第56章
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ふふ、おれも、笑って。
そう現実は。
いつだって、決して、夢の中のように簡単にはいかない。
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そう、おれはほんと。どこまでも。・・・・最期までほんと。・・・・
だめな、やつだけど。
「なぎ。」
「なんですか。・・・・」
「おれ、ね。いい方法、思いついたの。」・・・あの神父の、話を聞いて。
おれにもまだ。
できる事があるって。気がついた。
・・・できる事も、まだ、やらなきゃなんない事も、たくさんあるって、気がついた。
「おれが。守って、やるからな。」
「・・・。」
「ずっとずっと、傍にいてやるから。・・・・」
「・・・。」
「傍にいて、おまえを。見守ってて、やるからな。なんも。心配いらないから。」
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少しだけ、震えそうな・・・腕を、伸ばして。
ぎゅっとなぎの、腕を掴んで、その身体を抱き寄せた。
ゆっくりと、力なく、抱き締めて。
よしよし、と。頭を撫でる。
「おれが、傍にいてやるから、大丈夫だからな、」
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「・・・おまえに。好きなひとができるまで。」
「・・・。」
「なんてな、うそ。」
好きな人ができたって。
なんだって。おれはずっと。
おまえを守って、やるからな。
何があっても。
絶対におまえを、助けてやる。
・・・今度こそ、何があっても。絶対に。
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「・・・・。」
「だから、心配、すんなよ。・・・・」
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「おれが死んでも。」
「・・・。」
「なんも心配・・・すんなよ?」
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そうだ。死んでからだって。
できる事がある。
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あの時・・・あの神父が、おれに言った。
身体は火に焼かれても、心だけは、残るって。
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・・・自分の愛する、人の胸の中に。
・・・必ず生き残るって・・・・
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はじめ、
内心、そんなの、綺麗ごとだって、・・・疑うおれに、その神父は言った。
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「証明してみましょうか。」
「・・・。?」・・・証明・・・?
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一度、ゆっくりと、自分の前で、指で結ぶように、十字架を作ると。そっとおれに、近付いて、そのおれの、胸に優しく手を充てた。
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「・・・?」
「わかりますか?」
「何が?」
「ここに或るもの。」
「・・・心臓?」
「そう、心。真心。」
「・・・。」
・・・心・・・・
!!
すぐに・・・いつもそこにある。父ちゃん、母ちゃん、町の人・・・・・
たくさんの、人の顔が浮かんだ。
確かに・・・そうだ、いつまでも。
あれから、そうだ、いつも。いつまでも・・・・父ちゃんと母ちゃんが、
この。胸の中に、いてくれているように。
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おれの命を。
死んでからも、守っていてくれるように。
・・・できる。
おれにも。できる。
そう、確信した。・・・その時、だから分かったんだ。
思いついたんだ、おれだって、そうだ、同じだって。
死んだって・・・できる、
おまえを守る。事ができる。その・・・役目がある。
何なら死んでからの方が、上手くできそうな気がする。
必ずやる、もう・・・あんな、・・・ヘマはしない。・・・・
・・・やる。絶対。そう心に決める。
そしておれにもまだ・・・やり残した、事が、ある事にも気が付いた。あと少しだけ、
生きてる間、伝える事がある。まだ伝えてない事・・・いっぱいある。おまえに・・・・そう思ったら。
死ぬのも悪くない。
あと少し、こうして生きるのも・・・悪くない、はじめてそう。
思った。
おまえを守る、覚悟決めて。
そうしたら、・・・・そう思えたらおれは・・・心から。安心した。
あいつを残していっても。大丈夫だ・・・心から・・・そう思えたんだ。
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