第1話
『ご主人、ご主人! 朝ですよー!』
「朝から元気だな...」
カーテンの隙間から朝日が指し、部屋全体に優しい光が広がる。
『なんていったって、今日からゲームスタートですから!』
こいつの名前はヒスイ。俺がアンケートに答えて貰った、次世代型携帯ゲーム端末のAIだ。
『ご主人は普段通りに生活してもらって構いません。現在は「親睦を深める」が目的です。ですから、他のプレイヤーとの顔合わせとなりますね。プレイヤーが近くにいる時は、私が教えますのでご安心ください』
「いつもならまだ寝てるんだが」
『ダメですよ! 他のプレイヤーたちと差がついてしまいます! 』
「差がついたところでゲームに支障は?」
『そうですね。わかりやすく例えるなら、火事で一人だけ逃げ遅れる。と言ったところでしょうか』
「つまりはこのゲームで命を落とす危険があるってことか」
俺の言葉に首を横に振るヒスイ。
『それはご主人の体力や思考、運で大きく変わります。ただ...』
「ただ?」
『死ぬまではいかなくてもゲームオーバーになった場合、それなりのペナルティがあることだけは覚えておいてください』
朝から元気をなくすようなことを言われちまったな...
「普段、生活するときも、お前を持ち歩かないといけないのか?」
『はい。肌身から離すのは極力避けて下さい』
「こんな早く起きるなんて母さんたち驚くぞ...」
『早寝早起き。いいことじゃないですか。しかもご主人は、こんな可愛らしい絶世の美少女に毎朝起こしてもらえるんですよ? 得しかありません』
「お前が届いたことが損だ。大損だ」
今日からこいつと生活しなくてはいけないのか... 気が遠くなりそうだ。
リビングへ行くと、母さんと妹がいた。
「お兄ちゃん、今日は起きるの早いね」
「いろいろあってな」
「そうだ! 久しぶりに夏奈と一緒に学校に行こうよ!」
『妹さんは夏奈と言うのですね。夏奈さんと学校に行くのも選択の一つです』
耳につけていた無線イヤホンからヒスイの声が聞こえる。
「...そうだな、一緒に行くか」
「やったー! お兄ちゃんと一緒だ!」
夏奈は小さく飛び跳ね心底嬉しそうだ。
『嬉しそうですね。これからも毎日起こしてあげますっ』
「...やめてくれ」
「どうしたの?」
そうか、夏奈にはヒスイの声が聞こえないのか...
「いや、何もない」
「?」
不思議そうに首を傾げる夏奈。
「飯食ったなら準備してこい」
「りょーかい!」
夏奈は、俺に敬礼をすると、軍隊のように足をカクカク動かし、軍隊というよりはロボットと表現した方がよいというぐらいぎこちない足取りでリビングを出て行った。
『そう言えば、ご主人の名前を聞いていませんでしたね』
「俺の名前? アンケートに書き込んだはずだぞ」
『まあ、名前を聞くことでご主人とのコミュニケーションがとれますから、余計な情報はインプットされていないんですよ』
俺の名前は余計な情報なのか。
「...俺の名前は夏希。長峰夏希だ」
『(長峰夏希。チュートリアル終了。選択-1)』




