閑話:ガロン
俺は帝国出身の次男坊だった。
悪ガキで街に繰り出しては冒険者ごっこだって模造刀をもって近所のガキ共と遊んでばかりいた。
パン屋の娘のエラがよく余ったパンを持ってきてくれていた。
スキル授与の儀式で戦闘職を手に入れてやるってな。毎日の口癖だった。
結果俺は第六感。斥候職を勧められたよ。
悪ガキ仲間のダルは剣士、パン屋のエラは水魔法士だった。
俺は悔しかった。第六感でも剣士になれるとダルと訓練という名の打ち合いを何度もしたさ。何度も負けた。スキルには勝てなかった。それでもあきらめなかった。
成人したら俺は冒険者になると決めていた。
実際に冒険者にどうしたら冒険者になれるのか聞いて回った。剣での戦い方も教わった。
成人したその日に家を抜け出し、ダルとエラと三人で冒険者登録に行った。
夜寝ずの番の練習なんかもしてたおかげで難なく銅級冒険者になれた。
近くの森での冒険やドブさらい、薬草の納品なんかもこなした。順調に鉄級冒険者になれたさ。新しい冒険者タグがうれしかったのを覚えてる。
パーティ名は黄金の酒
同じ名前にして悪かった。どこかに眠る酒が無限に出てくるとされる黄金のゴブレットを手に入れて一級の冒険者になってやるという意気込みだったんだ。
いつか飲む日のために何度も酒をあおったさ。弱いのにな。
活動を続けていたらわかることがある。ダルはエラが好きだった。エラもダルが好きだったんだ。俺はそれが嬉しくてどこかさみしい気持ちになったが応援していた。休みの日には二人になれるようにしたりな。
もうすぐ銀級になれるってときだ、ダルもエラも俺のことを考えて銀級になるまで付き合わないと決めていたらしい、スタンピードが起きたんだ。
ダンジョンから魔物があふれ出してきた。多くはゴブリンで俺たちでも対処できた。
三人で固まって迫ってくるゴブリンを倒して倒して倒して、そして俺の第六感が働いた。何か来ると。
来たのはゴブリンメイジだった。つまり魔法を使うやつだ。
相手の魔法士が来てから戦況は悪くなる一方だった。退却しつつ敵を倒して、そして退却して。
応援の冒険者が到着するのを待ってたんだ。
俺の第六感が働いた。ダルに魔法攻撃がぶつかりそうだったのを押しのけて避けたんだ。俺にすこし掠っていたのかもしれない。もう覚えていない。
そこから戦況が悪くなった。
まず俺の頭がこん棒で殴られた。多分ダルもだ。今でも殴られた箇所の傷が残ってる。
スキルがビシビシと俺に危険を伝えてくる。そのおかげで俺は立ち上がれた、近づくゴブリンを倒していった。
狙われたのはエラだった。
ゴブリンは女を狙う。それは本当だった。
俺は気付くのに遅れてしまった。自分のことで精一杯で、
エラにゴブリンが群がっていて、
俺に迫ってくるゴブリンを倒さないといけなくて、
ダルは内臓を引き出されていて、
泣くことがゆるされなかった。
泣いてしまったら俺も死んでしまうから。俺も同じ目にあってしまうから。
エラの叫び声がずっと聞こえていた。
俺のスキルは俺のことに対してだけしか反応してくれなかった。
迫るこん棒、ナイフ、魔法攻撃、すべてに反応した。だから俺は生き残った。
だがダルを守ることができなかった。
エラの叫びを止めることができなかった。
応援の冒険者が来たとき、俺は膝をついた。周りを見ることができなかった。
冒険者の一人が俺を讃えてくれた。最後までよく耐えた。よく頑張ったと。
ダルは死んでいた。
エラは発狂していた。自分を守ることができないで、ゴブリンにいいようにされてしまって。そうして壊れてしまっていた。それでも生きていた。女だったからだ。
パーティは崩壊した。
ダルの墓標に俺は何も声をかけられなかった。エラを助けたかっただろうに。目の前でエラはまわされてしまった。エラは病院から出ることができなくなった。
俺は銀級冒険者になった。ゴブリン撃退の功績をもって。
どんな顔をしてダルの両親に死を伝えたのか覚えていない。どんな顔をしてエラの両親に病院へいることを伝えたか覚えていない。
俺は自分以外の誰かを守ることができないからソロで冒険者を続けているんだ。
がむしゃらにダンジョンに潜ったさ。それが金級。自分以外を守るスキルはないのに。
だから君に出会えて俺はよかった。初めて俺のスキルが反応したのが君だった。
俺の知りえない力を持ってる君に安心感を抱いた。
だから俺は君とパーティを組んだんだ。
たまに夢を見るんだ。あの頃の夢を。
君との旅は楽しい、そしてあの夢を見なくなってきたんだ。
だから、許してくれ。パーティ名をそのまま使ってしまったことを。頼りない俺を。




