その39.植物
「あ、見えたよ。ギルミル山、久しぶりぃ。皆元気にしているかな?」
朔也と光樹はギルミル山に到着。
「…なぁ、変じゃね?」
朔也が感じる違和感に、光樹は軽く首を傾げた。
「え?…ウ~ン、僕は特に変な感じはしないけど。」
そのまま山に入って行くが、朔也の表情は冴えない。
山の木々は緑濃く、小型の野性の魔物や甲虫類もいた。
「うん、自然が前より強くなっている感じがするね。」
光樹が感じた変化は、自身で視認出来るものである。
「…あぁ…。」
腑に落ちない表情は変わらず、朔也は周囲に意識を向けていた。
このギルミル山には、朔也の風の防御魔法を結晶化させた石があるはずである。
だが、朔也はこの地に風の力を感じなかった。
「あ…、何だろ?」
光樹の目に映ったのは、鬱蒼とした木々に埋もれた建物。もう何百年も放置されていたかの様だが、パスリルの民が住んでいるはずである。
「皆っ!何処にいるんだ?」
前回来た時との違いに慌てて駆け出す光樹だが、建物の中にも人の気配が感じられなかった。
「…光樹、こっち来てみろ。」
建物に入って行った光樹を呼び戻す朔也。
そこには撓わな実をつけた食人植物が、周囲の植物を蔓で巻き付けながら色鮮やかな大輪の花を咲かせている。
「な…、これって…!」
驚きの余り言葉を失う光樹。朔也はその実に触れ、何かに気付いて自らの剣をそれに突き立てた。
「う…そ…っ、かよ?えっ、何で?かよ、大丈夫?」
食人植物の実には、パスリルの人が包まれていたのである。
「どうやら、他の実にも一人ずつ入っているみたいだぜ。」
他の実を裂いていた朔也は、中に別のパスリルの民を発見していた。
「と、とにかく皆を出そう!」
そして二人掛かりで実を破り始めた時、ゆっくりと食人植物の蔓が足元に忍び寄る。
「っ!」
朔也は足首辺りを蔓に絡まれ、逆さに上空へと持ち上げられた。
「朔也っ、うわっ!」
気付いた光樹が駆け出そうとした時、その足も蔓に絡まれて逆さ吊りにされる。
「風刃。」
朔也は慌てる事なく、風の魔力で蔓を断ち切ろうとした。
「なっ?」
だが風の刃は蔓に当たると、掻き消える様にフワッと霧散する。
「うわぁーっ!」
光樹の叫び声に振り向くと、食人植物の花に飲み込まれるところだった。
「光樹っ!焔刃!」
即座に炎の刃を創り、彼を飲み込もうとしている花の根元に放つ。
「痛っ!」
今度の攻撃は有効だったらしく、花ごと光樹が地面に落ちた。
「焔刃!…風翼。」
朔也は自らをつなぎ止める蔓にも炎の刃を放ち、頭からの落下を風の魔力でフワリと着地する。
「朔也ぁ!」
情けない光樹の声に振り返ると、再びいくつもの蔓に取り囲まれていた。




