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「A」  作者: みんと*
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57/64

第57章

・



「僕の。・・・ことはいいから。」



なぎが、笑って。・・・ぃや、違う。



笑って、泣いて。



おれは、おまえの涙を伸ばした指の先で懸命に、ぬぐった。



・・・。



真剣な顔して、止まれ。もう涙止まれって、思って・・・・



・



「・・・たけし、」



「・・・ん・・・・・」



「恨んでますか。・・・?」



「・・・え・・・・?」なぎを、見る。



「海を。その時自分だけ。生き残ってしまったことを。」



「・・・。」



「・・・その、運命を。恨んでますか。・・・?」



「・・・。なんで?」



「・・・・。」



どうして恨む。事なんてできるのか。




「可哀想に。」



「・・・。」



「あの、海だってあんな事。したくなんて。なかっただろうに。」



「・・・。」



「突き上げられたら。たまんないよな。」



・



「・・・あ。なんかおれ。・・・エッチな、言い方したな。」



「もぅ。」なぎが、目を細め笑う。




「でも。ありがたいとも。思ってない。」



「・・・。」



バチあたりだろうと。・・・何だろうと。



あれで。・・・あの瞬間で。・・・・おれは、全てを失った。



過去も未来も。



これで・・・何かをなし終えた、訳じゃねーけど。・・・・




「・・・ごめんな。」



・・・もぅゆっくり・・・と上を向き、白い、天井に向かって息を吐き、言う。



「たけし。」



おまえがおれの・・・名前を呼ぶ。




・・・。名前・・・・この、・・・名前にも。ずっと、悪態ばっか、ついてたけど。



でもおれ。この名前、嫌いだった、訳じゃねーよ。・・・・?





「・・・たけし。」なぎが、また・・・おれの名前を呼ぶ。



優しく。・・・強く。



まるで背中を・・・押すように。



おれは、そっとまぶたを、閉じて。・・・・まるで。走馬灯のように。



小さい、頃からの。思い出が次々と、よみがえる。



すぐに。目に浮かぶのはそう・・・・いつも、蒼い海。



そして色んな人の顔・・・顔・・・顔・・・・・・・



みんな口々におれの・・・名前を好きに呼んで。



・・・たけちゃん、タケ、・・・たけし・・・・




・・・そう。・・・読み方は、・・・そうだったけど。・・・おれ、気に入ってた。



「武士(たけし)」って。すげぇ格好いい名前だったって。そう、思ってるよ。



生きてる時は。否定ばっかしてた、いろいろな事に。



ここに来て。



いま、やっと。・・・素直に、なれる。




口の端を少しだけ、上げて微笑む。




「・・・たけし・・・・」おまえを、見たいのに。



もうまぶたが。上がらない。・・・・・




・

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