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異世界デリバリー ~カツサンドからはじまる異世界無双~  作者: とんぽーろ


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12/17

「王様に新商品を献上する」

王宮への新商品である「カレーライス」を寸胴にいれ、ご飯とともに謁見する準備を着々とするタックたち。何をおもいたったか現代日本に戻りすぐさま、クーラーボックスとともに急遽なにかを持ってきたタック。


「これも忘れていた。」と、息をきらせながらメリンダとアレックスの前に現れるタック。


「お前の氷室のマジックボックスか?」と尋ねるアレックスに対し、


「それほど立派なものではないよ。」と謙遜しながら、クーラーボックスを開け中からとりだしたのは2本の2Lのペットボトルだった。


白い液体が入ったその容器はアレックスとメリンダの二人の興味を惹いた。


そんなことはおかまいなくテーブルに木製のコップを2つ置き二人のために蓋をあけ、1本目の中身の白い液体をコップに注ぎ込むタック。


「飲んでみて!」と促すタック。


「これも辛いものなのか?」と言いながらも言われるままに飲むアレックス。


「冷たくて、甘〜い!!」と一気に飲み干す。


「ミルクセーキ(ミルクシェイク)と言うんだ!」と鼻にかけて語るタック。


カーウという牛に似たモンスターがいるこの異世界でも少ない材料で作れそうと考え持ってきたタック。基本的な原材料がミルクと鶏卵、バニラエッセンス、氷・・と簡単につくれて夏の暑い時期はもちろん、冬などの寒い時期に屋内で熱い料理を食べながら喉を潤すにももってこいと考えたタックのアイデアだった。


「このミルクを使ったミルクセーキの他に、バナナを使ったバナナセーキやいろいろな他の果物を用いたミックスフルーツセーキ・・といったいろいろなバリエーションがあるよ。」と意気揚々と一方的に語るタックに対し、“バナナ”や“フルーツ”という物自体どんなものかわからない様子のアレックスとメリンダだった。


「そうね。今回王様に献上する大辛のカレーライスの口直しに食後でもついでに召し上がってもらったらきっと喜ばれるでしょうね。」と、興味津々のメリンダの言葉。


さて、アレックスとメリンダの興味をさらに惹いたのはクーラーボックスに未だ残っていたもう一本の黒い液体のボトルだった。


「この黒い液体の瓶は・・・」と、恐る恐るも興味を惹かれるアレックス。


「これは、 “コルラ”とか“ハーピードリンク”とか俺の町では呼ばれているよ。」と説明するタック。


「“ハーピー”の飲み物だと!?あの、妖鳥ハーピーの血で出来ているのか?」と驚くアレックス。


(しまった!“ハーピー”もやはりこの異世界にいるのか!)と、自分で名付けておきながら少しネーミングをまちがったことを後悔するタック。


「いいや、違うよ。名前は似てるけど妖鳥のハーピーは関係ない!砂糖とカラメルなどの普通に食べられているもので作られているよ。」と改めて説明を加えるタック。


よく冷えた“コーラ”をこの異世界に持ち込み少しでもこちらの世界の人たちに覚えてもらいたいと考えたタックだったが、却って誤解を与えかねなかった。結局ネーミングは“コルラ”に統一した。早速、例のごとく味見をアレックスとメリンダに促すタック。ネーミングの件は一段落ついたが、アレックスとメリンダが気になったのはその液体の色だった。


「タック、お前が持ち込んでくるのは毎回、毎回・・・」と、言いながらも前回のカレーライスのことがあり絶対的にタックのことを信用していたアレックス。


黒色にシュワシュワ〜と小さな泡がでている見たこともない液体を木製のコップに注ぎ、毎度のごとく恐る恐る口にしてみるアレックス。


「なんだ〜コレ!!これも口の中で弾けて爽快で甘くて美味いぞ!」


やはり、コーラの味は全世界はもちろん、この異世界の人間にも効果ありと確信したタック。2Lのペットボトルにあったコーラがアレックスが次々とおかわりして飲むため半分以下となっていた。


「私の分も残しておいてよ〜」と、呆れて頼むメリンダ。


やっとアレックスについで、コーラを口にしたメリンダの驚いた顔。酒などのアルコール類はあるが、シュワシュワと炭酸が効いたドリンクが全くなかったこの異世界。初めての食感に興奮するメリンダ。


「風変わりな味ね・・」と、シュワシュワ感を堪能しながら語るメリンダ。


「これも、カレーライスとミルクセーキと一緒に王様に献上すれば驚かれるのは間違いないだろう。」と納得するアレックスとメリンダの夫婦だった。




前回同様、マークを留守番、エステラを護衛として王宮に参上するタックたち三人。

アレックスとメリンダは2回目、タックは3回目とそれぞれ最初とは違い、それほど緊張することはなかった。前回のごとく、家臣一同、王族の方々がそれぞれ順番で左右にお並びになられたあと、最後に玉座に左の袖より王様が登場し着席、片膝をつき、頭をたれたままのタックたち三人を前に謁見の儀が始まった。


「苦しゅうない、面をあげよ。」と恒例の決まり文句。


「で、そちたち、今回は新商品を持参して参ったそうじゃな。」と単刀直入に飾らない言葉で尋ねる王様。


「はい、陛下。今回はご所望の辛い食べ物が1品と甘い飲み物を2種類のお飲み物をご用意いたしました。まずはこちらを」と、タックが切り出し、早速一品、銀色の金属製の“おかもち”を開け、両手で頭上高くカレーライスを陛下に向け掲げるタック。


「おおーっ、」と歓声が一瞬湧く謁見の間。早速毒見役の家臣に先に渡された。待ち遠しそうにそれを離れた玉座から見下ろす王様。


しかし、それを間近ではじめにみた毒見役の家臣は驚いた様子で声を荒げた。


「かようなものを陛下の口にいれるのはいかがなものかと。」と、アレックスとメリンダに初披露した時と同様の反応をした。


(やっぱりか・・・)とタックたち3人はその見た目に対する反応は予想通りだった。


前回のオークカツサンド件もあり、タックの料理に期待していた王様は家臣の反応に驚きつつも、


「いいから、ちょっと食して早く朕にまわせ。」と言いつけた。


王様の絶対的な命令に逆らえない家臣は死罪よりはマシだと思い、アレックスの時と同様に渡された木製のスプーンでライスとカレーを掬(すく)い目をつぶりながら「えぃ!」という声が今にも聞こえそうな決心した表情で一気に口にいれた。


家臣の口の中に広がる辛いカレーソースと白い穀物(ライス)が絶妙なハーモニーを生み出し、それまでの家臣の疑念を一気に吹き飛ばした。


最初のスプーン一杯の一口目がなんだったのかと周りに思わせるほど、スプーンですくい上げて口にいれる速度が上がり何度も頬張る毒見役の家臣。


「余の分がなくなるではないか!!今すぐ止めぬと表へ引きずり出し、首を刎ねるぞ!!」と激昂する王様。


われにかえりスプーンを放り出し、王様の前で深く土下座をして謝る毒見役の家臣。 その反応を見て、次は我らと王族やその他の貴族たちがこぞって申し出るところを、王様は激を飛ばし、


「その方たちは後じゃ!朕が先じゃ」と、とても一国を治める王様とは思えない態度。


「なりま・・・」と声を上げようとした一部の家臣たちに対し、携えていた剣を鞘からぬき、刃先をその家臣たちに向けて黙らせる王様。その先の言葉を慌てて飲み込みその場にひれ伏す老臣たち。


 一皿のカレーライスを毒見役から取り上げるように奪おうとする王様に対し、


「今回は前回以上に十分な量を用意してまいりました。ご安心ください。」と平然と述べるタック。


 冷静さを取り戻し、いつもの威厳を保った様子に戻られた王様。ゆっくりと新たに盛られた一皿を家臣より渡され、手元で間近でみる王様。


 「う~む。」と、先ほどは家臣たちを怒鳴りつけておきながら、スパイスの効いたとても良い香りとは裏腹に、様々な肉や野菜をまとった穀物の上に載っている❝茶色いどろっとした物体❞が気になる王様。アレックスや毒見役の家臣の時と同様にスプーンに一杯分掬い上げ、目を閉じて思い切って自らの口の中へ放り込む。


 「なんじゃ、コリャ!!? 旨すぎる!! たまらんぞ!!」と前回同様の感激の声を上げる。


 毒見役の家臣同様、更に盛られたカレーを掬(すく)うスピードがみるみる上がっていく王様。木製スプーンが皿にあたり軽快な音を奏でる。多めに盛られた一杯の大辛のカレーライスがあっという間になくなり、他の者同様お替わりを要求。先ほどまで恐れ多く、ひれ伏したままだった毒見役の家臣もチラリチラリとタックが持ってきた大きなカレーが入った寸胴をうらめしそうにみているようだった。


 2杯目の大盛りの大辛のカレーライスが王様に再度渡され、勢いよくガッツク王様。


 「あのぅ・・・」と、申し訳なさそうに控え目に意見を言うメリンダ。


 「なんじゃ、その方、何かあるのか。」とメリンダに注目するその場の王宮の一同。


 「そのままでも十分に美味しいのですが、こちらのようにオークカツを載せて食べると更に美味しいかと思います。」と落ち着いて提案するメリンダ。


 一瞬、静まり返るその場の一同。


 「なぜ、それを早く言わぬ!!」と2杯目を半分以上平らげた状態で大声を上げる王様。


 早速、新たに3杯目をオークカツを上に載せた❝オークカツカレー❞にして、献上するメリンダたち。2杯目をあっという間に完食したあと、すぐに3杯目に入る王様。


 「おお!よく揚がったオークカツがこの茶色い液体をまとい、あのカツサンドとはまた違いこれは辛くて旨くて得も言われぬ。」と絶賛しながらほおばる王様。それをそばで見ながら未だ口にできていない家臣たち。皆今にもヨダレが落ちてきそうな表情をしていた。


 「そちたちも食してよいぞ。」と早速王様より許可がおり、一斉にタックたちにカレーライスを要求する家臣たち。


 皆、前者の王様や味見役同様、一杯目は目をつむりながらも、2杯目からは勢いよくほおばっていった。


 「こちらの品、❝カレーライス❞といったか、確かに辛くて旨くて絶品だった。」大変満足な様子の王様。褒美をとらせようとする王様の仕草の前に、一言申し上げるタック。


 「陛下、こちらの新商品のほかに本日は、甘い飲料を2種類、別にご用意いたしました。お口直しに是非ともどうぞ。」と付け加えて話すタック。


 大型のクーラーボックスが王様の御前に現れ、蓋を開けるタック。冷気と共に黒と白の2種類の2Lの容器が数本ずつ現れた。


 「なんじゃ、これは。」満腹な腹を抑えながら、カレーライスに十分に満足したためか、あまり関心がない様子の王様。


 とりあえず、まずは白い方の容器に入った液体を家臣に手渡すタック。

例のごとく毒見役に渡され、「酒の一種か何かか?」とざわつく家臣一同。


木製のコップに注がれた一杯の白い液体を上から覗き込み、口の中へ流し込む毒見役。先ほどのカレーの辛い味が残っていた口の中に、一気に冷たく甘いミルクの味が広がった。


 「これは、大変甘くて美味しいです。砕けた氷の粒も混じっているようで摩訶不思議な味でございます。」と嬉しそうに語る毒見役。それまで、その飲料に満腹であまり興味を示さなかった王様の目が一気に見開いた。


 「なに!朕にも早く!」といつものお言葉。


 「陛下、少しお待ちください!」と更に急に口を挟んできたタック。いきなり懐(ふところ)からガラス製のコップを1つ取り出した。これはアレックスとメリンダにも内緒にしていたサプライズだった。


 「こっ、これは 瑠璃(るり)か!!」とざわつくその場の一同。


瑠璃(るり、ガラスの古称)はこの異世界では大変貴重で、王族と一部の有力な貴族しか持っていなかった高級品だった。目を見開いてそのコップに注目するアレックスとメリンダとその他、王宮の一同。


 実はタックは現代日本の定食屋に戻った時に、こっそり冷蔵庫にキンキンに冷やしていたグラスを2つ持ってきていた。


 そのガラスコップに改めて白い液体❝ミルクセーキ❞を注ぎなおし、王様に献上する。タックから渡されたガラスのコップに入ったミルクセーキを慎重に王様の元へ運ぶ家臣。誤って手から滑り落とし、割ってでもしたら首を刎(は)ねられかねない大変貴重な品物にタック以外のその場の者たちは緊張していた。


 無事、王様の手元に渡りキンキンによく冷えた❝ミルクセーキ❞をグラスの横から少し眺めたあと、自らの口に流し込む王様。味見役同様、口の中に未だ辛いカレーが残っていた王様に新たな❝甘くて美味しいミルクの味❞が広がりちょうど口の中で調和がとれた。


 「これまた、何たる味じゃ!」と感心する王様。


 「❝ミルクセーキ❞と申します。お酒ではございませんので、若君や幼いご子息、ご息女様にも安心してお飲みいただけます。」と紹介するタック。


 続いて、クーラーボックスから❝黒い液体❞が入った2Lの容器を取り出すタック。


先ほどの白い液体と反対の黒い液体かとタックたち3人を除き驚くその場の一同。


早速、毒見役に渡された。先ほどの白い液体、❝ミルクセーキ❞が大変冷たくて甘く美味しかったので、手渡された黒い液体❝コーラ❞を疑うことなく、口の中へ流し込む毒見役。

その口のなかでシュワシュワ~と炭酸がはじけ、一瞬驚いたがそのまま喉に流し込み一言、


 「これもまた変わった口当たりですが、大変爽快で美味しいです!」と素直に感想を述べる毒見役。

 黒い液体を美味しそうに飲み干す毒味役を傍から見ていた家臣たちは呆れていたが、敢えて王様に進言しようとするものは誰もいなかった。


 すぐ渡すように王様に促された。やはり王様のためだけに用意されたガラス製のコップで提供された。目の前でシュワシュワ〜と小さな泡が黒い液体の中ではじけては消えていった。


 もう完全にタックが献上する商品に抵抗を感じなくなっていた王様は疑うこともなく、こちらも一気に口の中へ流しこんだ。


 「なんだこれは!」と口の中ではじける炭酸と広がる甘くて爽快なコーラの味。黒い奇妙な見た目とは裏腹に最高の喉越しをもたらしてくれる一品だと思えた。


 「ゲフ〜」と王様の口からでる大きなゲップに静まり返る場内。うつむき、やはり少し笑いをこらえるのが辛そうなアレックス。


「うむ、こちらの❝コルラ❞とかいう飲み物も喉越しが爽快じゃ。夏場の暑い時期には最高であろうの。」と語る王様。


「褒美をとらす。」と改めて王命が発せられた。


(俺達もポストの翌月の使用料がタダになるのか。)と期待していたタックたち3人。


「そなた達が提案して設置した“ポスト”と“コーバン”の両制度、市井で大変好評でこの王城にも多大な貢献をしてくれておる。更にこんなに美味な品を3品も今回持参してくれた。よって今回は・・」と王様の御言葉の次を期待する3人。


「そなた達の店と城内の各コーバンに“魔法球”を設置しようかと思う。」と付け加えた。


「“魔法球”ですと!!」とざわつく場内の家臣たち。


「陛下、あれは国の国宝級の法器。市井の者たちにお見せするのはいかがなものかと。」と懸念を示す家臣たち。


聞けば、“魔法球”というものは、王様や王族のみがもつ大きめな親玉を中心に、各所に設置する小さめな子玉たちと音声や映像のやりとり、つまり“通信”ができる代物で、アレックスやメリンダなどの市井の者たちも初めて知るものだった。


王様が告げるには、その魔法球により24時間、コーバンに勤務する者たちの不正やコーバン周辺で不審な者がいないか監視できたりして、一般的には売られていない大変貴重な水晶球だそうだ。


コーバンはわかったが、なぜメリンダの店までと3人は思ったがすぐにその意図を理解した。


「そなた達の店に何か問題を起こすものがいないか常に監視でき、何かあれば警備兵を派遣できるからな。」と告げる王様に対し。


(常に誰よりも先に注文して食べたいだけじゃないのか。)と思う3人。


「コホン、この“魔法球”は大変貴重で国宝級な代物のため、流石にそなた達個人の店の注文には使わすわけにはならない。扱えるのも王宮直属の大魔導師のみだからな。」と付け加える王様。


(現代世界のスマホとほぼ同じだなぁ。)と一人思うタック。


「更に、今回は特別に金銀財宝も前回よりも増やして渡す。次回はこの王国にない❝酒❞とかもあれば尚よしとする。」と多くのご褒美と次回へのヒントももらった。


それまで、王様に新商品を献上し大変喜ばれ褒美をもらう他の店も何店か現れていたようだが、見たこともないこの世界にない食べ物に感激した王様は多めにタックたちに褒美を与えた。


前回と違い、今回はアレックスとメリンダのために金銀財宝も遠慮なくいただくことにした。今回は一切の不服な表情を浮かべないアレックスとメリンダ。


王様の寛大な褒美に感謝し、今回の謁見の儀が幕を閉じた。

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