25
扉を力ずくで開けようとするガロンを制し、魔素を流してみる。扉の溝がなんだか怪しいと思っていたが正解だったようだ。
扉が開くと階段が現れた。
階段にソーンの文字が乱雑に彫られている。
「さて、こういうとき冒険者はどうするんですか?」
顎を撫でながらガロンは言う。
「もちろん潜るさ。俺のスキルが反応してる。危険だってな」
「いけるところまでいってみましょうか」
二人で階段を下っていく。
光よ、魔法を唱え足元を照らす。
「ビシビシとスキルが反応してる。危険そうならギルドに報告するために撤退も考えられる。」
「どんな魔物が出るんでしょうね」
「楽しそうで何よりだ」
長い螺旋階段を下っていく。長い長い階段だ。
「俺も魔法が使えたらと思うことがある。帝国には魔法塔ってのがあってスキルの研究をしてるとこがあるんだ」
「もちろんガロンも使えますよ。というか誰でも覚えれば使えます。特別な技術はとくにないんです。」
「本当か!?」
「私としては何故スキルでしか魔法行使できないのかが不思議でしょうがないんですけどね。」
「教えてほしいと願ったら叶えてもらえるのだろうか?」
「今の世情じゃ難しいでしょうね・・・・・・」
わかりやすくがっくり肩を落とす。
知ってしまうと隠すことが難しくなる。教えることは出来てもその先が問題なのだ。
「そもそも魔法と魔術の違いが判らない時点でその魔法塔というところにもなにか情報統制のようなものがされている気がします。」
「・・・・・・正解だろうな、おそらく。転生者と転移者が関わっている。」
「となるとますますこの魔術形態を広めるのは難しくなりそうですね。追いかけられそうで。」
地下に行くにつれて周辺の魔素濃度が高くなっていくのを感じる。魔術行使をする際に注意が必要なくらい。
そうして行き止まりにたどり着く。そこには大型の扉があるだけ。
「ボス部屋だな。」
「ちょっと覗いてみるくらいってできるんですか?」
「入って出られるパターンと入ると倒さない限り出られないパターンのどちらかだ」
「むう。隙間から見られないか確認してみます」
ドアは力を込めて押さない限りあかないような重さをしている。隙間を探して覗きこんでみると何か魔物が腕を組んでいる様子が見られる。
「なんの魔物かわからないですね。」
「どれどれ、あっ」
ドアが開いてしまった。と同時に部屋に明かりが灯されていき、三体の魔物がいることが分かった。
上半身はミノタウロス、下半身は蛇のような個体が三体。
どれも斧を持ち、鈍色のうろこを持っている。体長は三メートルほど。
二人の体が部屋の内部に入ってしまった瞬間ボスの目が開く。
「ボスを倒さないと出られないようだ・・・!」
ガロンが心を決めた声を出す。
私はサイドポーチから自分の髪の毛を取り出しミスリルのナイフに巻き付け地面に突き立てる。
「やりましょう!雷よ!」
「おうっ!」
三体の中心に雷が落ち、そして電流が流れ込み三体共に衝撃を与える。
ぷすぷすと煙を上げている様子からダメージが通っている様子だ。
「もう一撃行きます!」
「了解!」
「炎の槍!」
三本の槍がボスへと向かう。苦し気に呻きながら斧で振り払おうとしていたが斧ごと焦がして槍が刺さり延焼する。
「左をやる!」
「了解!右行きます!」
駆け出しボスに肉薄する。しぶとい、まだ息がある。
私めがけて斧が振り下ろされる。
「風よ!」
自身に風を当て斧の攻撃を避け腕を駆け上がる。もう片方の斧の攻撃が来る前にミスリルのナイフで喉元に突き立て体重をかけて引き裂く。
飛び降りると同時に距離をとるように走る。背後で斧が迫る音がした。
振り返ると真ん中のボスが私を狙って斧で右側ボスの喉元をさらにえぐっていた。こちらに向かってくるボスの背後からガロンが走ってくる様子が見て取れた。左側のボスも倒し終わったようだ。
ガロンが蛇の部分に剣を突き立てる。
ボスが振り向くと同時に風で加速し蛇の付け根近くにミスリルナイフを突き立てる。
「雷よ!」
ナイフから直接電流を流し込む。ボスの体がのけ反る瞬間を逃さずガロンが心臓に剣を突き立てる。
ボスの体が粒子となり消えていく。私たちはその場に膝をついた。
「はぁはぁ、っイシュドラ!大丈夫か!?」
「だい、じょうぶです」
息を整えながらガロンを見ると電流をくらってしまったのか手がここからみても火傷していた。
ミスリルのナイフを地面に突き立てる。
「回復」
ぽわっと光がガロン全体を包む。
「ありがとう、イシュドラ。たすかった。」
手を開いたり閉じたりしながら言う。もしかしたら手が剣から離れなくなっていたのかもしれない。
「こちらこそすみません。無事で何よりです」
「こっちこそ扉を開けてしまったからな、それよりもあの大技は何なんだ。」
「秘密です」
自身にも回復をかけながら立ち上がる。ボス部屋には宝箱が三つ現れていた。
最奥に祭壇のようなものがありその場に出現していた。これが初めて見る宝箱だった。
「それよりも宝箱ですよ!早く開けましょうよ!」
「わかったわかった」
ガロンと笑いながら祭壇へと向かった。
両手で抱えられるくらいのサイズの宝箱が三つ。どれも銀色だ。
「この規模の遺跡で銀等級の宝箱が出るのは珍しいな。」
そう言いながら三つとも開けていくが金貨がひと箱、斧がひと箱、ダンジョン製の特急ポーションが一つ、とまあまあな結果だった。斧はいらないから売却してしまおうと話す。
中身をバッグに移すと宝箱は消えていく。宝箱のほうが価値があるのではないだろうか。
「!」
消えた先の祭壇に本のような彫刻があり、古代文字が刻まれていた。




