その40.結晶石
「光樹はパスリルの人を見てなっ。焔刃、焔壁!」
朔也はパスリルの人々が入っているだろう果実の蔓を炎の刃で切断し、食人植物と自らを囲む大きな炎の壁を創る。
「…はぁ、立て続けに炎はキツイな。けどこいつ、風の魔力を打ち消しやがる。風の結晶を取り込んでるのか?」
少し呼吸を荒げている朔也は、それでも更に右手に炎の魔力を集中させていた。
パスリルの人々は見たところ外傷がなく、意識はないが自発呼吸もある。あちらは光樹に任せておけば何とかなると思われた。
「…面倒なのはこっちか。」
朔也は攻撃手段に迷っている。
炎の刃は効果があるようだが、斬るだけで動きを停止させることが出来ていないのだ。確実な攻撃を与えたいが、剣での接近戦は蔓に邪魔されて届かない。
「風に護られてるんだよな…、面倒臭い。あの防御を撃ち破る強力な…っ!」
横飛びで避けるも、植物とは思えない素早い蔓の鞭攻撃は確実に朔也を狙っていた。
「こいつ、俺が見えているのか?」
知能を持っているはずのない植物に、何故ここまで正確な攻撃が出来るのか不明である。
「焔刃!」
攻撃を避けつつ、魔力を集中して巨大な炎の刃を放った。
「くそっ、何で本体が斬れない?」
炎の刃は蔓を切断するが、食人植物自体を両断する事が出来ない。
朔也は既にかなりの魔力を消耗していた。
「はぁ…はぁ…ヤバいな、クラクラしてきた。」
朔也は無意識の内に、胸元にある蛍火の輝きを宿す玉に触れる。魔力所持者の力を持つそれは、宿主の朔也に応えた。
輝きを強くすると、その紅い光で朔也の身体を包み込む。
「ふぅ…ありがとう、また助けられたな。さて、どうするか。」
魔力を充填した朔也は、再び意識を集中して風の結晶石を探した。
「あった…根元に…いや、幹の中か?」
蔓の攻撃を避けつつ、次の魔法の為の魔力を集中させる。
すると途端に植物からの攻撃が激しくなった。
「っ!…こいつ、俺の魔力に反応してるのか?」
魔法発動時でない通常状態でも、魔力所持者からは魔力が溢れ出ている。
「どうする?結晶石さえ取り出せば、こいつの魔力吸収能力はなくなるとは思うけど…。」
絶えず攻撃してくる蔓を避けながら、少しずつ食人植物に近付いていった。
「ぐっ…あっ!」
だが後ろからの叩き付ける蔓の攻撃に当たり、苦痛に気を取られた隙にその動きを捕らえられる。
そして身体に巻き付いた蔓から、養分の様に魔力を吸い取られはじめた。
「ぐっ…ぅぅっ…。」
まるで全身の血液を抜き取られるかのような急激な脱力感が襲う。
周囲を取り囲む様にあった炎の魔法壁は、術者の継続的な魔力を獲られずに鎮火していった。
光樹の視界に入った朔也は、植物の蔓に搦め捕られている。
「朔也ーっ!」
叫びながら光樹が走った。




