カボチャでハロウィン
「じーさん、ビール。今日はハーフ&ハーフで飲みたい」
「ん、じゃエビスの黒と金で行こうかね」
「それで。あ、缶だよね。自分で入れるよ」
「じゃ、グラスとエビスの黒、金。つまみもビール向きだな。カボチャの素揚げと種のおつまみ」
「素揚げは分かるけど、カボチャの種?」
「うん、種をレンジで乾かして、オリーブオイルで焼き色が出るぐらいまでフライパンで転がした。軽く塩振って終わり」
「じゃ、まずはビールから。うん、ハーフ&ハーフだ。旨い。あ、種も芳ばしくていけるね。面白いな」
「まぁ、ハロウィンが近いから、たまにはイベントメニューでね」
「そうか、ハロウィンか。学生時代は仲間とパーティっぽいイベントに行ったこともあったなぁ。なんか結構派手なジャック・オ・ランタンのシャツを揃いで着てくことになって、店に着くまで恥ずかしかった。ま、本格的なコスプレする奴らは、人の目なんか気にしないっていうか、見てくれって感じなんだろうけどね」
「じつは、このじーさんも学生時代はハロウィン、遊んだよ」
「へぇ、じーさんはそんなの関係ない、何キリスト教信者でもないのに浮かれてんだって言いそうなタイプなのに」
「じーさんも昔はじーさんではない。って言うか、今でもそんなことばっかり言わないぞ。俺の学生時代は、まだ日本じゃハロウィンはそこまでメジャーじゃなくてな。そこで牙をつけて、マント羽織って、輸入雑貨の店で買った蝙蝠の模様のヨーヨーぶら下げて、繁華街歩いた。他にジャック・オ・ランタンの提灯持った奴とか、マスカレードつけた奴とか五、六人で集まってね。今、思い出しても、何を考えてたんだか分らんのだが、まぁ、楽しかったんだろうな。後は、飲む口実だな」
「だろうねぇ。そんなもんだよね」
「うん。話のタネは酒のツマミだからね」
「でも、最近のハロウィンは大変みたいだから。渋谷なんてとうとう、ハチ公を封鎖するらしいよ」
「ハチ公が暴れるのか?」
「んなわけないでしょ。ハチ公前は人が集まりやすいから、ハチ公そのものを見えなくして、そこに集まらないようにってメッセージを張り出すために、フェンスと幕で封鎖しちゃうらしいんだけど」
「はぁ、ハチ公もとんだとばっちりだな。ご主人様を待ってる健気な犬だったはずなのに、封鎖されたら行き違いが起こるかもしれないじゃないか」
「まぁね」
「渋谷区も一時期は、コントロール可能な集客資源として、活用しようとしてたからな。それがどうにも手に余って、車をひっくり返した辺りから、来ないでキャンペーンに切り替わったみたいだな」
「路上で酒飲んで暴れるからいけないんだよ。ただの人ごみなら、うまく導線整理すれば、韓国で起こったような悲劇は避けられると思うんだけど、そこに酔っ払いが絡むと収拾がつかない」
「そうだね。酒の店をやってて言うのも何だけど、酒を持ってる路上の酔っ払い見たら、とにかく避けるね。あれは迷惑が服着てるようなもんだ」
「路上で飲むのを禁止しちゃえばいいんだって言う意見も増えてるみたい。ま、コロナの時の若者の路上飲み騒ぎもあったし」
「うーん。ま、渋谷みたいになっちまうと、事故防止のために条例をきちんと作って、エリアと期間を区切って飲酒禁止は分かるんだけどね。路上飲み一律禁止って言われると」
「じーさんも路上で飲みたい派?」
「旅先で興がのればってこともあるけど、まぁ街中では飲まんな、もう。ただ、日本は花見とか祭りの酒ってのがあるからね。これを一律禁止されちゃ、たまらないだろう?」
「あぁ、でも、祭りも花見も鬱陶しい飲みも多いし、逆にエリア区切って飲めるスペースだけ許可して、路上はアウトの方がいいって意見もありそう」
「それが、嫌なんだよね。ハロウィンだってそうだけど、雁字搦めに規制されて何が嬉しいんだろう。祭りだって花見だって、上から許された範囲でなんて、やらない方がマシさ。もちろん、それで迷惑かけまくり、無秩序無法地帯になったら困る。そこを工夫したり、お上が出張ってきちゃう羽目にまでなったら、別の場所、別の祭りにシフトしたり。そうやって自由な楽しみ方を確保していくもんじゃないのか」
「でも、そういう空気読んで、阿吽の呼吸でみたいなのは、渋谷みたいに観光客も多いとこでは」
「あぁ、外国人が来たからダメになったなんて戯けた言い訳をして、オーバーツーリズムの問題にすり替えてる人もいるけど、渋谷に日本の若者がほとんど行かなかったら、今、渋谷で騒ぐのはダサさの極みだってイメージになったら、外国人だけで渋谷をいっぱいにして騒げると思うかい? 騒げる空気を作ってるのは日本人、そこで悪乗りが目立つのが、それこそ空気関係ない海外の人かもしれないけど、ゴミも喧噪も目立つ人だけが出してるわけじゃないからね」
「それはそうだね」
「だいたい、別に伝統でも由緒あるでもなく、若い奴が中心でコスプレみたいな楽しみ方なのに、どうして決まり切って渋谷に群れたがるのかが分からないんだが。遊びやすい場所をどんどん開拓すりゃいいのに。みんな行くから盛り上がるじゃなくて、面白いことする奴らと盛り上がろうぜってノリになりゃ、ここまで無駄に惰性的に集中しないだろう。楽しむってことにあまりにもパッシブで怠惰だよ」
「あぁ、でも、それはじーさんが群れるのが基本、嫌いだからじゃ」
「ま、それはある」
「よね」
「それにしたって、そういうバカ騒ぎを見て、すぐ規制してもらいたがるのも、本当に大概にした方がいい。人を規制してもらうってことは、自分も規制されるってことだ。あんまり易々と自分の自由と権利を権力に譲り渡しちゃいかんよ」
「いや、自分がされて困る規制じゃないし、そこまで警戒しなくても」
「今、国会に雁首並べてる政治家見て、官僚が起こした不祥事見て、この国の統治機構が、平安時代ぐらいから戦前までやってきたこと見て、世界の強権的って言われる国がやってること見て、それで何を信用できる? そりゃ、今の政治家に独裁者の凄みは無いよ。でも、だから大丈夫って規制のネタをどんどん渡して、それを自分の力になるように使う奴が現れたら、取り返せるか? 取り返せないよ。それに権力は怖くない奴が使っても、強制力と暴力を一方的に振るえるものだってことも、忘れない方がいい」
「あ、はい」
「政治を必要以上に嫌ったり、タブー視したりしなくていい。政治家が全て穢れた悪人だなどと思う必要は微塵もない。でも、権力は常に常に常に、恐ろしいもの、警戒を緩めてはいけないもの、安易に使いこなせたりはしないもの、ってことを忘れずにいた方がいいよ。そして権力に自分の自由は出来るだけ譲らない、損しても苦労しても譲らない。俺はそう思ってるよ」
「サブスクを止めるー闘病短歌」も頑張って不定期ながら更新を続けております。時間はかからないので覗いてやって下さい。
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