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SAKUYA  作者: まひる
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40/52

その40.結晶石

「光樹(コウキ)はパスリルの人を見てなっ。焔刃(エンジン)、焔壁(エンヘキ)!」


 朔也(サクヤ)はパスリルの人々が入っているだろう果実の蔓を炎の刃で切断し、食人植物と自らを囲む大きな炎の壁を創る。


「…はぁ、立て続けに炎はキツイな。けどこいつ、風の魔力を打ち消しやがる。風の結晶を取り込んでるのか?」


 少し呼吸を荒げている朔也は、それでも更に右手に炎の魔力を集中させていた。


 パスリルの人々は見たところ外傷がなく、意識はないが自発呼吸もある。あちらは光樹に任せておけば何とかなると思われた。


「…面倒なのはこっちか。」


 朔也は攻撃手段に迷っている。


 炎の刃は効果があるようだが、斬るだけで動きを停止させることが出来ていないのだ。確実な攻撃を与えたいが、剣での接近戦は蔓に邪魔されて届かない。


「風に護られてるんだよな…、面倒臭い。あの防御を撃ち破る強力な…っ!」


 横飛びで避けるも、植物とは思えない素早い蔓の鞭攻撃は確実に朔也を狙っていた。


「こいつ、俺が見えているのか?」


 知能を持っているはずのない植物に、何故ここまで正確な攻撃が出来るのか不明である。


「焔刃(エンジン)!」


 攻撃を避けつつ、魔力を集中して巨大な炎の刃を放った。


「くそっ、何で本体が斬れない?」


 炎の刃は蔓を切断するが、食人植物自体を両断する事が出来ない。


 朔也は既にかなりの魔力を消耗していた。


「はぁ…はぁ…ヤバいな、クラクラしてきた。」


 朔也は無意識の内に、胸元にある蛍火の輝きを宿す玉に触れる。魔力所持者の力を持つそれは、宿主の朔也に応えた。


 輝きを強くすると、その紅い光で朔也の身体を包み込む。


「ふぅ…ありがとう、また助けられたな。さて、どうするか。」


 魔力を充填した朔也は、再び意識を集中して風の結晶石を探した。


「あった…根元に…いや、幹の中か?」


 蔓の攻撃を避けつつ、次の魔法の為の魔力を集中させる。


 すると途端に植物からの攻撃が激しくなった。


「っ!…こいつ、俺の魔力に反応してるのか?」


 魔法発動時でない通常状態でも、魔力所持者からは魔力が溢れ出ている。


「どうする?結晶石さえ取り出せば、こいつの魔力吸収能力はなくなるとは思うけど…。」


 絶えず攻撃してくる蔓を避けながら、少しずつ食人植物に近付いていった。


「ぐっ…あっ!」


 だが後ろからの叩き付ける蔓の攻撃に当たり、苦痛に気を取られた隙にその動きを捕らえられる。


 そして身体に巻き付いた蔓から、養分の様に魔力を吸い取られはじめた。


「ぐっ…ぅぅっ…。」


 まるで全身の血液を抜き取られるかのような急激な脱力感が襲う。


 周囲を取り囲む様にあった炎の魔法壁は、術者の継続的な魔力を獲られずに鎮火していった。


 光樹の視界に入った朔也は、植物の蔓に搦め捕られている。


「朔也ーっ!」


 叫びながら光樹が走った。



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