その26.魔力の血
だが、防御に徹する二人の法術師に苦もなく弾き飛ばされる。
「くそっ!」
法術師十人はザザルーと朔也に半分ずつ分かれて攻守に着いているのだ。そして三人が攻撃、残り二人が防御にあたってる。
アルバの指示で動く彼等は、的確に隙を突いてきた。
ザザルーは圧され気味の様だが、朔也も同じく苦戦している。
法術師は三人の内二人が攻撃をして来た。残る一人は次の術式の準備をしている。いくら朔也の魔法構成が早いとは言え、攻守を同時に行える訳ではないのだ。
強力な魔法には魔力の集中が必要であり、立て続けに攻撃されていてはそれすら出来ない。
「あーくそっ、面倒臭い!おいっ、ザザルー!お前もっと踏ん張れよっ。」
ほぼ八つ当たりの朔也だが、その言葉にザザルーは大きく息を吸い込むと辺り一面を覆い尽くさんばかりの吹雪のブレスを吐いた。
その隙に朔也は魔力を集中し始める。
だがザザルーの相手をしていた法術師も合わせて十人。総てを相手にするには、かなりの強力な魔法が必要だ。
「風槍火竜!」
風の槍と炎の竜が絡み合い、標的に向かって飛んでいく。
魔法を放出しながらも、朔也の表情に苦痛が浮かんだ。同時二種類の魔法発動は、彼自身に大きな負荷がかかる。
それでも十人もの法術師の防御結界を撃ち破る事が出来るかは不明だ。
ザザルーの吹雪のブレスで凍てついた周辺を、朔也の風と炎の魔力が粉砕する。
「ひゅ~、凄いな。」
朔也自身思ってもいない効果だった。雪が吹き飛び、辺りの景色が一変したのである。
「中々やるな。」
だが、露出した大地に三人の人影が見えた。アルバと二人の魔法師である。
「ちっ、しつこいな…。」
強気に言い放つものの、実際は残り三人であった事に驚き喜んでいた。
魔物と魔法の攻撃で、八人の法術師は吹き飛んでしまったようである。
「まさか、ザザルーと連携するとは驚きだな。やはり、忌み子は抹殺すべきだ。」
アルバは傷一つなく、偉そうに腕を組んで立っていた。だが、二人の法術師は肩で息をしている。
「ふん、お守りされているばかりの奴が偉そうな言葉並べんじゃねーよ。」
朔也も強がってはいるが、魔力をかなり消費して息が乱れていた。
「私には効かないと言っただろう。この魔力の血が魔法を吸収するのだ。」
掲げた掌に収まる小瓶の中で、その紅い液体が揺れる。
「魔力の血…だと?」
明らかに魔力所持者の血液。何らかの加工がされているのか、凝固する事なく状態を保っていた。
「こうして使ってやっているんだ、感謝してほしいくらいだな。」
理不尽な言葉に朔也の全身が熱くなる。言葉に出来ない怒りに支配され、目の前が真っ赤に染まった。




