「オークかつサンドで勝つ!」
その日から“オークカツサンド”の販売が始まった。
メリンダもタックから少しカツのあげ方を教わっただけですぐに調理法をマスターした。
アレックスは冒険業に戻り、オーク討伐などのクエストをこなし、その肉を解体してもらっただけでそのまま分けてもらい持ち帰った。ギルドや他の冒険者たちから、「どうして換金しないのか」と不思議がられたこともあったが、「嫁のメリンダがオーク肉が大好きだから・・」と適当なウソでごまかした。
手軽に食べられる軽食として店先に「新商品のオークかつサンドを販売開始。」の幟をだし銀貨1枚と銅貨3枚で売り出した。
しかし、もともと大通りからはずれた路地の中にあるメリンダの料理店、付近の住民たちや道を間違ったよそ者ぐらいしか通らない人通りがすくない場所だったため、たまに店の方をチラ見する者が少しいただけで誰も買わなかった。
タックはまずはその味を知ってもらうことが大事だと思い、店先に台を置き、小さく切り分けたオークサンドを“試食”として無料で少しばかり店の前を行き交う通行人にふるまった。
「オーク肉か。。。」と、食べ慣れた安い肉に興味もしめさない者もいたが、“無料”ということで、小さく小分けされ串にささったオーク肉とパンの一品と食べてみるものも現れた。
「なんだ、これ!うめぇ〜。これがオーク肉か!?」と、歓喜の声が店の前であがった。
「俺に一つくれ!」と、とうとう注文が入った。
「店内で食べるなら1個につき、銀貨1枚と銅貨3枚に無料でスープ1杯つくよ、持ち帰りなら銀貨1枚だけでスープはないけどね。店の前でたべるのはだめだよ。他の通行人の妨げになるから。」と強く事前に注意するアレックスとメリンダ。
店内の6卓しかないテーブルはすべてすぐ満席となった。従来からあるメニューの料理もふるわれたが、やはり多くの客が目新しい“オークカツサンド”を注文した。
ずいぶん久しぶりに賑わいを取り戻したメリンダの料理店。
あまりに飛ぶように売れたので、その日オープン前に十分に仕入れていた在庫のオーク肉やキャベットが予定より早くなくなり、夕方まえには閉店せざるを得なくなった。
開店当初は在庫が残ってどうしようかと少し悩んだ様子のメリンダだったが、本日の異常な売れ行きに満面の笑みがこぼれた。
その日から、アレックスはパーティメンバーとオークやレッドボアといった肉を狩るクエストを多く受注するようになった。
アレックスが持ち帰る肉でも足りず、メリンダは他の冒険者が売ったオーク肉を市場へ買い出しに行く日もあるなどオークカツサンドはよく売れるようになった。
それまで、大通りから外れた路地で客足がまばらだった店先にも大勢の人たちが“カツサンド”目当てに並ぶようになった。
当然、店に入りきれず、腹をすかせた人が多かったので“持ち帰り(テイクアウト)”として購入する客が圧倒的に多くなってきた。また、パンに挟み携帯することもできたため、それまでクエストで城外に出掛ける時は常に乾燥した干し肉などで空腹をしのいでいた冒険者たちにも好評をえるようになった。
「タック、忙しすぎて私一人ではとうてい間に合わないよ!」と嬉しい悲鳴をあげるメリンダ。
(そろそろアルバイトを数名やとわないとな。。。)とタックは考えた。
その頃にはすでにマヨネーズやウスターソースといった調味料と生卵、パン粉は業務用の大型のものを元の現代日本で仕入れて、こちらの異世界であらかじめ購入しておいた容器に移し替えて異世界のメリンダの店で使っていた。万が一、こちらの異世界の人間にみられてもできるだけ不思議がられないようにする処置だった。
「一緒に働いてくれる女性を募集してみるか!?もう賃金を払えるくらい稼ぎも貯まってきたし。」とメリンダとアレックスに提案した。
アレックスも賛成だった。あまりにもメリンダの多忙さぶりにまた、熱をだして倒れるのが心配だった。
翌日から店先に募集のチラシを貼った。「45歳くらいまでの女性で3人、料理が得意な方。給金1日銀貨3枚。」
翌日には就労希望で数人集まった。その中から3人、条件にあったものを選び出すことにした。
食材は調味料を除き、できるだけこちらの異世界のものを用意することにした。
できるだけこちらで食材を購入し、できるだけこちらの住人の口にあったもので、できるだけ❝目立たない❞ように努めてきたが、オークカツサンドが異常に好評だったせいか、次第に街中で有名になっていき、街の中央通りに並ぶ有名なレストランも似たようなものを見よう見まねで作って高らかに販売していたが、何故か売れ行きはメリンダの店のものに遠く及ばなかった。
次第に、当然のごとく予想していた通り他の店のやっかみにあい、他の店が雇ったであろうゴロツキたちが店にたびたび現れては営業を邪魔するようになってきた。
そのたびにアレックスが剣を持ち出し、簡単に撃退してくれはしてくれたのだが。




