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第4話|母と同じ瞳の色の子
ディートリヒは、そっと一つ目の包みを覗き込む。
小さな顔。
柔らかな栗色の髪が、まだ湿り気を帯びて額に貼りついている。
やがて、瞼がわずかに震えた。
ゆっくりと、開く。
焦点も定まらぬはずのその瞳は――
深く、揺るぎない色を湛えていた。
ディートリヒと同じ色。
息を呑む気配が、静かに室内を満たす。
「……その目は、私に似ているな」
誇示ではない。
宣言でもない。
ただ、確かめるように。
その瞬間、家の未来が形を持った。
その隣の包みが、小さく動く。
リリアーナが視線を向ける。
柔らかな黒髪が、絹糸のように額へ落ちていた。
やがて、睫毛が震える。
ゆっくりと瞼が開いた。
淡い光を溶かしたような、澄んだ青。
まだ焦点は定まらず、それでも確かに――母と同じ色。
リリアーナの指先が、胸元のペンダントへ触れる。
同じ色だった。
冬空を閉じ込めたような、静かな青。
ディートリヒは、黒髪の娘を見つめる。
「……君に似たな」
低く、やわらいだ声。
リリアーナは微笑む。
「ええ。でも、髪はあなたに」
小さな交差。
血は混ざり、受け継がれる。
二人は顔を見合わせる。
それは誇りでも運命でもなく、ただ――奇跡だった。
冬の光の中で、二つの命は静かに未来を迎えていた。




