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味方のために薬を飲みすぎた俺、太る  作者: 勿夏七


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41/46

41対峙

「まだ抵抗するの?」


 冷ややかな声色で、一人の少年がリズを見つめた。

 肩で息をするリズは、背後にいるミリアとヴァレリア、そして苦しんでいる街の人々を守るように手を広げて力無く笑う。


「当たり前でしょう? 貴方たちを止められないAランクなんて、恥もいいところです」


 リズは震える手で武器を握り締め、次の攻撃を受け止めるために構える。

 子供たちの攻撃によって傷だらけになった彼女だったが、その剣が子供たちを傷つけるために振るわれることは、ただの一度もなかった。

 

 ただ、ひたすら防御に徹していた。

 その様子を見ていた少女は、首を傾げた。


「どうしてその人たちを守る必要があるの? 魔力なしは皆、自分勝手な生き物なのに」

「そんなことありませんよ。もっと人と関わってみてください。……ほら、あそこのご老人を見てください。自分も苦しいのに、近くの少女を励ましている」


 リズの視線の先には、泣き崩れる少女を抱きしめ、必死に励ます老人の姿があった。老人は自らのわずかな回復薬を、少女の口元へ運ぼうと震える手を伸ばしている。

 

「あっちは自分が辛い状況にありながら、魔力持ちを想い、治療を拒んでいる」


 魔力なしで苦しんでいる青年。そこに駆け寄った魔力持ちの女性。だが、青年は「魔力は温存してください」と言っている姿があった。


「魔力持ち、魔力なしは関係ないんです。皆、必死に考えて、自分の意思で動いている。……ただ、貴方たちの周りに、そういう大人がいなかっただけ」


 リズの静かな、だが芯の通った言葉に、少年は俯き拳を握りしめる。

 

「……最初は皆、そう言うんだ。優しそうな笑みで近づいて、最後には僕らを傷つける」

「私たちを見捨てないのは、シャラタン様だけなんだからっ!」


 少女は悲鳴のような声を上げ、魔力を込めた弾丸をリズ目掛けて放った。

 リズはすかさず魔法の盾を展開して凌ぐが、子供たちの虚ろな瞳を見て、胸を締め付けられるような痛みを覚えた。

 

(この子たち、まるで心を縛られているみたい……)

 

 リズが防戦一方で対峙している背後で、ヴァレリアが大きく咳き込んだ。

 

「ごほごほっ! あー、くそ……。あたしもクラリスから魔力補助貰っとくんだった。ミリア、あたしのことはもういい。リズと一緒にあの子らをどうにか無力化してくれ」

「はあ? 勘違いしないで。あんたを回復して子供たちと戦ってもらうためなんだから。前衛はこの中であんただけだし」


 先ほどまで心配そうにヴァレリアを見つめていたミリア。だが、ヴァレリアに場違いな笑顔を向けられ、ミリアは居心地悪そうに口元を歪めた。

 そんな彼女の表情を見たヴァレリアは豪快に笑う。

 

「……あははっ! ミリアは相変わらずだな。じゃあ……そうだな。少しはよくなったし、あたしが隙を作るよ。ミリアとリズで拘束魔法みたいなもん唱えといてくれ」

「ちゃんと一人で立てるわけ?」

「ああ、立てる立てる。回復薬も飲むし、少しは動けるはずだ」


 少しふらつきながらも、ヴァレリアはリズの隣まで歩いた。彼女の肩を軽く叩き、笑顔を見せる。


「待たせて悪かったな。リズが魔力が原因だとすぐに気づいてくれたから助かった。今度はあたしたちが助ける番だ」

「……頼みますよ、ヴァレリアさん。そして、ミリアさん」


 ミリアは自身の名前も呼ばれ、肩をすくめた。

 

「私は攻撃魔法なんて持ってないんだけど〜?」

「ほら、あれだ。ぶっつけ本番だ。賢いあんたなら、できるだろ?」


 ヴァレリアはこれまで力だけで解決してきていた。しかし、ミリアがどれだけ自身が楽して金を稼いだり、魔法の知識を蓄えてきたのかを知っている。

 

「……じゃあリズ、子供たちの足元の魔力を一点に集めて爆破して。地面を陥没させて動きを止める。ヴァレリア、その隙に——」


 会話を切り裂くように、激しい火玉がミリアとヴァレリアの間を掠めた。

 

「子供だからって舐めるな!」


 少年は周囲の子供たちと手を繋ぎ、膨大な魔力を共有し始める。その中心で練り上げられた魔力の塊は、三人を一気に飲み込めるほどの大きさにまで膨れ上がっていく。


「魔力共有!? なんて厄介な……!」

「……指の数本くらいは、落としても文句言われないわよね?」

「駄目です! あれを投げられる前に、なんとかして無力化を――」


 リズが叫んだ瞬間、死を予感させる魔力の奔流が放たれた。

 ヴァレリアが慌てて防御姿勢を取るが、あまりの速度にシールドの展開が間に合わない。


「ちょっ、待て! もう来てる! 間に合わねぇよ!!」


 直撃を覚悟し、ヴァレリアが反射的に目を閉じたその時――。

 彼女の視界を遮るように、黒い影が音もなく舞い降りた。

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