臭い朝
朝になった。
山間の合宿所だからかとんびの鳴き声がする。
そんな自然の目覚まし時計で私が目を覚ました。
昨日のやり取りを思い出す。
「胸糞悪い・・・・・」
そう胸糞が悪かった。
あんな欲望と虚勢にまみれた空間。
気持ち悪かった。
なんなら。
「あ、おはよう、エリカ。」
「・・・おはようございます。」
ルナさん。
私のダンスのサポートをしてくれる、ショートヘアのボーイッシュなんか時の先輩だ。
そう昨日まではそんな印象であった。
「エリカ・・・・その勘違いしてくれるよな!私はエリカのダンスを見込んでサポートしてんだぜ!」
「あ・・・・はい。」
どうも気持ち悪い。
同姓とはいえ、そんな性欲の対象としか見られてないのだとしたら。
非常に嫌悪感を露にしてしまったのだろうか。
「あーし・・・行きますから。」
「あ・・・うん。じゃあ。また練習で。」
24時間一緒にいることなんて。
気持ち悪い。
♦♦♦
ああ胸糞悪いったらありゃしないよ。
私は鏡を見る。
メイクのしすぎってことはわかっていた。
肌はすでにボロボロで見る影もない。
いつものように赤いアイシャドウを入れて、
髪をポニーテールにする。
「くそ!!」
思わず、洗面台をたたく。
同室の部員はまだ起きていなかった。
りょーちゃんに思いを寄せられているくせに、
あんな乳だけの女になびくルナ。
だから関係をぶっ壊してやりたかった。
性的な目で見られてるのをとても嫌がることは知っていた。
「そりゃあ・・・あんなことがあれば・・・・」
そうエリカの経験をもってすれば。
特に同姓からそういう目で見られることにアレルギー反応くらい起こすだろうと思って
カマかけをしてみた。
しかし。
ルナが本当にそういう目でエリカを見ていることが許せなかった。
りょーちゃんがかわいそうだ。
あれが演技だとは思えない。
これでいいのだ。
エリカは居場所をなくし、ルナは自身を失うだろう。
そして、りょーちゃんの寵愛すら受けることができなくなったあいつに居場所はないはずだ。
笑いがとまらない。
だって、それが私の望んでいた世界だから。
「さて・・・・・・。」
そろそろ朝練の時間だ。
あいつらの間に溝ができているの見にいくことにしよう。
♦♦♦
いい機会だったのかもしれない。
エリカの私を見る顔。
汚物を見るような顔だ。
そりゃあ、そうだろう。
エリカの身に起きたことを考えればそういう風にみられているとわかれば距離を取るはずだ。
「これでいい。」
それは部員の自立を促すことに他ならないのだから。
24時間依存されても正直困る。
だって。
そういう風に周りに見られるようにふるまってきたのだ。
それをタイミングよく、ケイがエリカにけしかけてくれたのだ。
これでいい。
あとはエリカが邪魔されなければ。
すべてはうまくいくのだから。
「よし・・・・・」
私は顔を洗い、練習場に向かった。
♦♦♦
「はい、じゃあ今日はこのパートを練習してもらいます。」
りょーちゃんの掛け声で部員が一斉に動く。
これだけ難しいフォーメーションを組んで、動けるようにした
りょーちゃんはやはりリーダーシップが強烈なのだろう。
「あ・・・・」
りょーちゃんに目をそらされる。
嫌われてしまったのだろうか。
「ん・・・・?」
そういや、練習場の端っこの電気がちかちかしている。
「あとで、食堂のおっさんに頼んでみるか・・・・」
電気がかなりちかちかしているのだが、あの電気の位置はちょうどエリカのフォーメーションの位置である。
「集中力をそいでもな・・・・」
私は食堂に行き、電気を取り換えるよう頼んだ。
そうこのことが最初の悲劇だったのだけれども。




