為に使いたいからって・・・・」
私はその事実をあの食堂のおじさんに聞いてから、
自分の中にある黒い黒いどろどろしたものを燃やすことしか考えられなかった。
燃やして燃やしても、決して燃え尽きることのないそれは・・・・・
燃えつきないこのどろどろしたものを吐き出すためには、それをぶつけるしかなかった。
しかしなんだこのていたらくは。
びりびりに破いてやった。
実行犯の部員の服を。
ここは、誰も入ってこない部室。
私は行き場のない怒りをその部員にたたきつけた。
「やめてください!!ケイさん!!」
どうにも止まらない感情を。
ぐちゃぐちゃにしてやった。
口封じも兼ねて。
私の心の底にある本能的な欲求と鬱憤をすべて吐き出して。
もう立てないくらいに。
痛めつけてやった。
そうするしかその時はなかった。




