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SAKUYA  作者: まひる
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18/52

その18.魔法契約

「で、なんでこんな暑い砂ばかりのところを歩いてるんだ?」


 一面が砂に覆われたマルッカの砂漠を行く三人。頭からフードを被っているとはいえ、強い陽射しは全くといって良い程に無意味である。


「おいら…もうダメ…。」


 その場にパタリと倒れるティム。続いて朔也(サクヤ)も座り込んでしまった。


「こんなところで寝たら、あっという間に骨になっちゃうよ?」


 光樹(コウキ)だけは案外元気で、立ち止まった二人を促す。さすがに旅慣れているのだろう彼は、砂漠でも体力を温存していた。


「ほら、もうすぐオアシスだから。そこで休憩しよ?」


 何とか励まし合いながら、三人はオアシスに向かうのである。




「ぷはーっ、生き返る!」


 水場にたどり着いた三人は、一斉に水に飛び込んだ。


 身体をひとしきり冷やした後、ふと思い付いた朔也。その場に動かず、瞳を閉じたまま何か集中し始める。


 しばらくすると、朔也の周囲を青い光が取り囲んだ。


 ふわりと柔らかいその光は、水面から空へゆっくり舞い上がっていく。


「ふぅ…。」


 光が消えた後で一呼吸おくと、ゆっくりと目を開ける朔也。


「な…何だよ、見てんじゃねーよ。」


 二人の視線が釘付けになっている事に気付き、少し照れながらいつもの強気発言だ。


「凄い綺麗だ、朔也…。」


 感動の余韻なのか、目が何処かにいっている光樹である。


「ばーか、気持ち悪いっつうの。」


 軽くあしらう朔也は、近付いて来ていた光樹の額を指で弾いてやった。


「サク、魔力!水の魔力!」


 瞳を輝かせているティムは、力の流れが見えるようである。


 今行ったのは自然界との契約だった。自然の力を少しだけ貰い、自らの能力とする。


「あぁ、ティムには見えたのか。そうだ、水の力を使える様になったんだ。今までは必要なかったけど、あんなに暑い地域もあるんじゃな。これで次からは、水の壁を作って暑さを防げる。」


 朔也が住んでいた平原では、水に困ることがなかった。


 世界を知る事で知識を広げ、もっと強く成長していくのだろう。


「凄いね、魔法契約。自然の力って、綺麗なんだね!」


 我に返った光樹だが、それでも興奮が冷めないはしゃぎようだ。


「初めて見るんだったな。」


 呆れた様に笑みを見せる朔也。


 本来ならば自らの危険回避のため、誰もいない場所で密かに行う。魔法契約中は外敵に対して無防備になるからだ。


「そうそう見せてやらないからな。」


 強気な朔也の発言は、本心を隠すため。


 これ程にも当たり前に光樹を信頼している事は、決して認めたくない朔也の意地だった。


「うん、見せてくれてありがとう。」


 そんな朔也の気持ちを知ってか知らずか、にこやかな笑顔を返す光樹である。


 ティムの方はというと、ずっと朔也にくっついたままで魔力の余波を感じていた。


 半魔物のティムにとって、魔力の余波は心地好いものの様である。


「ったく、いつまでもくっついてんじゃない。あまり魔力を浴びると変化するぞ?」


 無理矢理引き剥がすと、ぽんやりしているティムの身体を揺すった。


 魔物は摩の生き物であり、魔力も同じく摩の性質を持つ。摩は闇であり、陰であり…影であるのだ。


「変化って、どうなるの?」


 二人の様子をじっと見ていた光樹が首を傾げ、朔也に問い掛けてくる。


「…魔物は魔力により狂暴化する。」


 朔也も自分の力について詳しく知っている訳ではなかった。だがまだ幼い頃に一度、魔力吸収タイプの魔物に出会った事がある。


 その頃は今より力を使いこなせず、やたら魔力を放出する事があった。


 放出された魔力は純粋であり、それを吸収した魔物は酷くグロテスクに進化したのである。


「魔物と魔力…か。じゃあ、ティムが朔也にすぐに懐いたのもそれが理由かな?」


 光樹は、自分に懐かない事をまだ根に持っている様だ。


「…分からないけど、魔物は強い力に惹かれるからな。」


 幼い頃から魔力を持つが故に、その命を危険に晒してきた朔也。


 魔法になれば対象を攻撃出来るのだが、溢れ出る魔力は餌にしかならない。


「魔法契約してしばらくは…、溢れる魔力を抑えられない。迂闊だった。ティムを危険に曝してしまう。」


 揺すられてもなお、酔っ払った様なティム。焦点が定まらず、締まりのない顔をしていた。


「どうしたら治るの?…だらし無い顔して、朔也を困らせるなよ!」


 朔也に支えられているティムに対して、苛立ちを覚える光樹である。


「…くそっ、こんな時に…!」


 いち早く気付いた朔也が見た先に、脚の複数ついた大型の魔物がいた。


 朔也から放出される魔力に寄せられて来たのか、興奮して目の色が変わっている。


「な、何かヤバくない?気が立っている様に見えるけど…。」


 光樹はうろたえながらも、その手には武器であるぱちんこが握られていた。


 朔也もティムを地面に横たわらせると、左手に短剣を掴んで立ち上がる。


 それを合図かの様に大型の魔物バルキィは鎌首を持ち上げ、こちらに飛び掛かって来た。



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