26
見慣れた文字の羅列。
こんなにも無造作に古代文字が使われているとは思わなかった。
「Πέρα από το φως που μας καθοδηγεί βρίσκεται η αλήθεια...」
「何が書いてあるんだ?」
「導きの光の先へ真実がある、と」
その後ガロンと二人でライトを灯してみたりしたが何も変化は起きなかった。祭壇にはただそれだけ。だがどこかへ導こうとしている。
「謎が深まるばかりだが、とにかくここがダンジョンの正しいボス部屋なのは確かだ。部屋の中央に魔法陣が現れているだろう?」
その魔法陣に乗ればダンジョンから直接外へ脱出できるようだ。
「他のダンジョンにもこの文があるのでしょうか・・・・・・」
「探しに行こう。真実ってものが俺も気になる。二人なら行けるさ」
何も見つからず気落ちしていた私を慰めるようにガロンが言った。
確かにそうだ。他のダンジョンにも同じ碑文があるかもしれない。希望が湧いてきた。
「その前にギルドでこの説明をしないとな。さっさと済ませて次のダンジョンについて話し合おう。ついでにダンジョン攻略を進めていたら転生者や転移者が接触してくる可能性が高い。それも好都合だ。」
「はい。行きましょう先へ。といってもガロンに頼り切りなんですが・・・・・・」
「パーティだからな。構わない。それに新しいものを見つけるのが冒険者だ。地上に出たら打ち上げでもしよう」
そうして私たちは地上へと向かった。出口が違うらしく少し目を引かれてしまったがこのままギルドに報告へ行くとのことだ。
遺跡を調査していたら新しい扉を発見したこと、みたこともないボスが登場し倒したこと、ダンジョンロドップ品の売却についてなど。ありのままに報告していく予定だ。
ギルド受付で報告をしていた私たちはギルドマスターに呼び出されることになった。打ち上げはまたあとでだな、なんてガロンは笑っていた。
「つまりダンジョンの最下層がボスではなく一階層にボス部屋へ通じる扉があったということか」
ギルドマスターは壮年の元冒険者でとにかく体が大きい。ガロンよりも頭一つ分身長が高く二メートル近くあるのではないだろうか?髪をかき上げているがこめかみが少し後退してきている。
ぎろりと目が合う。
「君がうわさの冒険者か。ソロ活動していたガロンがパーティを組んだかと思ったら相手は初心者講習会で角鹿を一撃で仕留めた有望な奴だと聞いている。」
「うわさですか」
「単刀直入に聞くが君は転生者か?」
「違います。」
ギルド長の圧がすごい。
「転移者、転生者とかかわりは?」
「師匠が転生者です」
「イシュドラ・・・・・・」
ガロンが気にして口をはさむ。
「大丈夫です。いつか話す必要があると思いましたので。私は一時期転生者の師匠のもとで弟子入りしていました。ですが私自身はこの世界の人間です」
「なるほどなあ。」
ギルド長は顎を撫でる。
「誰の弟子だ? タニモトか? クラモチか?」
おそらく帝国に近い人間の名前なんだろう。
転生者は転生前の名前を名乗ることが多い。この世界に生を受けた直後からことばを話し、自らが転生者であること、以前の世界について話し出すのだそうだ。名前にしても一般家庭に生まれた転生者は以前の名前を名乗ることが多い。
「孤独の転生者と師匠は言っておりました。」
「孤独の転生者!?」
転生者がこの世界に表れて約十年、と言われているが台頭してきたのがここ十年という話で実際は二十五年この世界で過ごしているはずだ。クラスごと転生したと師匠は言っていた。中にはもう亡くなってしまった者もいるという。
そして十年前、転移者も現れた。
魔の年と言われたその年は、世界に厄際が訪れるのではといわれていたが今のところ何も起きていない。
「となると記録されていない転生者だからミノリタカサキのことか」
「そうです。それが師匠の名前です」
「なるほどな。納得がいった。」
転生者全体の名前については実は公表されており、積極的に交流がもたれている。生育環境の違いから衝突があるなどの話を聞いたことがある。
ほとんどの転生者転移者がこの大陸で発見されているにも関わらず行方不明になっていたのが師匠だ。
「それでミノリタカサキはどこに?」
「今はどこか放浪していると思います。私が独立できるようになったので好きにするそうです。」
これについてはもし聞かれた際にこう答えるとガロンと話し合って決めた内容だ。
「なので所在については私でもわかりません。」
「わかった。新種のボスが倒せたのも納得した。弟子ということはスキルツリーの育て方もなんとなくわかっているってことだろ?」
「そうですね。」
「ガロンがパーティを組んだのも納得した。よし!イシュドラと言ったか、銀級に上げてやる」
「いいんですか?」
「あぁ、ギルドとしてもこのままダンジョンを攻略してもらえるのは助かるしな。新しい部屋の存在についてなんかはいつでも情報が欲しい。既存の冒険者たちの生存率にもつながってくる。新しいギルドタグなんかはすぐに準備しよう。」
「パーティランクはどうなる?」
ガロンがきく。
「ランクは金級だ。おめでとう黄金の酒。そんでこの斧と新階層についての情報料は支払わせてもらう。」
それと、
「最後の転生者の情報についてもだ。これで全員の転生者の情報が手に入った。感謝する」
師匠の情報についてはどこで生まれたかは不明だが帝国内部の寒村でひっそりと生活をおくっていたということにしておいた。他の転生者となれ合うことを嫌い表に出ることはなかったと答えておいた。
これについてもガロンの知ってる情報と照らし合わせてあやしくない場所を選んだつもりだ。
ギルド長はダンジョン産特急ポーションについても売却してもらえないか期待をしていたがこれは手元に残しておくことにした。
これで金銭的に困ることはしばらくなくなった。




