表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その従魔おかしくないですか?~ダンジョンボス(元人間)ですが、主人の平穏な生活目指して頑張ります~  作者: 東風 晶子
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/48

46.改めてご挨拶

 その翌々日、いつもの定期依頼、もとい俺の監視という名目で孤児院を訪れた『炎の剣』と今回の調査依頼について話をすることになった。

 『炎の剣』には、ギルドマスターから詳細を伝える予定だと聞いていたので、日時などの簡単な打ち合わせだけで済みそうである。


「聞いたぞ、Dランクになったんだってな!」

「おめでとう! そんな気はしてたけど成長早すぎてびっくりよ!」

「おめでとうございます~おそろいですねぇ~」


 やってきた『炎の剣』が開口一番に祝ってくれる。ギルドマスターから聞いたのだろう。この様子ならあれこれと説明してくれたのかもしれない。


「うん! ありがと!」


 にぱっと笑うノアの頭を撫で、俺は敢えて笑って見せる。まあ見えているのは仮面の下部分、口元だけだろうけれど。


「ありがとう」


 『怪我が治った助修士の冒険者ルーチェ』として設定を作り直したので、口裏あわせも兼ねて彼らにも現状を伝えておこう。細かいことはギルドマスターからも聞いているかもしれないが、実際に見て貰ったほうが説明もしやすい。

 なるべく爽やか、且つ穏やかに礼を告げてみたところ、うんうんと流していた彼らの挙動がおかしくなった。


「……いや、いやちょっと待て」

「どういたしまして……? あれ、いいのよね? なんだろこれ……」


 目頭を揉み始めたジークの隣で、何かおかしいけど何がおかしいんだっけ? と言いながらアリシアが混乱している。


「……ルーチェさん?」


 ひとり静かなエレンが、沈黙のあとに声を掛けてきた。


「うん、なあに?」


 笑みを維持したまま首を傾げて答えたら、見事に三人が硬直した。とても既視感がある。もしや、ギルドマスターから聞いてない?


「まてまてまて。お前もしかして喋った? 喋ったよな??」


 詰め寄ってきたジークにも、頷いて答える。


「うん、俺だね。ノアの従魔のルーチェだよ。改めてよろしくね?」


 ギルドマスターにしたのと同じような自己紹介をしておく。挨拶は大事。


「ウン……知ってる……」

「……ほんとに喋ってる……ちょう滑らかに……」

「あの、いつからそんなにお上手に~?」


 ジークがどこか遠くを見はじめたので、エレンに視線を向けて「少し前」とぼかしておく。

 そこからはギルドマスターにしたのと同じような説明を繰り返した。姿が変わったことで声が出るようになったので、少しずつ練習して今に至る、と。

 どうやらギルドマスターは俺のこの状態は伝えなかったらしい。俺を尊重してくれたのか、それとも説明が面倒だったのか、単に忘れたのか。


「そうなんだ……ルーチェって頭いいんだね……」

「いや頭いいとかのレベルじゃなくねぇか? 一年も経ってねぇのにそんだけ話せるのっておかしいだろ」


 ジークが不審に思うのも無理はない。普通に考えて、いくら人っぽい姿になったとはいえ、一年やそこらで魔物がペラペラ喋れるようになるとは思わないだろう。

 突っ込まれても説明しようがないので、素知らぬ顔をしておく。


「ルーチェさんは以前から物知りでしたから~……あっ、もしかして私たちより年上でしょうか~?」


 エレンが微妙にズレたことを気にしている。

 2000年の歳月を数えるならば当然最年長になるわけだが、俺の感覚としてはまだ17歳のまま。

 このモンスターの身体がどのくらい生きているのかも知らない。そもそもモンスターは()()()()()()のだったか。

 となるとやはり自認としては17歳でいいのではなかろうか。つまりジーク達より若造ということで。


「そういえば、いままでのことは覚えているのよね? 私の名前とかわかる?」


 ダンジョンから目覚めて以降の記憶なら問題ない。アリシアの問いかけに頷いて、口を開く。


「アリシア」

「そう! 覚えててくれたのね! よろしくね!」


 嬉しそうな笑みが返ってきて、内心安堵する。

 下手に敬称をつけるのもおかしな話なので呼び捨ててみたが、特に問題はなかった様子。ぱっと明るく笑ってくれたので内心安堵する。


「あの、私はどうですか~?」

「エレン」


 アリシアが呼び捨てで大丈夫そうだったので、こちらも同じように呼んでみる。


「わ、よかったです~私も改めてよろしくお願いします~」


 おっとりと笑ってくれた。


「うん、よろしくね」


 どうやら今後も仲良くしてくれそうでほっとした。

 彼らは日常的に魔物を狩る冒険者だ。魔物は敵で、しかも俺がただの魔物ではなく怪物(モンスター)だということを知っている。怯えはせずとも、不気味がられたり嫌悪されるのではないかという懸念はあった。

 修道女たち? びっくりするくらいあっさり順応されてしまったので、懸念する暇もなかった。


「……あれ、そういえばルーチェ笑ってるよね?」

「表情が豊かになりましたね~」


 アリシアに呆然と呟かれる。

 笑うくらいで何を、と思ったが、彼らにはぴくりともしない顔しか見せていなかったと思い至る。動くようになったのはこの姿になってからだし、孤児院以外では敢えて表情を動かさないように気をつけていた。


「いつも笑ってるよ?」


 ノアによれば、俺はよく笑っているそう。自覚はなかったがそんなにニコニコしていただろうか。


「仮面があるのによくわかるな。わかりづらくねぇ?」

「いつもはしてないよ。かっこいいけど、ルーチェの顔が隠れるのは嫌だから」

「……えっ、外してんのか!?」

「ひ、被害は」


 散々な言われようである。俺の顔は兵器か何かか。


「? 先生たちもいいよって言ったよ」

「それ、皆大丈夫なの? こう……うーん、ルーチェの顔ってとっても綺麗でしょ? 心臓に悪いというか、挙動不審になるっていうか」


 アリシアが引き気味の顔でノアに尋ねるが、ノアはよくわかっていないようで首を傾げるばかりだ。俺もよくわからない。ごく普通の顔だと思うのだが。


「ああ、慣れました」


 そこに別の声が割り込んできた。

 振り向くと、苦笑を浮かべるキャロルの姿がある。


「すみません、お話が聞こえたのでつい」


 どうやら、アンジェリカから『炎の剣』あての伝言を頼まれてやってきたらしい。帰る前にアンジェリカの元を訪ねてほしいとの内容だった。恐らく、調査依頼の件についてだろう。アンジェリカには既に俺たちのほうから内容を伝えてあるので、たぶん俺、もといノアのサポートを頼むとかそういう感じの。


「慣れます? コツとか」

「どうでしょうね……ただ毎日のことなので。やっぱりちゃんと目をみて話が出来るというのは落ち着きますから」


 仮面だとわかりづらくて、とキャロルが言う。仮面を嵌めている側からすると、視界はどちらも大差ない。顔を覆っている感覚がやや煩わしいかなという程度である。

 ノアは「わかる」と大きく頷いている。


「それに、ルーチェはうちの助修士ですもの。慣れないなんて理由でいつまでも窮屈な思いをさせるわけにはいきません。まあ、あとは……子どもたちのほうが早く馴染んでしまったので、大人としてはあまり情けない姿は見せられないなと」


 確かに、子どもたちの順応は早かった。むしろ俺の顔が変わったことも、話せたことも、ほとんど気にしていなかった。彼らは俺のことをどう思っているのだろう。魔物だと理解しているとは思うのだけれど。今更ながら色々不安になってきた。


「ああ……なるほど……」

「いちいち騒ぐのも確かにかっこ悪いわね……」

「……天使さまだと思えばいけそうな気もします~」


 現在地がいつもの『奥の庭』なので、周囲には相変わらずの子どもたちの姿がある。

 魔術の練習をしたり、読書をしたり、ごっこ遊びに興じたり。最近では、遠巻きにしていたマチルダとリンデも輪の中に加わるようになってきた。彼女たちは魔術に興味がない派だが、ルッツの持ち込む本に興味がある様子で、彼の近くにいることが多い。ちなみに彼の所持している本の出所は、彼が働き始めた雑貨店である。読書が好きだからと店主が買い与えてくれたらしい。可愛がられているようで何よりだ。

 そんな、ある意味平然と過ごしている子どもたちを前にすれば、俺の仮面ごときで一喜一憂している姿は滑稽に感じる……のかもしれない。


「くそ、仕方ねぇ。わかった、俺たちも慣れる!」


 苦渋の決断といわんばかりの勢いでジークが宣言したので、「そういうことなら」と仮面に手を掛けたら、すぐに待ったがかかった。


「待って待って、いますぐじゃなくて! ていうかジーク! 私たちも無断で数に入れるのやめてくれない!?」

「だってお前もそのつもりだっただろ!?」

「そうだけど! 心の準備がいるのよ!」


 準備がいるほどのものだろうか。ただの顔なのだけれど。

 賑やかにジークとアリシアが言い合っている横で、エレンが「そういえば」と手を打ち合わせた。


「ギルマスからお聞きしたんですけど、調査依頼ご一緒になるとか~?」

「うん、そう」


 ノアの注意がふたりに向いているので、かわりに答える。


「俺たちは初めてだからね。『炎の剣』から学んでこいって言われたよ。いろいろ教えて貰えるとありがたいな」

「そうなんですね~わかりました、一緒に頑張りましょう~。とはいっても私たちもそんなに経験豊富なわけではないんですけど~」


 エレン曰く、調査依頼自体は珍しいものではないのだが、こういったギルドから声がかかるような規模の大きなものはあまりないそうだ。


「それでは、調査に出る日を決めなければいけませんね~」

「うん、そのつもりだったんだけどね」


 エレンと揃って、まだ何かを言い合っているジークたちを見遣る。確か幼馴染みだったか。言葉の応酬もテンポが良く、とても息が合っている。喧嘩するほど仲が良いとはこのことか。


「もうちょっとかかりそうですね~」


 のほほんと笑うエレンに同意を返した。

 あの二人、喧嘩のきっかけとかもう忘れてるのではなかろうか。内容が既に「前回のダンジョンでのやらかし」に移っているし。


投稿時間やらペースやらを試行錯誤中です。

毎日更新!をやりたいところなのですが、私のスペック的に無理なので、せめてものわかりやすい目安として『金曜日の20時過ぎ』に更新出来るように頑張ろうと思います。

書き溜めと余力ができるまでは暫くこれで運用していこうと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます! ルーチェが喋ったときの炎の剣の反応好き
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ