ダレンの企み
パトリシアが死んだと聞いたとき、すぐに気付いた。
――僕のせいだ。
『究極の愛は死』
いつか王宮で行われたパーティで、にぎやかに談笑する人々に加わらず月明かりの庭園で独り歌っていた彼女の姿が思い出される。
すべての女は僕を愛している。
僕を愛していると言わなかった女は嘘つきのイザベラただひとり。
だが、彼女が心の内では僕を愛していたのは明白だった。
ふいの視線や仕草からそれと分かる。
そういうところがいじらしいと思わないでもなかった。
しかし、どうにも彼女は周囲からの評判が芳しくない。
未来の王妃がこれではいけない。
その点、アイリスは人好きのするタイプで衆望を担う僕の妻に相応しかった。
アイリスは事件が解決するまで結婚を待ってほしいと言った。
僕もこれに賛成した。
内心では早く結婚したかったが疑われるような行動はしたくなかった。
どんな小さな疑念も周囲には与えたくない。
それに早晩、事件は解決すると高をくくっていた。
それが間違いだった。
父王が病の床に就いて三年。
もう先は長くない。
この国では王になるには結婚していなければいけないという法律がある。
第一王子フランの妻が死んだ今、その条件を満たしている王子はいない。
家臣の多くは僕が王になることを望んでいる。
父が亡くなったとき、僕が結婚さえしていればいいのだ。
あとは家臣たちが法律を盾に第一王子を押しのけて僕を王にしてくれる。
だからこそ、何が何でも結婚しなければいけない。
事件が解決しないまま時間が経つにくれ、周囲はアイリスとの結婚に少なからず難色を示し始めた。
これはある意味では渡りに船だった。
アイリスの妹、パンジーはとても愛らしい。
宝石のようなグリーンの瞳に、輝く金の巻き毛。
アイリスもイザベラもブルネットだ。
この国では女性はブルネットや暗色系の髪が好まれる。
パトリシアはブルネットに染めていたがもとは明るい髪色のようだった。
僕の好みに合わせてくれたのかもしれない。
しかしどうやら自分は本当は金髪が好みだったようだ。
意外な自分の性癖に最近気づいた。
パンジーと過ごしているとそんな小さな発見や驚きが多々あった。
庶民育ちのアイリスと貴族育ちのパンジー。
母親は違うが表情や性格が似ていて、パンジーも姉と同じく老若男女に好かれるタイプだった。
ふたりの父である伯爵も気のいいひとで、人好きする性格はきっと彼の血なのだろう。
アイリスとの結婚を報告したとき父王はたいそう喜んでいた。
彼女のことを「五月の花のようにまっすぐな良い娘」だとよく分からない褒め方をしていた。
あの女好きで気の多い父のことだからパンジーのことも気に入ってくれるはずだ。
天国の母ももちろん喜んでくれるはずだ。
僕を生んですぐに死んでしまったが、生きていたら僕を愛してくれただろう。
僕を愛さない女はいないのだから。




