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五八三七G3の酒の肴  作者: V4G3
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ラフロイグと科学博物館

「じーさん、あの不思議な薬っぽいウィスキー」

「あぁ、ラフロイグね」

「なんか、もう一度飲みたくて。ハイボールでどうかな」

「いいと思うよ。少しはまりかけたかな」

「うん、何か、思い出しちゃうんだよね。そうすると飲みたいような」

「そういうもんだね。はい、ラフロイグ10年のハイボール。肴は今日はがんもどきなんだよな。出汁で煮て味が染みてるんだが、ちょいとミニトマトと一緒に煮たんで、風味が面白いよ。食べやすいと思うけど、まずはハイボールだけでしばらく癖を楽しんで」

「ん、あぁ、そうこの香り。やっぱりイソジンっぽいよね。絶対にうまい飲み物の香りじゃないと思うのに、でも飲んじゃうんだ。うーん。味も不思議な甘みが。」

「おめでとう。すっかりはまってるよ」

「おめでとうなの?」

「めでたいさ。癖のあるものに魅せられるってのは、出会いだからね。一生知らなかったかもしれない魅力を発見できたってことだし、そういうものを好む自分を発見できたってことだ。人生で一番、大切で楽しいことじゃないか」

「何か話がオーバーだけど、ま、楽しいは楽しいよね」

「このいかにも曲者のスコッチにがんもどきは?」

「変だね。悪くない。和食とスコッチか」

「まぁ、何が和食かって話は尽きないけど、今、国立科学博物館で『和食』テーマ展をやてるよ」

「へぇ。あ、科学博のクラウドファンディング、結構集まったんですよね。目標1億で、9億越えぐらい」

「あぁ、そうだね。俺も応じたからね」

「そうなんだ。じーさんって理系だったっけ」

「いいや、超文系だな。理系の人には畏敬の念を持ってるよ。いや、子育て時代に何度も足を運んだからね。恐竜とか海の生き物とか子供は大好きだし、テーマ展でロボットとかを扱うこともあったから」

「あぁ、そう言えば僕も親父に連れて行ってもらったことあったな」

「恩返しの意味もあるし、教育施設としても素晴らしいから、無くなってもらっちゃ困る。青山の『子どもの城』の例もあるからね。研究施設としても資料館としても重要となれば、クラウドファンディングの是非はとにかく、支援するしかないなと」

「あっ、クラウドファンディングには文句があるんだ」

「そりゃ、そうさ。こんなテーマ展の為にってクラファンなら気楽に応援できるけど、運営管理の維持のためって、そりゃ国立の博物館がクラファンに求めていいもんじゃない。国が確実に保障すべきもんだろう。クラファンに委ねるってことは、それで集まらないようなら国民が必要としてないってことで、国が国立の科学博物館を見捨てるつもりだ、と俺は受け止めたね。国が国立科学博物館という存在の学術的、教育的価値を認めず、言わば市場ニーズに判断を委ねたに等しい。酷い話だと思うよ」

「まぁ、そうだよね。でも、本当に税率は決して低くないのに、どうしてこんなに日本はお金が足りないんだろう。社会保障費も足りない、少子化対策も足りない、防衛費も足りない。貧困層が増えて国民の生活にもお金が足りない。他国にお金をばら撒きすぎてるからって言う人も多いけど」

「あ、あれは安全保障のための必要経費だから。日本は軍事的な後ろ盾や同盟関係としては魅力が小さいからね。普段から経済や技術で支援して、いろんな国に影響力とか恩とか売っとかないと国際的な価値がどんどん下がっちゃう。欧米はもちろん、中国とかも日本を敵に回すより、協力関係にしておいた方がメリットが大きいって思ってもらえるようにね。でないと、有事に守ってもらいにくい、抑止力がかかりにくいってことになる。この、占領は難しいけどダメージ与えるのは簡単な、細長い国土の要所に原子力発電所を点在させた国を、軍事力頼みで安全保障を組み直すとなると、トンデモなく高くつく。それにそれを理由に攻め込みたがる相手との緊張関係で、安心して生きてられない国になるよ。後、国民皆兵ってわけじゃないけど、徴兵訓練と予備役登録は必須だろうね。それをしたくないからの、ばら撒きと考えりゃ、まぁ高くないよ」

「軍事費よりは払う金が安いと」

「そうだね」

「じゃ、他の国は軍事費もそれなりに支払って、それでもやってけるのに、日本はどうして金がないんだろう」

「それはね、我々が政府に景気対策と産業振興を求めるからだと思うよ」

「どういうこと。」

「だって、国が産業に口出ししたり補助金出して、産業育成できたことってほとんどない。後、わけの分からないクールジャパンとかのキャンペーンも費用対効果は頭痛がするぐらい酷いし、後につながらない。まして景気対策? 政府にグローバル市場をコントロールする力なんて無いって。で、国内市場だけで景気対策もあり得ないし、そういうことに言い訳のように使ってるお金が、はっきり言って無駄。政府ってものに景気対策を求めちゃだめだよ。それは政府の仕事じゃない、民間の言わば我々の仕事さ」

「選挙で最重視する項目の定番なのに」

「政府が責任を持つのは、公共財。産業的には、公平で事業しやすい市場の監督と制度整備。むしろ市場に任せると潰れてしまうけど国民の社会生活に必要な財やサービスの確保。

後は、国をあてにしないで市場を開拓できる自立した国民を育てる教育かな。半導体から和牛から片端から出してる助成金は、ほとんど一括、廃止していいと思うよ。帆立も買いましょうキャンペーンしなくていい。しないのが当たり前だと思って、日本人は仕事したり、その分野を自己判断で撤退したりすべきだ」

「そうなると、確かに文化との国民財産を守るお金は出てきそうだけど、それで日本の経済は持つのかな」

「今は世界に大進出してる自動車も、一時期は隆盛した家電も、対消費者流通の基盤になったスーパー業界も、国が育てたもんじゃない。むしろ、家電なんて国が手出ししてからの方が衰退してる。補助金で延命を図ったり、補助金をあてにして無謀な市場拡大を図ったりすると、結局は見通しが甘くなって失敗するのに、国内競争では補助金利用した方が有利になるから、どうしてもそっちに流れる。経済官僚がどれだけ優秀でも、市場で現場に立ってるグローバル企業のエリートに比べりゃ判断が甘い。そして経済官僚がそんなとこで幅をきかしてちゃ、国内で市場を見通せる人材は育たない」

「なんとなく、賛成したい点もあるけど…、それって、今の政府じゃ実現しそうにないよね。だいたい予算の使い道ですら毎年、枠は一桁パーセントまで一緒って中で」

「論外だけどね、それこそが。俺は、今更古臭い、右だ、左だ、保守だリベラルだって、具体的な争点もないけなし合いじゃなくて、政治の役割は何でどこまでかを、争うような政治が要ると思う。その考え方と現状の接点として政策が出るなら、もう少しは世の中を動かせる政策が出ると思うんだよね」


「サブスクを止めるー闘病短歌」も、更新します。さっとお目通し頂ければ。

https://ncode.syosetu.com/n9606ik/

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