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Chaotic. NextGeneration.  作者: 鹿島夏紀
第一章 次世代型携帯ゲーム端末より、ご主人へ
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第4話

『へぇ〜! これが学校というのですね!』

校門をくぐった瞬間、ヒスイの歓喜の声が響く。 ...俺の耳に。

「中間試験や期末試験を知っているのに、学校を知らないのか?」

『私は、データ。情報だけを与えられています。ですから、実際に学校に行ったり、試験を受けたりしたことはありません』

「そうなのか...」

『...まあ、私が病気で外に出ることができないだけですけどね』

「病気..?」

聞かれたらまずかったのか、それとも聞こえていると思わなかったのか、あたふたした様子で、

『あ、あれです! ほら、あの。...厨二病っていう病気です!』

厨二病...

画面の中で1人誰かと話すそぶりを見せて、

『これは機関のエージェントの罠なのか...っ! 今すぐ...』

見ているこっちが恥ずかしい痛々しい有様だった。

「ヒスイ...」

『わかってますっ! 恥ずかしいですっ!』

本人も重々承知しているようだ。

『...付近にプレイヤーがいますね。たぶん、イザナミです』

最初に顔合わせするのが、いきなり日本神話の女神かよ...

「あの、すみません」

風紀委員のやつらかと思い、敵意をむき出しにしながら振り向いた。が、俺の背後には、腕に風紀委員の腕章をつけていない、ごく普通の女子生徒だった。

「ひっ...!?」

「あ、ごめん。風紀委員かと思った」

俺の表情は想像以上に怖かったのか、彼女の目尻に薄く光るものがある。

「ぷ、プレイヤーの方ですよね?」

「...お前も?」

「はい、僕の名前は森山(もりやま)美郷(みさと)といいます」

そういって差し出される細い手。

「俺は長峰夏希。よろしくな」

森山の手は小さく、握ると壊れてしまいそうだった。俺の手が特別大きいわけではないが、やはり女の子なんだなと思う。

「長峰、くん? ここでは話がしにくいから、場所を変えよう」

確かに。校門近くで突っ立っていたら、そりゃあ風紀委員の視線がこちらに移るよな。...現に睨まれてるしな。

「そうだな。...あと、長峰君じゃなくて、夏希でいいぞ。くんとか、さんとか、むず痒いだけだからな」

「そ、そう? じゃあ、夏希くんで」

「結局、くんつけるのか...」

「初対面の人を呼び捨てになんてできないよ」

「...まあ、仕方ないか」

ということで、場所を変えることにした。

場所を変えて、ゆっくり話したかったのだが、SHRまで時間がなく、昼休みに話すことになった。

「なあ、夏希。お前、朝から可愛い女の子と歩いてなかったか?」

SHRが終わり、1時限目が始まるまでの休み時間。はたして、悪友なのか親友なのかよくわからない、中学の頃からつるんでいた東雲(しののめ)智紀(ともき)が話かけてきた。

「森山のことか? ...風紀委員の野郎から守ってもらったんだ」

「森山? 風紀委員? お前、なんかしたのか?」

「知らねえ。...もしかして、可愛い女の子って夏奈のことじゃないだろうな?」

「夏奈ちゃんじゃねえよ。俺は学校中のどんな女の子でも把握してるからな。常夏コンビを間違えるはずがない」

「そうだったな」

こいつの趣味は、情報収集(主に美少女)。とりあえず、学校中の女の子の名前を全員覚えている。

あと、俺と夏奈のことを常夏コンビと呼ぶ。理由は、夏が2人とも名前にあるから、らしい。

まあ、そう呼ぶやつは少なくないんだが。

「あんな女の子いたかねぇ...」

智紀は1人つぶやき、1時限目が始まる。

昼休みまでの3~4時間。GMが起こす、殺人イベントと森山のことを考えていたら、授業の内容など全然頭に入ってこなかった。

気を取り直して板書しようとしても、授業の終わる頃に我に返ると、ノートは真っ白のままだった。

そして、昼休み。教科書、ノート、筆記具を片付けて、森山を探しにいこうと席を立ったときだった。

「夏希くん!」

教室の入口近くを見ると、俺の名前を呼び、大きくてを振る森山の姿があった。

「あんな可愛い娘いたっけなぁ...」

横で感慨にふける智紀を放置し、森山のところへ駆け寄る。

「呼び捨ては恥ずかしいとか言っておきながら、教室で大声で俺を呼ぶのは恥ずかしくないんだな」

「こ、これでも、頑張って夏希くんの名前を呼んだんだよ?」

「どうだかな。...食堂でいいか?」

「え、あ、うん。プレイヤーについてでしょ?」

「そう、ついでに昼飯も食うけど、どうする」

「僕も一緒に食べるよ」

「じゃあ、決まりだな」

俺たち2人は、食堂へと向かった。

まだ昼休みになったばかりなのに、食堂には人が少ない。それも食券を買うのではなく、自販機のところに少し人がいるぐらいで、食堂で飯を食ってる生徒は本当に少ない。

「よかった。ゆっくり話せそうだね」

「いつものことだろ? ...うわあ、久しぶりに食券なんて買うぞ」

「はは、みんな購パンだもんね。確かに安いし、ボリュームもあるけど...」

「すまん、俺も購パン派なんだ」

「いやいや! 別に否定しているわけじゃないから!」

「そうか? ...森山はどうするんだ?」

「僕は、食券はいらないよ」

自慢げに胸を張る森山。お世辞にも胸を張った割には凹凸が少ない。

「おばちゃーん! いつものやつ作ってー!」

「美郷ちゃんかい? いつものってことは特大カツカレーだね」

「うん、よろしくね!」

今のやりとり約3秒。まるで食堂の常連の中の常連のように「いつもの」だけで森山は、注文していた。

「森山、よくここで食べるのか?」

「よくってもんじゃないよ、美郷ちゃんは時間があれば、私たちと話し相手になってくれるんだからね」

食堂のおばちゃんは、俺の買った食券を見て、厨房の奥に何かしら叫んでいる。

「できたら呼ぶから、席で待ってなさい」

「はーい」

食堂はガラ空きのため、ゆっくり話せるように、少し距離をとって座るようにしようと思ったのだが、

「ちょっとあんた、待ちなさい」

「?」

急に呼び止められたため、森山も不思議そうにおばちゃんを見つめている。

「...森山、先に場所をとって待っていてくれるか?」

「わかった」

素直に返事を返し、窓際の席の方へ歩いていく。

「で、おばちゃんはどうした」

「あんた、名前は?」

いきなりなんだ...?

「...長峰夏希。学年は2年」

「美郷ちゃんと同級生ね」

「...それが?」

おばちゃんは、しかめていた顔を怪しい笑顔に変えた。

「美郷ちゃんを大事にしなよ? あの娘、そこらの女子とは、比べ物にならないほどいい娘だからね、手放すのは惜しいってものさ」

「...いや、なんの話ですか?」

「美郷ちゃんは、自分から話しかけるタイプじゃないからね。特に男子は。話しかけられたことに誇りを持ちな」

「はい...?」

「はい? ってあんたら付き合っているんじゃないのかい?」

「付き合って? 俺が森山と? 俺が森山に惚れられる理由もないし、惚れる理由もない。ただ、」

森山は、ゲームの中で同じプレイヤーとして、情報が欲しいがために話しかけたのだろう。俺だってそうだ。別に色恋沙汰になりたいわけじゃない。

『あ、選択肢なので気をつけてください』

無線イヤホンから、ヒスイの声が聞こえる。

選択肢。教えてもらうのはありがたいが、この選択肢がこの先にどのような変化をもたらすのかわからない。そもそも何を選択肢する?

「...一緒に飯を食うぐらいの仲だ」

おばちゃんは、面白くなさそうに会話を続ける。

「そうかい、でも美郷ちゃんのことは大切にするんだよ?」

「...わかった」

『あー、夏奈さんルートに美郷さんルートですかー、どれだけ主人公補正かかってるんですか...』

「ゲーム進行はお前の仕事だろ」

『そうですけどー』

ぶー、と口を尖らせて、可愛いらしく頬を膨らませている。

『(このゲームの趣旨が、ご主人は理解できているのでしょうか...)』


※購パン(購買パン)

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