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異世界デリバリー ~カツサンドからはじまる異世界無双~  作者: とんぽーろ


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「アレックスの帰還」

タックの定食屋の奥のボイラー室の前で今回異世界に持って帰る予定の品物を一通り確認したあと、来た時同様にタックが日本語で呪文を唱えた。


ボイラー室の奥の壁がいきなり光り輝き出す。


「さぁ、メリンダの店に戻ろうか?」と促すタックに対し、


名残惜しそうにタックの家の2階の寝室の方を見上げ、机の上に置かれたままのノートパソコンとその中に収まったままの光る円盤“DVD”の事を未練がましく考えている様子のアレックス。


「光る円盤・・・」と一言つぶやき、タックに促されるまま光の扉の中へその身を投じようとするアレックス。


「また、次回いずれ観ることができるから・・・」と、呆れた様子でアレックスのことを見つめるタックだった。


光輝く扉を抜け、目を開けたらアレックスが見慣れたいつもの我が家の物置小屋だった。今回、メリンダの店に持ち帰る物資を運び終えて、裏口から朝の開店の準備をするエステラとメリンダとソーニャに早速あって開口一番、


「今帰ったぞ!」と意気揚々のアレックス。


「おかえり!物資は持ってきてくれた?」と確認するメリンダ。


「あぁ。」と返事をするアレックス。


その時、アレックスから香ってくる普段とは違う香りに気づく、メリンダとエステラ、ソーニャの3人。


「どうしたの、アンタ。いつもと違っていい香りさせて。」匂いに敏感な女性たちの興味を惹くアレックス。


普段は裏庭の“水浴び場”で軽く、さっと行水を済ませる程度の無精な夫から今まで嗅いだことがない素敵な香りが漂ってきた。更に良く見たら、筋骨隆々なたくましい腕もいつもとなにか違い、スベスベ感が醸し出されていた。


「昨夜、タックの家の風呂で“水浴び”をしてきてな・・・」と語るや、

「タックの家ってすごいんだぜ、ちょっとひねっただけで井戸から水を汲む必要もなく水や温かい湯まで出て、昨夜はたっぷり温かい湯が貯められた湯船にしっかり浸かってきて身も心もスッキリしたぜ!」


(おい、アレックス、現代日本でのことをこちらでベラベラと話すなと昨夜言っておいただろ!)と目配せで伝えるタック。


(すまねぇ・・・つい口が滑ってしまって)と少し反省している様子のアレックス。


「あんた、見違えるように清潔でいい男になったね。ヒゲもなんだかいつもよりきれいに剃れているし・・・」と普段より清潔になった夫に改めて惚れ直しているようすのメリンダ。


「そうそう、メリンダとエステラ、ソーニャさんにささやかだが、素敵なお土産があるんだ。」と、携えて来た袋から、3本の色とりどりの歯ブラシと一本の練り歯磨きを取り出すタック。


「これはなんだい?」と不思議そうに見つめるメリンダたち女性陣。


「これは、歯を磨く道具とそれに使われるペースト状の薬だよ。」と語るタック。


昨夜すでに試したアレックスはその場でその使用感に大変満足しているようだった。


「俺も昨夜初めてタックの家で試してみて、口の中が今までないほど、スッキリしたぜ!」と語るアレックス。


この異世界では木製の棒に少しだけ藁(わら)などの植物を植え付けた粗末な道具と主に塩やその他の香料などで毎日歯を磨くのが習慣だった。


初めて目にするタックの世界の歯を磨く道具。赤、ピンク、ブルーの色とりどりのプラスチック製の歯ブラシは女性たちの目を惹いた。


「特に、エステラ、ソーニャさん、そしてここにはいないがマークには徹底的に歯をきれいに磨いて欲しい。」と語るタック。メリンダの店の2大看板娘と女性客を引きつけてやまない、2枚目のイケメン剣士のマークにはよりその容貌に磨きをかけてメリンダの店の宣伝を大いにしてほしいタックの願いだった。


早速、裏庭の井戸近くの水浴び場で思い思いの歯ブラシを手にとり、代わる代わる歯を磨いてみるエステラとメリンダそしてソーニャ。今までないソフトな口当たりの歯ブラシとそれにあらかじめ塗られたミントの香りが十分に漂う練り歯磨きに興奮する3人、そばにおいていた木製のコップで口を漱ぎ、きれいに流すと口の中が今まで感じたことがないほど爽快に感じた。喜び合う3人に、タックが、


「これで観てみて!」と、さっと懐のカバンから小さな手鏡を取り出した。


それでまず、エステラの顔と磨き終わった歯を映し出すタック。


一瞬、銅鏡かと思ったが、水面以上にはっきり自身の姿を映し出すタックの手鏡に驚くエステラとその周りにいたメリンダとソーニャ。


「なにコレ!私ってこんな顔なの!?」と驚くエステラ。


「タック様、大変ありがとうございます。私などの者のために。」ありがたく感謝するエステラに対し、


「私たちにも渡して見せてよ。」とせがむメリンダとソーニャ。


(こりゃ、女性従業員皆の分を用意しないと奪い合いにきっとなるな。やはり裏口そばの水浴び場に常設の大きな“姿見”を設置するべきか。)と考えるタック。


3人とも自身の顔を手鏡で確認したあと、タックが、


「これはちょっと小さすぎたので、今度、裏口の水浴び場付近に大型の上半身を観ることができる鏡を設置してあげるよ。」といい、「いったん、これはやはり回収させてもらうね。」と3人からとりあげるように小型の手鏡を回収した。


「えぇー!!」と残念がるメリンダ、エステラとソーニャの3人。


懐に手鏡をしまい直したタック。



タックの現代日本から運んできた調味料やその他の食材を搬入しながら、


「タックよぉ、今まで俺達の店を手伝ってくれて店も以前にもまして繁盛して大変感謝して助かっているよ。でも、昨日目にしたお前自身の店、長期休業状態で流石に悪いよな。」と少し分が悪く申し訳なさそうに語るアレックス。


(確かに、こちらに来てからずっとアレックスとメリンダの店を拠点に物資を現代日本から持ち込み、一緒に“こちらのお金”を稼がせてもらってはいるが、調味料やいろいろな機材を買うための“日本円”もそろそろ向こうの世界で稼ぐ必要があるな・・・)と一人考え込むタック。


「こちらのメリンダとアレックスの店もエステラやマーク、ソーニャさんはじめ従業員も増えてきて、安定してきたし、そろそろ自分自身の店も再開する準備をするよ。」と告げるタック。


「タックのあのお店、人手が足りないようなら俺も手伝うぜ!あの光る円盤“DVD”(ディー・ブイ・ディー)を専門に管理する管理官になっても構わないぜ!」と思わず口を滑らすアレックス。


(コラァ〜!!やっぱりそっちか・・)と目配せでアレックスを睨みつけるタック。


「その光る円盤、“で〜”なんとかってなんなの?」と関心を持ち、執拗にアレックスを問い詰めるメリンダ。


あまりに執拗に尋ねてくるメリンダにとうとう、タックに説明の許しを得るように頼んでから少しだけ紹介するアレックス。


「あのな、タックの国には万物を記録している光る円盤の法器が存在するんだ。それでその世界の教養や文化、思想など様々な情報いつでも誰でも観ることができるんだ。」と、もっともらしく説明した。


興味がますます湧いてくるその場にいた、メリンダ、エステラ、ソーニャの3人の女性。


「じゃ、タックの向こうの世界のお店の再開を手伝うということで、次は私がタックのお店を訪問しようかね。」と言い出すメリンダ。


「おい!まかりなりにもお前は俺の妻だぞ!独身男のタックと二人きりになって、もし“間違い”でもあったら・・・」と、強調するアレックスに、


「なに、私のことをそんなに心配してくれているの?」と夫の強気な愛情表現ともとれる発言に少し嬉しくなるメリンダ。


(エステラやソーニャさんならともかく、メリンダさんは・・)と口をつむんで黙りながらそばで二人の会話に耳を傾けるタック。


珍しく少し赤くなり照れながら、

「タックの世界にはな、大勢の人を飲み込む鉄の大蛇や大空を羽ばたく鉄の大鳥などがいてとても危険極まりないんだぞ!」と是が非でも妻であるメリンダをタックの世界に行かせたくない様子のアレックス。


「それにな!お前はこの店の責任者だろ。調理師でもあるお前が不在でどうやってこの店を切り盛りするんだよ?」と続ける。


「確かにね。アンタの言うことも一理あるわね。いいわ、この先、店がより繁盛して従業員に代理で店長を任せられる人を選ぶことができたら、エステラかソーニャをともなって“二人”でタックの店を手伝いに行かせてもらいます!!」と少し残念そうに今回は諦めた口調で語るメリンダ。踵(きびす)を返し、タックとアレックスに背を向け厨房に戻り、朝の開店の準備に取り掛かろうとする女性陣3人。


「ああいった類の光る円盤、“ディー・ブイ・ディー”だったか、お前の世界にまだまだ沢山あるのか?」とタックの耳元で小声で囁くように尋ねるアレックス。


(やはりそっちか!!・・・)と呆れるタック。


戻ろうとした足取りを止めて話すメリンダの一言。


「次はマークにタックのお店を手伝いに行ってもらいます!」

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