その12.上空に
朝日が差し込み、自然と意識が戻された。
朔也が辺りを確認すると、既に光樹は目覚めていて出発の支度をしている。
「早いな、もう起きたのか。」
頭を掻きながら大きな欠伸をする朔也に、光樹は一つの赤い果実を差し出した。
「おはよう、朔也。はい、さっき採取してきたんだ。美味しいよ。」
笑顔で彼も同じ果実を口にする。
焚火の鎮火を確認して、その上に砂をかける光樹。旅慣れているのが良く見て取れた。
「もう行くのか。」
朔也は果実を食べながら、再び大きな欠伸。まだ思考が働いていない様子である。
「あははっ、朔也は朝が弱いね。もう少しゆっくりする?」
柔らかい笑みを向けてくる光樹に、朔也は重そうに身体を立ち上がらせた。
「いや…、良い。」
至極眠そうではあるが、頭を掻きながら自分の革袋を肩にかける。
「うん、行こうか。」
光樹も荷物を背負い、朔也を促しながら歩き始めた。
光樹の案内を頼りにぼんやりと歩く朔也は、照り付ける太陽に頭を焼かれる思いだった。
「大丈夫、朔也…少し休憩する?」
朔也の様子を心配して声をかけるが、朔也は頭を横に振る。
「…やっぱり…暑い…。」
低木草地の現在地では、太陽の光りを妨げる物は何もなかった。
「そうだね、今日は凄く天気が良いね。」
変わらず笑顔で答える光樹は、それを気にしていない様子である。
「…ダメだ、我慢出来ん。風翼。」
白い魔力を集中し、それは朔也と光樹を取り囲んだ。
「わわっ!」
二人の身体が宙に浮かぶ形になり、光樹は慌てて手足をばたつかせている。
「ピッと飛んじまうぞ。ちなみに俺は、自分以外を飛ばすのは初めてだからな。後の事はどうなるか知らん。」
無責任な言葉を投げかけたかと思うや、二人揃ってそのまま上空に浮かび上がった。
「うそーっ!」
叫ぶ光樹をよそに、目的とする集落へ真っ直ぐ矢のように飛んでいく。
「うきゃーっ!」
さすがの光樹も、この状況には悲鳴をあげるばかりだった。
どれくらい飛んだか、その速度が少しずつ落ちて来た事に光樹が気付く。
「あ、あれ?朔也、少しずつ地面が近付いて来ている様な…。って、えーっ!」
驚いた光樹が叫ぶのも無理はなく、頼みの綱の朔也が寝ている(?)のだ。
「朔也っ、起きてよ!朔也ーっ!」
降下し始め、徐々に勢いをつけながら二人を大地に叩き込まんとしている。
「朔也の、ばかーっ!」
光樹の精一杯の叫び声は、風の音に掻き消されてしまった。




