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SAKUYA  作者: まひる
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35/52

その35.護りの石

 朔也(サクヤ)は大勢の視線が自分に向いた事に動揺した。


 恐怖が沸き上がる。


「朔也っ!」


 異変に気付いた光樹(コウキ)が、すぐに駆け寄って朔也の身体を抱きしめた。


 サクヤの緊張の余り冷たく硬直した身体に、マント越しとは言え光樹の体温が伝わってくる。


「…何て顔してんの。」


 柔らかく微笑む光樹。


 朔也が不安のままに見上げた表情は、彼の心を締め付けた。だがそれを跳ね返す様に暖かい笑みを向けたのである。


「…んだよ。」


 少し安心した様にいつもの強気な言葉が出た。


「はいはーい、ちょっと通して下さいよっ。」


 そして朔也の肩を抱いたまま、人だかりを通り抜けようとする。


「ま、待って下さい。魔力所持者の方ですよね?」


 一人の男が声を掛けてきた。


 それに答える事無く、二人は町を去ろうとする。


「この町を助けて下さい!」


 別の男が叫んだ。


「…何言ってんだ。」


 先に反応したのは朔也。金色の瞳を隠さず、その男に鋭い視線を向ける。


「す、すみません。でも…、魔力所持者の貴方にしかお願い出来ないのです。」


 男は必死の形相だ。


「…あのね、もう少し詳しく話してくれないかな。」


 光樹がマントを取りながら口を挟む。


 彼の姿を見た町の人々の反応は様々だ。


「あ…パスリルの…、はい。実は…。」


 そして男は二人に話し始める。




 このジルエの町は百年程前に、一人の魔力所持者によって護りの石を貰った。


 護りの石は巨大な結界を張り、負のエネルギーを弾き出す。外から寄せず、内に在れば飛ばされた。


「…それで?この町を守護する魔法石を破壊する理由が分からない。」


 朔也は不満の表情を浮かべたままである。


「少しでも悪い事を考えると、町から弾き飛ばされてしまう。それが恐怖なんだ。」


 町の誰かが叫んだ。


「勝手なもんだな。」


 怒りよりも蔑みの言葉を漏らす朔也。


「悪い事をしないからこそ、この町が平和でいれるんでしょ?おかしいよ、魔物からも盗賊からも護って貰ってるんじゃないのっ?」


 光樹は大きな声で訴えかける。


「それは…そうなのですが…。護りの石が悪とする基準が厳しくなっているのです。」


 町の人々には、それだけでない理由があるようだ。


「以前は犯罪と呼べる悪に対して反応していたのですが、最近は故意に他者を転ばすといった軽度な悪戯に対してまで…。」


 人々は互いに視線を合わせる。


 結界の外に飛ばされれば、すぐに魔物の餌食になるのは予想出来た。


「原因があるだろ。何の理由もなく魔法効果が変化するはずがない。」


 魔法石は魔法の塊。一度決定されたら、それ以上変化する事はない。


「…それは…。」


 言葉を濁し、人々は真実を語ろうとしなかった。


「何を隠しているんだか分からないけど、僕等には関係ない事だよ。僕等は…。」


 突然光樹の言葉を手を広げて制する朔也。


「…魔法石を見せてくれ。」


 何かを感じたのか、朔也は町の奥に足を踏み入れる。



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