第2話|使用人の粛清
会議から数日後、大広間には再び緊張が漂っていた。
今回のディートリヒの訪問は、ベルナール家の若手使用人の粛清である。
ディートリヒの視線は冷たく、容赦がなかった。
その場にいる全員が、ひとたびその眼差しに捕まれば、言い訳など一切通用しないことを知っていた。
「リリアーナ嬢に不義を働いた者たちの処遇を決定する」
ディートリヒの声は静かだが、重みを帯びる。
一人一人、名前が読み上げられ、該当者は前に出される。
顔を伏せ、震える手で書類を受け取る。
その手は、もう自分の意志で動いているようには見えない。
「家の秩序を乱す者は、誰であれ例外はない」
ディートリヒは一切の情けを見せず、冷徹に続ける。
ヴィクトルは立ち会いの為椅子に座り、目を伏せたままだった。
かつての伯爵らしい威厳は完全に失われ、机にすがるように縮こまったその姿は、冷徹なディートリヒを前に無力そのものだった。
この場には、ヴァネッサもセリーナの姿はなく、リリアーナ嬢もまた立ち会わなかった。
宰相は、まだ婚約者である18歳の後継者に、この冷徹な光景を見せるべきではないと判断したのだ。
処分が下されるたび、若手使用人の肩が震え、涙が零れる。
しかし、その場の空気は容赦なく、悲鳴や泣き声は遠くにかき消される。
ディートリヒの声は淡々と続く。
「秩序を乱した者には、相応の処遇を施す。
理解したか?」
被告たちはうなずく。
だが、そこに希望も逃げ場もない。
「この家の未来を守るため、無駄な情は捨てる」
ディートリヒは書類を机に戻す。
その目は、次の段階――ヴァネッサの処罰へと冷徹に向けられていた。
ヴィクトルはかろうじて息をつく。
だが、その胸中は深く沈み、もう抗う力は残っていなかった。
静寂の中で、粛清は淡々と行われた。
しかし、その場にいた者すべての心に、冷たい恐怖が刻み込まれたのだった。




