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 スキルが反応したのだろうガロンに起こされた。

 大通りを馬車が走っている。聖皇国の紋章を掲げた馬車だ。銀幕をかけている。


「あれは聖皇国の暗部の馬車ですね。私たちに聞き取りに来る前に逃げてしまうのがいいでしょう」


「逃げるったってどこへ。」


「ダンジョンです。深層部に潜ってしまえばこちらのものでしょう。」


「わかったすぐに出よう。宿も引き払う」



 準備した私たちは宿を引き払い、別れを告げた。ダンジョンに長く潜るからと。

 すぐさまダンジョンへと向かい急ぎ足でダンジョンを走り抜けていく。低階層はもう慣れたものでマップも頭に入っている。

 レイスの階層は煙草の鎮静効果を利用して消耗なく突破し、肉階層へとたどり着いた頃にはへとへとになっていた。


 時間感覚もなくダンジョンを攻略していったおかげでセーフティエリアには誰もいなかった。時間にして昼前。ここまで早く攻略できたのも何度も調査し最短ルート、最小の戦闘で済んだからだ。


「ここで食事をとってからすぐに深層へ向かいましょう。」


「了解だ。

 聞いていいか?暗部ってのはなんだ」


「簡単ですよ。他国へ製法が漏れてしまっていないか、国内での安寧を保つためにいる部隊です。

 消してしまえば問題ありませんから。そしてその権限は国外でも使用します。聖女の名のもとに活動する部隊ですから」


「あーあ、恐ろしい。外に出たくない。」


「わかりますよ」


 休憩を済ませた私たちは階層を進んでいく。

 七階層の森林エリアで牙鹿と戦闘しそして八階層へ向かう。

 階段を下りた先には山岳地帯が広がっていた。木は見渡す限り生えておらず、鳥系の魔獣が空を飛んでいる。


「・・・・・・空中戦等は苦手だな。このなかにイシュドラという名前の鳥はいるのだろうか」


「怒りますよ」


 ハゲワシのような魔獣がグエーと鳴いていた。私の名前の由来についてガロンに話さなければよかったと思いつつも短杖を取り出しいつでも魔術行使ができるようにしておく。


(Αναζήτηση)(εχθρών)」 


 魔術行使できるかどうか周囲の確認をする。


「冒険者は一パーティいるみたいなのでアロー系の魔術だけしようしますね。ここならどれだけ燃やしても延焼しなくてすむので楽ですし。」


「たすかる。どの方角にいるんだ?」


「北東の方角にいますが出口に向かってるみたいで接近してきてますね」


「退却しようとしてるのかもしれない、少し待ってみるか」


「魔素の流れから知り合いっぽいのでいいですよ」


「そこまで分かるのか?」


 私たちはすこし凹んだ岩場に入り彼らを待つことにした。湯を沸かしていつでも茶を入れられる状態にしている。ガロンはまめだ。



 程なくしてやってきたのは行きの馬車で同じだった黄昏れの旅のメンバーだった。

 金級パーティの黄昏の旅。ランクは同じだが熟練度は彼らの方が高く、剣士のナイル、盾士のジュドーの連携、斥候のライル、弓士のアルス、魔法士のマリーとバランスの良いパーティだ。

 旅路ではマリーは馬車酔いでまったく会話もできなかったが。

 特に大きな負傷をしている風には見えなかった。


「やあ、久しぶりだな!」


 ガロンが手を挙げるのに合わせて向こうも警戒を解いた。


「久しぶりじゃないか!」


 ガロンと剣士のナイルが腕と腕を合わせた挨拶をする。冒険者でよく見る挨拶だった。


「アルスさんお久しぶりです」


「久しぶりだね。そうか君たちもこの階層に来たか。ほら、マリー、馬車で一緒だった魔法士のイシュドラだよ」


「初めましてね。馬車では挨拶できなかったから。」


 握手を交わす。


「この階層は二人だけで潜るのはなかなか厳しいかもしれない。とにかく広い階層だ。注意するんだよ」


 アルスは忠告してくれる。

 私はガロンと目を合わせる。うなずきガロンが話し出す。


「黄昏の旅のメンバーは地上へ戻るのか?」


「そうだ、一度休息が必要だと思ってね。今回は長く潜ったからな」


「そこでひとつ話がある。」


「なんだ?」


 茶でも飲みながら話そうと誘う。もちろん毒見のため私たちから飲んで見せる。


「実は貴族の護衛依頼を受けたんだが、その貴族が危ない目にあう可能性があるんだ。」


「可能性ってのは?」


 アルスが聞く。


「聖皇国から使者が来てるのを見かけたんだ。それで厄介ごとに巻き込まれないうちにダンジョンに潜ってしまおうってね」


「なるほどなぁ」


 こういう場合冒険者は共感してくれる。貴族にかかわると面倒事に巻き込まれる可能性が高いのは共通認識だ。


「わかった。なにかあれば口利きしとく。しばらくダンジョンに潜るんだろう?もし何かあればダンジョン内で出会ったときにでもどうなったか話そう。」


「助かるよ。ありがとう」


「いいさ」


 そうして黄昏の旅のメンバーと別れた。

 もし地上で私たちの捜索がされていたとしてもダンジョンに潜っている、もし危険な状態になっていたとしても伝えにきてくれるそうだ。冒険者は冒険者同士の絆で助け合いをすることもある。私たちはいい出会いをした。


 今回の件で魔法士のマリーとあまり魔法について話をする時間がなかったのも助かった。私のスキルツリーは料理スキルで解放されているので話されても少し困ってしまうところだった。


 彼らが上階へ向かうのを見送ってから私たちも活動を始めた。

 他には冒険者がいない場面では私も制限をしなくて済む。


「さてイシュドラいきますか」


「なんですかそれ。」


「俺の出番なさそうだなと思ってな」


 ガロンが笑いながら言う。


「ではさくっと九階層目指して行っちゃいましょうか」

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