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冒険者講習会は銀級冒険者が引率して森の中で一泊するというものだった。
途中採集に必要な知識を教えてもらう。
「この森では薬草が度々群生している。全部採ってしまうと次がなくなるから注意だ。
根まである程度掘り起こしたら土を軽く落として大体五本単位で納品する。」
講習会の最初に配られたガイドブックにメモを書き込んでいく。このあたりの地図なども載っておりしばらく使えそうだ。
森を歩きながらこうやって指導を受けて、そして目的地で一泊する。なんとも親切だ。
大体同じ年頃の子たちが集まっているので少し浮かれた雰囲気だ。
「俺はダイ!お前は?」
片手剣を持った少年に話しかけられた。今日の私はさらしを巻いて麻のシャツに胸までのアーマー、腰のベルトには鉄製のナイフと短杖を差している。誰も彼も似たりよったりな恰好をしている。茶髪の剣士も同じようなものだ。いらぬ面倒を避けるために私も今日は少年の恰好でいることにした。
「イシュドラだ。よろしく」
「お前短杖差してるってことは魔法使えんのか?ローブ着てねえから分かんなかったよ」
「森歩きだとローブが邪魔になったり暑かったりするからね。それにこの恰好の方が楽でいい」
「どんな魔法使うんだ?良ければ俺らのパーティに参加しないか?」
初心者講習会は勧誘の場でもある。
「あまり魔法回数は多い方じゃないんだ。それにもうパーティも決まっててね。」
「あーあ、まじかよ。気が変わったら来いよな!」
魔法回数とは、体内魔素、つまり魔力量によって使える魔法の回数が人によってまばらである。魔力量が少なければ魔法行使回数も少なく、魔力回復薬の使用頻度が高くなり赤字になりやすい。
あと何度魔法行使出来るかは冒険者の生命線となる。と先ほど引率の冒険者が言っていた。
皆が色めき立ってるのにも理由がある。ある程度力を見せることが出来れば引率冒険者からの後押しで銅級から鉄級へとこの講習会のなかでも昇格することが出来るからだ。
この森の中で出る魔獣といえば角兎や大鼠などの小型ばかりだそうだがまれに角鹿や牙鹿が出現するとか。運が良ければさっさと倒して後押しが欲しいものだ。
キャンプ地へと到着し、各々テントを張っていく。
私もこの日のために購入した簡易テントを準備していく。このあとは少し自由行動になる。
Αναζήτησηεχθρών小声で唱える。周りに魔力を使い火を起こしている者がいるのでこの程度の魔素使用量なら気づかれないだろう。
一点に目当ての魔獣を見つける。多数点在しているのは角兎のようだ。
水を汲みにいくついでに仕留めてしまおう。
「君はこういった野営には慣れてるようだね」
引率の銀級冒険者のうちの一人が話しかけてきた。ヤアドという索敵役だったはず。獲物に気付いているのかもしれない。
「元々森で生活していたのでこれくらいはなんとか。」
にこりと笑って胡麻化しておく。
私の歩みに合わせてついてくるので気付いているのだろう。新人がどう行動するのか見るのが彼らの役目だ。
「この先に何がいるかわかるかい?一人だとこういう時危険だよ」
「何かがいるのは分かります。魔法が少し使えるので試してみてもいいですか?」
「どうぞ」
ヤアドは少し距離を開けながら私が何をするか見るつもりのようだ。
川の先に角鹿がいるのが見える位置まで来た。私は短杖を取り出し弓を引く動作を行う。左手は前、右手を引き短状の先端に魔力を留める。
「ふぁいやーあろー」βέλοςφωτιάςと唱える。
真っ直ぐ飛んだ矢はこちらに気付いた鹿の右目から頭蓋へと刺さる。
「ひゅうっ」
ヤアドが口笛を吹いた。これだけ出来れば充分だろう。私は満足して鹿の元へと向かう。
「一撃でこの威力とは驚いた。なかなかの魔力を練ったんじゃない?」
「そうですね。もう一度放てるかどうかというところです」
二人で鹿を持ちキャンプ地へ戻る。水袋に水も入れたのでなかなか重さがある。
すこし目立ってしまったがこれくらいならいいかな。
「血抜きして肉は夕食に食べてしまおうと思うんですが、先輩方もどうですか?」
「ヤアド、どうだった」
「一撃だったよ。まだ余力もありそうだ」
リーダー格らしい剣士がこちらをみていう。
「まさか講習会で新鮮な鹿肉が食せるとはな。持ち帰りたいのなら手伝うが?」
「いえ、折角なので食べてしまいましょう。角と毛皮だけでもなかなかの重さがあるので充分です」
周りの新人冒険者からの視線が熱いが気にしない。
鹿のシチューと肉を焼いて内臓などは掘った穴に捨ててしまおう。
自由行動時間は平和的に終わり、夕食も先輩方の助力もあり平らげ、あとは野営だけ。
寝袋を体に巻き付け寝ずの番をする。たったこれだけだ。
一日歩き詰めのあとに寝られずにいるというのは新人の冒険者には堪える。
それでも辺りには人が多くいるし講習会という名目だから恐ろしいことは何もない。森は夜中でもうるさいくらいに生命活動を続けているがその音が恋しくなる程度には人の声がする。何度目かの邪魔が入った。
「俺はルイ、君にうちのパーティに入ってほしいなって思ってるんだが」
「もうパーティは決まってるのでお断りします。すみません」
そうだよねと足早に去っていった。冒険者達もランク上げを早くしてしまいたいんだろうな。
軽く目を閉じ、休息をとる。寝るわけではなく意識は外に向けて体を休めるのだ。




