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味方のために薬を飲みすぎた俺、太る  作者: 勿夏七


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30遠征から帰還

 ギルドの受付で認定証を受け取ったアレンは、そこに刻まれた文字を見て満足げに微笑んだ。

 

「よし、やっとBランクまで戻ってきたな」


 回復薬の生産体制も安定し、最近のアレンはギルドの仕事を本格的に再開していた。

 当初はランクを落とした落伍者を見るような冷たい視線もあったが、質の高い回復薬の供給と、地道な治験の成果が功を奏し、今では指名の依頼も入るようになっている。


 ギルドの扉を開けると、ちょうど中へ入ろうとしていたヴァレリアと鉢合わせた。


「遠征、お疲れ様でした。ヴァレリアさん」


 声をかけられた彼女は一瞬、怪訝そうに眉を寄せた。だが、それがアレンだと気づくと、驚いたように目を剥く。

 

「……おぉ、ありがとな。って、お前……見ない間にえらく縮んだな。いや、贅肉が削げて別人のようだぞ」


 かつての丸々とした容姿を思い出し、ヴァレリアは感心したようにアレンを上から下まで眺め回した。

 じっと黙って見つめられ、アレンは気恥ずかしくなり扉の前を空け苦笑いを浮かべた。


「俺邪魔ですね、すみません」

「いいって。ギルドの扉は三人が肩を並べて通れるほど広いんだ、気にするな」


 豪快に笑うヴァレリアの横顔には、以前よりも増して逞しい自信が溢れていた。


「なあポーラー、この後用事はあるか? よければ飯でもどうだ」

「ちょうど昼を食べて帰ろうと思ってたんです。ぜひ」


 ◇


「――へぇ、自己回復能力を習得したんですか。おめでとうございます!」

 

 大衆食堂のテーブルを挟み、アレンは目を輝かせた。

 ヴァレリアは照れくさそうに頬を掻き微笑んだ。

 

「ありがとな。魔力がギリギリ足りて良かったぜ。あれは自分の内側に眠る回復力を無理やり引き出すんだ。ヒーラーの魔法とは、根本的な原理が違うからな」

 

 ヴァレリアが国外で学んだその技術は、習得に数ヶ月の歳月を要し、かつ相応の魔力量が求められる過酷なものだった。

 モンスター討伐のための遠征だったこともあり、なかなか勉学に没頭することも難しかった。勉強が苦手なヴァレリアにとっては、モンスター討伐よりも大変だったことだろう。


「魔力持ちでも引き出す能力がない奴もいるんだと。だからまず、自身の魔力を引き出す能力を習得する必要があった」

「引き出す能力……ですか。測定器で測れない場合でも、その引き出す能力さえあれば、自己回復能力を習得できる可能性は十分にあるってことですよね」

 

「そうだな。……ただ、潜在的な魔力を無理やり引き出すんだ。引き出したところで元の器が小さきゃ意味がない。成功率は一分(いちぶ)にも満たない、博打みたいな技術さ」


 また、自分も少量増えただけだと語る。とはいえ、自己回復能力を習得するだけの魔力は引き出せたので、ヴァレリアとしては重畳だった。


(シャラタンは魔力量は少なくても良いと言っていたが……。もし、その能力を引き出す過程で何か致命的な無理をさせているとしたら?)

 

 アレンの脳裏に、あの講座の後に疲れ果てていた人々の顔が浮かぶ。

 険しい表情で口元に手を添えた。


「どうしたんだよ、ポーラー。厄介ごとか?」

「……クラリスさんの先生――シャラタンという男を知っていますか?」

「ああ、あの胡散臭いおっさんだろ? 一回会ったことはある」

「そのシャラタンについて、今少し調べてるんです」

 

 アレンは、最近街で相次いでいる「魔力消失」の噂と、シャラタンの講座について説明した。話を聞くうちに、ヴァレリアの瞳に好戦的な光が宿り始める。


「面白いことになってんなぁ! なあ、あたしも混ぜてくれよ。クラリス経由で情報取ってきてやるし」

「危険ですよ。相手は得体が知れない」

「それがいいんじゃねえか。頼むぜ、相棒」


 ヴァレリアは目を輝かせ、身を乗り出した。アレンはその様子を困った表情を浮かべながらも頷いた。

 

「……わかりました。では、一度ライルたちと話しましょうか」

「あいつらも噛んでんのか。そりゃまた面白そうだな」


 彼女は白い歯を見せながら、嬉しそうに笑った。

 正義のためというより、未知の強敵や謎を解くスリルを楽しもうとする彼女らしい反応だった。

 

「ところで、ずっと前から思ってたんだけどよ……。ライルとカイルって名前が似てるよな。顔は似てねーけど、何かしら関係あったりしないのか?」


 突飛な指摘に、アレンは目を見開いた。

 

「まさか。……世界は広いですし、ただの偶然じゃないですか?」


 アレンは彼女にそう言ったものの、なぜか胸の奥に引っかかっていた。

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