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SAKUYA  作者: まひる
34/52

その34.視線

 目の前にしたジルエの湖は大きく、豊かな自然が広がる場所だった。


 町も自然を必要以上に侵食する事無く平和的に共存している。


「空気が良いな。」


 朔也サクヤが深呼吸した。


 魔力と自然とは切り離せない関係であり、朔也の体調とも深く関わっている。


「うん。顔色良いね、朔也。どう、他の魔力とかを感じる?」


 光樹コウキは魔力の存在を感じる事は出来ないが、自然が魔力に必要なのは理解していた。


「分かんねぇ。俺、他の奴の魔法を見た事ないし。」


 朔也は光樹に出会うまで、他人との関わりを避けて来たのである。


「そっか。じゃあ、少し休んでから森の中を捜しに行こうか。」


 湖のホトリに荷物を下ろすと、果実を朔也に手渡した。


「ありがとう。」


 朔也も隣に座り果実を頬張る。




 心地好い風が湖を渡って吹いて来た。


「…ここは魔物がいない。静か過ぎる。」


 突然立ち上がると、辺りを見回す朔也。


 この世界は人間より魔物の数が上回る。


「どういうこと?」


 言葉の真意を読み取れなかった光樹は、首を傾げながら立ち上がった。


「…まるで結界の中みたいだ。」


 朔也は両腕を大きく広げ、深呼吸する様に瞳を閉じて感覚を研ぎ澄ます。


「あぁ、そういえば…。朔也の風の防御魔法の中にいるみたいだね。」


 大小様々な魔物が蔓延ハビコる中、結界無しにその場に留まる事は死を意味するのだ。


「…町の中…強い光りを感じる。何だろ…、魔法石か?分かんねぇから行ってみるか。」


 ジルエの町に力の存在を感じた朔也は、軽く首を傾げながら光樹に問い掛ける。


「うん、確認しなきゃスッキリしないもんね。」


 光樹は、朔也が色々な物事に興味を抱く事が嬉しかった。


 ただの力を持つ存在としてではなく、もっと心の深い場所に朔也を置くようになっていたのである。




「小さいけど皆が笑顔な町だね。不思議、こんな町は見た事がない。」


 ジルエの町に外見を隠して潜入したものの、過去に見てきたどの人間の町とも違う雰囲気を感じていた。


「何か、嘘っぽいな。」


 朔也にはこの町の人間が平和に暮らしている様には見えない。皆が何処か陰のある、作られた笑顔に感じられた。


「そう?平和な感じだけど。あ、ちょっと情報集めてくるね。」


 光樹には感じられない微妙な空気間は、朔也に不安を与える。


「…嫌な感じがする。」


 はっきりと不安を断定出来ない朔也。


「ごめんなさ…あっ!」


 そんな朔也に突然ぶつかってきた人間の子供は、彼を見て大きな声を上げた。


 自分の不注意でぶつかったのだが、その拍子に朔也の掛けていた色眼鏡が落ちたからである。


 魔力所持者特有の金色の瞳。


 視線がぶつかり合い、子供の黒い瞳が揺れた。


「…わりぃな。」


 子供の視線に耐え切れず、すぐに腰を曲げて地面に落ちた色眼鏡を拾う朔也。


「魔力所持者っ!」


 その子供が発した言葉に、周囲の大人達が振り向く。



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