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同級生を彼女にしたら、世界最古の諜報機関に勤務することになりました 〜サイドストーリー〜  作者: 林海
第六章 新たなる道へ編

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第1話 呼び出し


 来ると思っていても、呼び出しはただただ動悸を伴う。


 俺は東京にいた。

 陣痛が始まったという知らせ。

 すぐに、慧思にあとを任せ、新幹線に飛び乗る。

 車内での一時間の間、予め作っておいた自作のマニュアルを読み返す。


 駅から徒歩8分の産婦人科に美岬はいる。

 8分は微妙だ。

 走れば2分。

 タクシーなら1分。

 その1分の差を焦る自分は我慢できるか、だ。


 それだけじゃない。

 あまりに短距離で、タクシーの運転手に嫌な顔をされるのもためらう理由の一つだ。


 決めた。

 それでもタクシーで行く。



 そして……。大きな問題が一つ。

 生まれてくる子の性別を、俺も美岬も聞いていない。

 男の子であれば、美岬の一族の呪縛を離れ、俺たちの子はおそらくは普通の人生を歩ける。

 でも、女の子であれば、呪縛から解放されないかもしれない。

 だから、聞く決心が最後までつかなかったし、医者にも言わないでくれとお願いしていたのだ。


 だから、赤ん坊が生まれるなり、俺は大車輪で買い物に走らないといけない。

 ベビー服にしても、男の子用か女の子用か、あらかじめの準備ができていないんだから。

 名前の候補も絞りきれていないし、もう、泥縄が過ぎる。

 そして、なにより美岬、君が無事に出産を終えてくれないと、それこそすべてが始まらない。



 新幹線の車内でも、メールは届く。

 順調らしい。

 そろそろ、分娩室への移動になるみたいだ。

 陣痛に耐えながらメールを打つ、美岬の姿が脳裏に浮かぶ。


 「待っていろよ、あと二駅、すぐに行く」

 とメールを打って、すぐに後追いのメールを打つ。

 「出産は待つな。

 波が来たら、かまわず産んでください」

 と打って、さらに追撃。

 「冷静さを欠いたメール、申し訳ない」

 と。


 だめだな、俺。

 完全に舞い上がっている。


 新幹線がホームに滑り込むのと、分娩室へ移動するっていう連絡が同時だった。

 俺は走り、改札を超えてタクシーに飛び乗る。

 たぶん、血相が変わっていたよね。


 「目的地、〇〇産婦人科。

 走ってくださいっ!」

 運転手、気圧されたように走り出す。

 こちらの焦りが伝染したんだろうね。この短距離しかないってのに、走り出して一つ目の信号でメーターを倒す。

 なんか、激しく申し訳ない。


 「奥様が入院されているんですか?」

 運転手さんが話しかけてくる。

 「ええ、なんせ、初めてのことで……」

 俺も、なんか言い訳がましくなってしまう。


 ありがたいことに、次の信号は青だった。

 その次も。

 運転手さん、アクセルを思い切り踏み込んでくれた。


 到着。

 運転手さんに五千円札を押し付けて、車から転げ落ちて走り出す。


 「おめでとうございます」

 運転手さんの声を、俺は背中で聞いていた。


最後のストーリーですねー。

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