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冷酷宰相は私だけを甘やかす  作者: 絵宮 芳緒
断罪

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18/41

第1話|家門会議

大広間は、家門会議のために整えられていた。


重厚な木製の長机が中央に置かれ、椅子が等間隔に並ぶ。


窓から差し込む淡い光さえ、張り詰めた空気に吸い込まれるようだった。


ヴィクトルは長机の端に座り、手を組む。

だが、その指先は微かに震え、目はわずかに泳いでいた。


伯爵家の“当主”として振る舞おうとする顔に、内側の動揺が透ける。


「本日は、私が陛下の命を受け、家門会議を開く」

淡々とした声が大広間に響く。


入り口から静かに現れたのは、宰相ディートリヒだった。


視線は会議室全体を一瞥し、誰一人として逃れられぬ圧力を放つ。


「先日までの混乱は、私がすべて把握している」


言葉に含まれる冷静さと鋭さが滲む。


一族の面々は息を呑み、机の上の書類に目を落とすしかなかった。 

この場に、ヴァネッサとセリーナの姿はない。

リリアーナは、その場に静かに腰掛けていた。


「これより、家の秩序を正す。

無駄な争いは許されない」


ディートリヒの声は静かだが、断固たる支配を示す。


ヴィクトルは短く咳をする。

否応なく、家の全てを掌握している男の存在を意識させられる。


「まず、当主に関わる議題からだ」


ディートリヒはゆっくりと視線をヴィクトルに向ける。


「現当主アデリーヌ殿は、病死とされていたが……何者かの策略により、毒殺を企てられていた。

が、我がシュヴァイン家でその身を保護しており、無事である。

また、後継者リリアーナ嬢のために、今後については全てを準備済みだ。

あなたの判断に委ねられるのはここまで」


妻が生きている事を告げられ、ヴィクトルの唇がわずかに動くが、言葉は出ない。


ディートリヒの眼光が、机に伏せた書類を通しても貫くように刺さる。


「家門の秩序を乱す者は、容赦なく裁かれる」

この声で、大広間の緊張は頂点に達する。


無言で頷く長老たち。


ヴィクトルは机を握り、僅かな抵抗を示すが、もはや声にならない。


ディートリヒはゆっくりと書類を手に取り、順序立てて指示を出す。


それは、これまでの混乱を整理し、秩序を取り戻すための布石であり、後の若手使用人粛清、ヴァネッサ処罰へと繋がる第一歩だった。


会議の終盤、ディートリヒの眼差しは、あえてヴィクトルを最後まで見据える。


「家の秩序は、私の掌にある。理解したか?」


ヴィクトルは息を詰め、微かに頷く。


だが、その背中はかつての伯爵らしい威厳を欠き、ただ縮こまった男にすぎなかった。

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