「異世界の料理屋」
アレックスに連れられて、町の中央通りから外れた小さく古びた料理屋に連れてこられた。
「お~い、帰ったぞ!」と一声かけるアレックス。
「あなた、おかえりなさい。」と奥から女性の声がした。
「紹介するよ、妻のメリンダだ。」よろしくと微笑む女性。
あたりを見渡すと 4人がけのテーブルが6卓と小さな一人用のバーカウンターが数席あるだけのこじんまりとした店だった。今日が休みなのかと思えるほど店は閑古鳥が鳴いていた。
「以前は結構な人気店だったんだが、最近町の中央通りそばに豪華で大きなレストランができてしまい、客足を奪われてしまって。。」と気まずそうに語るアレックス。
「まぁ、ちょっとそこで座って待っててくれ。」とアレックスに告げられ、近くの席についた。
しばらくして、木の皿の上にのった大きなステーキ肉とスライスしたパン2枚とスープがタカオの目の前に運ばれて来た。
初めて口にする異世界の食事。腹がすきすぎて、何の躊躇もなく口にいれた。
少し不安そうにタカオを見つめるアレックスとメリンダの視線を感じた。
「うめ~!」と年甲斐もなくほおばっていくアラフォーのタカオ。
「おい! そんなに俺達に気を使わなくてもいいぜ。」と不思議そうな目で語るアレックス。
「このステーキの肉って元は何だったんだ?」と口の中でほおばりながら、タカオは尋ねた。
「俺と仲間の冒険者が森の中で仕留めた巨大なレッドボア(イノシシ)の肉だ。この町ではどこでも売っていて皆普通に食べているぞ。」と淡々と語るアレックス。
「ボタンか! うめ〜」と改めて感動するタカオ。
「通常なら冒険者ギルドで解体後、ギルドで買い取ってもらったりするんだが、うちは見てもらったとうり飲食店をやっているからギルドで生肉自体を買い取ってもらわず、そのまま持ち帰り店で調理して客に提供した方が利益は高いからな。。。。売れたらの話だが。」と振り返り寂しそうにメリンダの顔色をみるアレックス。
申し訳なさそうにうつむくメリンダ。アレックスに何か告げようとしたその刹那、意識を失うようにその場の床に倒れた。
「おい!どうした!」
とすぐそばに駆けつけ、メリンダを抱きかかえるようにアレックスは叫んだ。
メリンダの頬や額に手をやるタカオ。
「ひどい熱だ、早く横にして頭を冷やさないと。」
「体内から熱を下げる魔法や薬は?」と咄嗟にアレックスに尋ねた。
「家には切り傷等の外傷を癒す薬草は幾らか有るが身体の内側から直す薬は王宮や貴族たちぐらいしか持っていないし、魔法治療院でハイヒール以上の上位スキルで直してもらうには高額な金がかかって、俺の今の冒険者としての稼ぎでは。。。」と自分の無力感を嘆くアレックス。
悪化すればメリンダの命にもかかわるようにも思えた。
「ちょっと待ってくれ、アレックス。明日の朝までに良く効く薬をとって来る。間違ってもはやまってバカなことをするなよ!」と強く忠告した。
アレックスから銅貨を数枚渡され、城門をくぐり出て川辺の古びた小屋に向かう。小屋は古びたままでそこにあった。どうやら現代とこの異世界をつなぐ不思議なこの扉はタカオのみしか見えないのか扱えないのか無傷でそのままそこにあった。
急いで、現代日本の自分の定食屋に戻り、財布を持ってドラッグストアへ車を走らせた。
店に駆け込み、
「すいません、解熱剤や風邪によく効くトローチ飴や飲み薬と頭の熱を下げるクーリングシートありますか!」と息切れぎれに薬剤師に探させた。
清算をすませ、また急いで定食屋がある我が家にもどり、異世界への扉をくぐった。
今回は急いでいたので、定食屋に配達用として親父がかつて使っていた自転車を異世界に持ち込み、街の城門そばの茂みまで急いでこいでいき、森の茂みに隠したあと走って城門をくぐり、アレックスとメリンダが待つ料理屋へ向かった。
息切れぎれで、店に倒れこむように入ってきたタカオ。
それまで明らかに落ち着かない様子で首を長くして待っていた様子のアレックス。
すぐさま、横に寝てふせていたメリンダに持ってきた解熱剤の錠剤、液状の風邪薬などを飲ませ、それまで額に載せていたボロ切れをどかせて、クーリングシートを貼り換えてあげた。
「この白い布切れはなんだ!?」と見たことがないクーリングシートに驚くアレックス。
「これは、頭から体の中にこもった熱を取り除く魔法の布だ!」と誇らしげに語るタカオ。
「今日の夜、遅くても明日の朝までにはメリンダは元気になるだろう。。」とメリンダとアレックスを見た。
それまでとても苦しそうにしていたメリンダの様子がだいぶ穏やかになったように見えた。




