閑話:ギル
冒険者になろうと思ったのはいつからだったか。
父がそうだったから?物語の主人公に憧れたから?
村を出て冒険者登録をし、それからは順調だった。仲間にも出会えて、剣士の俺と攻撃魔法主体のルーナ、神官のアマミ。さらに斥候職か盾職を仲間にいれて編成を固めてもいいとさえ思っていた。
父は早世だった。魔獣に食い荒らされ残ったのは剣のみ。俺は形見の剣に誓った。冒険者として大成してやると。
父の階級を超え銀級となり、アマミのクラスアップのためにこの聖皇国へ来た。魔法が禁止されているのでルーナには肩身が狭い思いをさせてしまうが、回復職のランクアップは今後のパーティの生死を分けることになるだろう。今のうちにクラスを上げておけば新しいメンバーの勧誘もしやすいという考えもあった。
拠点にしている国のギルド受付のミラと良い仲になっていて、食事や何度か寝屋を共にしたりもした。
パーティ内で色恋沙汰にならなかったのも良かった。俺たちはミスリル級を目指して真剣だったさ。
形見の剣で、どこまでも上り詰めてやるってな。
だから今回の依頼も順調だった。
ガイド役の少年も当たりで慎重かつ的確に熊のいる位置を割り出し、俺が首を裂いて息絶えるまで待つ。確実に仕留めていった。討伐照明の右手を切り落として渡してくる気の利く奴だった。空間拡張パックが使えないから普通のバックパックに入れてルーナとアマミに分担して持ってもらっていたのが悪かったのか。小ぶりな熊ばかり出てくるから調子に乗ってしまっていたのか。
あぁそうだ、一時休息として携帯食料を齧りながら腰を落ち着けていたら血の匂いに寄せられて二メートル程の奴が出てきたんだ。
爪が腕をかすり怪我を負ったが首を確実に剣で切った。呼吸が出来なくなったはずなのにしぶとく暴れまわって、イシュドラが手斧を頭に投げて気を引いた隙に俺が再度首を裂いてやっとくたばった。久しぶりに手ごたえを感じたね。ここまで熊がやるとは思わなかった。
討伐証明の切り落としてもらい、亡骸の傍らでもう一息休憩をしようかという時だった。イシュドラが「これは雌だ」って言ったんだ。なら俺らが獲った手はもしかしたら子熊のものだったのかもしれない。なんて話していたら奴が来たんだ。
赤い目をした大柄な熊が。毛皮が赤く、すぐにレッドベアだと気付いた。
最初にアマミが右腕で裂かれ、次に俺を左腕で狙ってきた。すんでのところでルーナが火魔法を放ち助かったが杖もない魔法職の魔法なんて牽制にしかならない。
ルーナが裂かれた。
俺は剣を奴に振りかざした。
頭部に当たった刃は折れて、それでも頸を狙った。俺は折れていなかった。
どこかにいたイシュドラが奴の背後から頭部へナイフを突き刺し捻ってとどめを刺していた。
あれはミスリル製のナイフか、あんなもの持っていたなんて。
沈むレッドベアとまだ警戒しているのか少し距離を置くイシュドラ。
助かった。
ルーナとアマミは無事だろうか。
まだ俺たちはやれるだ・・・・・・ろ




