↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/16

帰還

カフェを出て、モンスターを倒しつつダンジョンを抜けた後、僕は地上の冒険者ギルドに向かった。


ドサドサドサ…


そして、道中で倒したモンスターの破片を、大量に受付に持っていった。


「ちょっと多いんですが、いいですかね。」


僕がそう言うと、受付嬢 (クリスティーナさんというらしい) は、その瞳をまん丸にした。


「こ、これだけあるんですか!?すごい…って、ゴブリンロードの目玉まで!え、Aランク指定の魔物ですよ!」

「あはは…。ありがとうございます。」


Aランク冒険者何だから、そりゃAランクのゴブリンなら倒せるんだけどな。

そう思っていると、僕の背後が騒がしくなってきた。


「ゴブリンロードって、こんなガキが狩れるモンスターじゃねぇだろ!」

「どう考えてもおかしいぞ!」

「そうだそうだ!このあいだの冒険者ランクも、偽造か何かしたに決まってる!」

「おい、どんな手を使ったんだ!あぁ!」

「こんな偽造野郎がAランクなんて、どうなってんだ!ギルド運営はよう!」


血の気の多い他の冒険者達の怒りは、だんだんと増していく。そして、その矛先は、僕と冒険者ギルドに向いている。


「皆さん、どうか落ち着いてください!」


受付のクリスティーナさんが、何とか騒動を抑えようとしてくれているが、集団の圧にやられて涙ぐんでいる。

これはどうしたものか。

そう僕が思っていると、ギルドの入口のほうに座っていた、一人の大男が立ち上がった。


「お前ら黙れェ!」


そして大男の放った咆哮に近い叫び声が、ギルド全体に響く。蒸し暑い空間に突如現れたその声は、ギルド内が途端に静かになるのに十分だった。


「ロ、ロイドさん…。どうしちまったんですか?急に…。」

「その冒(・)険(・)者(・)に詰め寄るのをやめろと言ったんだ。聞こえなかったか?」

「冒険者って…こいつはどこの馬の骨かもわからない、偽造野郎ですぜ。こんな奴、冒険者と呼べねぇすよ…。」

「うるせェェ!」


バン!


ロイドと呼ばれた大男は、持っていたジョッキをテーブルに叩きつけると、他の冒険者達を睨みつけた。


「この冒険者は、間違いなく実力者だ。…俺には分かるぜ。俺も長く冒険者やってる。強い奴は何人も見てきたさ。この冒険者は、獲物を狩る目をしてる。強者の目をしてるぜ。」

「ロ、ロイドさん…。」


「ロイド」はこの冒険者を仕切っているボス的存在らしく、誰も何も言い返さない。 

これで一安心。

と、思っていたら、「ロイド」はこちらに向かってずかずかと歩いてきた。

ん?この冒険者、どこかで見た記憶がある。

確か─


「よう、久しぶりだな。この間はすまなかった。」


そう思ったのも束の間、「ロイド」は僕に話しかけてきた。


「ええと…。この間って?どこかで会いましたっけ?」

「3日前にギルドであったじゃないか。あのときは本当に申し訳なかった。酔った勢いもあったんだが、完全に言ってはいけねぇ事を言っちまった。」


そう言うと、ロイドは深々と頭を下げた。

3日前に会った…ギルドで…。酔っぱらい…。うーんと…。

あ、思い出した。

こいつ、この前僕に絡んできた酔っ払いだ。

僕は、3日前に睨みつけた大男を思い出す。そういえばこんな顔をしていた。だから、「僕の目を見た」とか言ってたのか。


「いや、いいんですよ。顔を上げてください。そんなに気にしていないんで。」


ロイドはゆっくりと顔を上げる。


「しかし、本当に申し訳ない。お詫びと言ってはなんだが、もしこのギルドで、お前の事を悪く言う奴がいたら、この俺がぶっ飛ばしてやることを約束するよ。まあ、お前ほどの実力者なら、俺がいなくても蹴散らせるのかもしれないがな、ハッハッハ!」

「はあ、ありがとうございます。」


なんというか、豪快な人だなぁとは思うけど、第一印象と比べると、意外と、悪い人ではなさそうだった。


「俺は、ロイドっていうもんんだ。大抵は、このギルドを拠点に冒険者やってる。ランクはCだ。よろしくな。」

「僕は、アーシュといいます。旅をしながら冒険者やってます。よろしくお願いします!」


ロイドが手を伸ばしてきたので、僕達は硬く握手をした。

そういうわけで、取り敢えずこれからは、ギルドで絡まれたり、怒鳴られたりすることはなさそうだ。



ギルド近くの宿場 「こぐま亭」 202号室


ガチャ


「ただいまー」


そう言うと、昨日からの疲れが急に身体を巡って、ふらふらと、倒れそうになった。


「あ、お、お兄、ちゃん…?かえって、きたの?」


そういうと、見慣れた顔がひょっこりと、クローゼットの中から顔を出した。


「うん、ごめんね、こんなに遅くなって。帰ってきたよ、アリシィ。」


僕がそういうと、アリシィは、ゆっくりと僕のほうに歩いてきた。


「…え、ふ、うえ…うぁぁぁぁん!!うぇぇぇぇん!」


かと思ったら、アリシィは、突然泣き出してしまった。顔をくしゃくしゃにして。

無断で一日以上アリシィから離れてしまっていた。僕も本当に、久しぶりに、アリシィに会った気がする。


─ダンジョンであのまま倒れていたら、もうアリシィとは、こうして会えなかったのかな。

僕も、ちょっと、泣きそうになってしまう。

そうして、アリシィは、僕の身体にピタッと張り付いたかと思うと、お腹の辺りに顔を埋めてきた。

こうなると、しばらくは僕を離してくれない。


「あ、アリシィ、ちょっとくすぐったいよ〜。」

「だって、だって…ほんとにしんぱいしたの!どこいってたの!一人にしないでなの!」

「本当にごめんなあ…。」


そう言いつつ僕は、お腹に埋もれているアリシィの頭をわしゃわしゃと撫でる。


「むぅ…。はやくかえってきてよぅ…。」

「ちょっといろいろあってね…。」


結局アリシィは、昼食が夜食に変わってしまうくらい長く、僕を離さなかった。



「おそくなる日は、まえの日にかならずいうこと!わかったなの?」

「はい…。」

「むぅ…。」


やっとご飯の時間ということになったとき、僕はアリシィに、こってりと叱られていた。


「きゅうにどこかに行かないでなの!」

「はい…。」

「よるになるまでにはかえってきてなの!」

「はい…。」

「それと…」

「はい…。」


いつになってもお説教は終わらなかった。


「くぅー、くぅー…。」

「…寝ちゃったか…。」


アリシィはご飯を食べ終えると、ごろんと横になって、すぐに寝てしまった。

本当は、あんまり消化によくなかったりするのかも知れないが、とても安らかな寝顔で、すやすや寝ているので、僕はそっと毛布をかけておいた。


「ふぅ…。やっと終わったな…。」


それにしても、長い一日だった。今日あった事を思い出すのが面倒になるくらいには、長い一日だった。

僕はまた、だらんと寝ているアリシィを見る。


─良かった。

アリシィとまたこうして会えて、話せて、一緒にいられて。


難しいことを考えるより先に、そういう、ぼやけた感情が、やってくる。


良かった。アリシィがいてくれて、本当に良かった。


窓外の月は煌々と、僕らを照らしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。