賢者の生まれた日
ある1匹の猩々が森の木々を渡り歩いて遊んでいた時のことです。
「うーん」と辛そうな声を出し前足を伸ばしている、この森の王者である狼を見つけました。
「狼さん、元気の無い声を出してどうしたの」
狼に声をかけながら、するすると木から降りてきた猩々。
「なんだ頭と体の疲れが取れないんだ」
首を振りながらため息声で狼は答えました。
毛むくじゃらの王の背中からぴょこんっと何かが飛び出すのを見逃さらなかった猩々。
「狼さん、私がノミを取りましょう。その間だけでもゆっくり休んで」
素直に喜んで伏せをした狼。
横に座りじっくりと目をこらし、ノミをつぶさに懲らしめていく猩々。
猩々はもう一度、狼に声をかけました。
「ついでに毛並みを整えておくね」
そう言って、長い指と爪を使い狼の毛を綺麗に梳きます。
あまりのゆっくりとした優雅で気持ちのいい時間に狼はウトウトと。
「さあ、これで終わりましたよ」
猩々が声をかけると、狼は「ふわぁ〜」っと欠伸をしながら立ち上りました。
そして1度ぶるりと全身を震わせると「あぁ、全身の霧が晴れたようだよ。ありがとう猩々さん」
「いいのいいの。だって私達はお友達だもの。毛繕いならいつでも手伝えるから、言って頂戴」
そう言って、また木々を渡り歩き去っていく猩々。
狼の毛繕いをした日以来、猩々には大きな動物小さな動物、色んな子達が並んで待つようになりました。
「猩々さんに毛繕いをしてもらうと、心と体が優しくなるもの」
そんな噂を聞きつけたからです。




