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「A」  作者: みんと*
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55/64

第55章

・



すぐには。



それが夢なのか、現(うつつ)なのか。・・・



・



それ以外なのか。



もうそれさえも。



分からなく、なっていた。



・



ただ楽しかった思い出だけは。



それが夢のようだったなとだけ・・・思う。



・



・



気が付いたら、



涙を、流していた。



息を、荒くして。



泣いていた。



・



・



まぶたを・・・そっと開ける。



・



・



・・・。



・



濡れたまつげを・・・上げて、また頬に流れた涙を、優しく、



指先で、拭ってくれた人がいた。



・



「・・・・。」すぐに、意識が覚醒、する。



・



隣を見る。



なぎがいる。



白衣を、着て。・・・・・



・



現実か。



・



・



「そんなに・・・泣いて。」



「泣いてねぇよ。」



「ふふ。」



・



顔を、近付けて。・・・



・



・・・。



・



ちゅ。



・



・・・。



一度だけ。



「・・・。」なぎが、ほっぺに優しく、キスしてくれた。それだけで。



おれはにこっと、笑ってご機嫌になって。



真っ直ぐに、なぎの顔を見た。



「たけしは。」



・



「愛にあふれた、ひとだよね。」



「・・・・。」



「色々な、ひとが。愛情をかけて、ゆっくりゆっくり、育てて、くれたおかげだね。」



ぽろりとまた。おれの目から涙が落ちた。



「ほら、また愛が溢れてる。」



「・・・・。」



・



・



・



「・・・おれ、の、父ちゃん・・は。・・・背中で、もの言うひと。」



「・・・。」



「母ちゃん、は。黙って何も・・言わないひと。なんでも、受け入れるひと。」



「・・・。」



「結局ふたりとも。・・・ほんとに、・・なにも、言わなかった。」



・



勉強しろだとか、あれ、やれだとかこれ、やれとか。



「・・・だから口うるさい、やつはおれだめだ。」



「・・・。」



「おまえみたいに。口うるさいやつはおれ、嫌いだよ。」



そう言って。



バランス取ろうとした。これから。



言おうとしてる事の。・・・



・



「好きな子、いじめて。」



「・・・・。」



「ほんとに。仕方ないひと。」



そう言ってなぎが。可愛い顔して、笑った。




・

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