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Chaotic. NextGeneration.  作者: 鹿島夏紀
第一章 次世代型携帯ゲーム端末より、ご主人へ
1/7

プロローグ

ピロピロン...

『メールが届きました』

スマートフォンの画面に表示される飾り気のない文字。

「新作携帯ゲーム機のご紹介、か....」

興味深いメールだった。疑うことよりも、興味の方が勝っていた。しかも広告メールのゲーム機とあらば、ゲーマーとして見ざるを得ない。

「見るだけみてみるか...」

メールボックスから、そのメールを開く。

サイトに繋がるのではなく、メールに直接書かれていた。

「次世代型携帯ゲーム端末のご紹介...」

次世代型。その言葉にますます興味をそそられる。

「スマホみたいだな」

添付されていた写真にはそれっぽい画像が載せてあった。

外見はスマートフォン。カラーバリエーションは豊富だが、一見、次世代型ゲーム携帯端末には見えない。

「今なら、アンケート回答でもれなく一台プレゼント。...詐欺だな、これ」

実際この手のメールは、開いただけでも危ない。ウイルスやアンケート回答などで個人情報を聞き出すための常套手段だ。...騙されるわけがない。

すぐに削除してしまえばよかったはずなのに、この時の俺は何を思ったのか、

「貰えるもんはもらっとくか...」

損得だけで動く馬鹿なことをしてしまった。

「アンケート回答、ここにメールを送るのか」

メールに何も書かず送信する。すると数秒後に返信がきた。

記入要項はそれほど多くない。

名前に生年月日、趣味、特技、血液型など自分の生活に関係することが多かった。本当にこんなものでいいのかと思うぐらい簡単なアンケートだった。

記入して送信する。するとまた、数秒後に返信がくる。

「アンケート回答ありがとうございます。商品のお届けには約一週間ほどかかりますので、お待ちください」と簡潔に書かれていた。

商品に釣られ、このようなアンケートにを答えたことに後悔するのは、かなり後だった。

次世代型携帯ゲーム端末が届くまでの間、それについての情報をネットで探し駆け巡った。だが、いくら探してもそれらしきものは見あたらない。

やっぱり騙されたか...? と疑い始めた頃だった。


ピンポーン


家に玄関の呼出チャイムの音が響き渡る。

家には...、 誰もいないようだ。

渋々立ち上がり、返事をしながら二階にある自分の部屋から玄関まで駆け下りる。

「宅急便でーす‼︎」

「はいはい、っと」

ドアを開けるとそこには、爽やかな笑顔が眩しい、いかにも宅急便のお兄さんという人が立っていた。

「ここに印鑑かサインをお願いします!」

「はい」

受け取りのサインをし、荷物を受け取る。

「ありがとうございました!」

宅急便のお兄さんはドアを閉める時も爽やかスマイルを崩さなかった。

「差出人は、匿名?」

疑問に感じつつも部屋に向かう。

「...開けていいのか?」

宛先は俺なのだが、誰が送ったのかもわからないようなもの開けるわけにはいかない。

少し振ってみると、しっかり舗装されているのか一切、隙間を感じない。

例の次世代型携帯ゲーム端末と信じ包みを開ける。

開けてみれば、思ったとおりのものが入っていた。

「...次世代型、ね」

見ればみるほどスマートフォンに見えてくる。

起動しようとボタンを探したのだが、ボタンが見あたらない。

「やっぱり、詐欺だったのか」

肩を落としていると、電源がはいったのか急に画面が白く光り始めた。

不思議に思い端末を手に取り、恐るおそる画面を覗く。

『ごっしゅじーん! 初めまして!』

「うぉおぉおぉ⁉︎」

突然、喋り出した端末に驚き、床に落としてしまう。

『ご主人! 前が見えないです! 手にとってください!』

そう言われ慌てて端末を拾い、画面を覗く。

『ふぅ、急に落としたらビックリするじゃないですか!』

「端末が勝手に話してる...!?」

『ふん、私をそこらの携帯端末と一緒にされては困りますね。私は次世代型携帯ゲーム端末AIのヒスイです』

「ヒスイ? 人口知能にも名前という認識があるのか...?」

『はい、ヒスイはご主人のGM(ゲームマスター)です』

「GM? どういうことだ?」

『何を言ってるんですか? 一週間前にしっかり登録したじゃないですか』

頭に浮かんだのは、あのアンケート。

「次世代型携帯ゲーム端末のアンケートか?」

『はい! それです! それで私はご主人の下に来たわけですよ』

「いやいや、その高性能アンドロイド様が何用だよ。端末の外見こそは似ているが、俺は携帯ゲーム端末をもれなくもらえるからアンケート回答したはずなんだが」

『はい、その携帯ゲーム端末が携帯ゲーム端末AIちゃんの私です』

「は?」

『第一、携帯ゲーム端末だけ届いても、ソフトもないのにどうやってゲームをするんです? ハードだけあってもゲームはできませんよ』

...確かに。

「それで何のゲームなんだ? お前がヒロインのギャルゲーか?」

『それはそれでご主人と楽しく遊ぶことができそうなのでいいのですが。ご主人は「クトゥルフの呼び声」を知っていますか?』

TRPG(テーブルロールプレイングゲーム)のか? 知っているぞ」

『それなら話は早いです。私、ヒスイはご主人にクトゥルフの呼び声に似せたゲームをプレイしてもらうためのゲーム端末です』

「あれってすぐ死ぬだろ。クソゲー臭がするんだが」

『思考と運でいくらでも変わります。ちなみにゲームは現実(リアル)でプレイしてもらいますよ?』

「現実で? どうやってだ?」

『そのためにアンケートに答えてもらったんです。ゲーム内では痛覚からなにまで全て感じることができ、楽しくリアルにプレイできます。まあ、フィールドですが、フィールドは私たちGMが決めます』

「私たち? 他にもお前たちみたいのがいるのか」

『はい。イザナミ、アヌビス、アダム、イヴ。そして私、ヒスイです』

「...お前だけ名前負けしてるな」

『...よく言われます』と画面の中で落ち込むヒスイ。

「なあ、もうゲームは始まっているのか?」

『もちろんです。今は個人パート、チュートリアルですね。ストーリーが進み始めるのは明日からです』

「最後に一つ聞いていいか?」

『はい、なんでしょう?』

「このゲームで死ぬことはないよな」

『...さあ、どうでしょうか』

この時ヒスイが浮かべていた表情は笑顔だった。だが瞳は生きていないような冷たいものだった。

「(...所詮はゲーム。本当に死ぬわけがない)」

これもまた後で大きく後悔する原因の一つになることも、俺はまだ知らない。


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