5マノノ治療をがんばる
「今日はここまで。レノンのお母さん、とっても重い病気。マノノが治すには何日もかかるみたい」
私がそう言うと、彼女はゆっくりと起き上がった。今度は落ちないように私は動きに合わせてレノンの手の上にひょっこりと乗る。
「いつも胸が締め付けられるような痛みがあったけれど、少し楽になったみたい。マノノ様、ありがとうございます」
レノンのお母さんは私に向かって祈りを捧げている。
「よかった! マノノの踊りは少しずつしか効かないの。ごめんね」
「謝罪なんてっ。私はずっと苦しくてもう先は長くないと思っていたくらいなのです。マノノ様には本当に感謝しかありませんわ」
「えへへ! レノン、マノノ、褒められた!」
そう言ったところで私のお腹はぐうぅぅと大きな音を立てた。
「マノノ、頑張ったからお腹が減った」
「あらあら、これは大変ね。クスター、マノノ様に何か食事を出してちょうだい」
「畏まりましたすぐに準備いたします」
「大丈夫だよ! さっき貰ったパンがまだあるから!」
私はそう言って鞄から千切ったパンを取り出して見せた。
「踊るとね、とっても疲れちゃうからお腹もすぐに減っちゃうみたい」
私はちょこんとベッドに座って、大きな口でパンに齧りついた。
「もぐもぐ……。美味しいっ」
「マノノ様、ほっぺにパンくずが付いています」
レノンは微笑みながら私の頬を撫でてパンくずを取ってくれた。
「レノン、ありがとう!」
「どういたしまして」
レノンとレノンのお母さんは私の踊りで身体が軽くなった時の話をしているみたい。
私は二人の会話をよそにパンを食べ終えてお腹いっぱいになると、だんだんとその会話が心地よくなって眠くなってきた。
だめだめ、ちゃんと起きていないと。
目を擦りながらふわふわと飛んでいると、レノンが私をそっと捕まえて胸ポケットに入れた。
「マノノ様、危ないですよ」
「うん……。ふわぁ。マノノ、今日、頑張ったからいっぱい疲れちゃった」
「今日は私も治療してもらったし、早めに休んだ方がいいんじゃないでしょうか。ベッドにちゃんとお連れしますからこのまま眠っても大丈夫ですよ」
「……うん。ふあぁ。レノン、もうだめっ。マノノねむねむ……」
「マノノ様、おやすみなさい」
「レノンのお母さん、おやすみなさぁい……」
私はレノンの胸ポケットの中で目を閉じた記憶はある。
レノンの温もりで深い眠りについた気がするんだけど、起きたらレノンが用意してくれたベッドに寝ていた。
「ふあぁぁ! 今日もいい天気! いっぱい寝たし、今日もがんばろう!」
そうだ、昨日侍女さんたちが作ってくれたお洋服があるんだった!
私はベッドから起きて今日のドレスを選び始めた。
レノンはまだベッドで寝ているみたい。どれがいいかな。侍女さんたちが準備してくれたドレスをクローゼットから選んでいく。
レノンも寝ているし、静かにしないといけないけれど、ドレスが可愛すぎてついついはしゃいじゃうわ!
「どうしようかな? 今日は黄色にしようかな。んーでも、水色も捨てがたい」
「マノノ様、おはよう」
もしかしたら私の声でレノンを起こしてしまったかもしれない。
でも、ドレスが可愛くってつい声が出ちゃうんだよね。
「レノン、おはよう! みてみてーこのドレス、どっちがいいと思う?」
「どっちを着てもマノノ様は可愛いと思いますよ」
「えへへ。レノンに褒められちゃった。この黄色のドレスのここ! このレースのここがいいんだよ。でもこの水色のドレスの胸の部分のリボンも可愛いし。決めたわっ! 今日はこの黄色いドレスにするっ!」
私は黄色いドレスをぎゅっと抱いてくるくると踊ると、その様子を見ていたレノンは優しく微笑んでいる。
私はポンッと着替えを済ませると、レノンは目を丸くしている。
「マノノ様、それは魔法ですか?」
「んー多分? 昨日は侍女さんが手伝ってくれたけど、普段はみんなこうやって服を着ているから魔法かわかんない。レノンどう? 似合う?」
「マノノ様、とっても良く似合っています」
「嬉しい! レノンに褒められた」
「マノノ様、着替えも済んだし、ごはんにしましょうか」
私がドレスを選んでいる間にレノンは朝の支度を終えていたみたい。
「うん! ごはんっ、ごはん♪ マノノ、昨日飲んだ果実水、とっても美味しかった」
私はレノンの肩に乗り、レノンと一緒に食堂というところに行くみたい。レノンは私が落ちないようにゆっくりと歩いてくれているのね。
「今朝もあると思いますよ」
「本当!? 嬉しいなっ」
そうこうしているうちに食堂へついたみたい。
レノンが扉を開けると、目に飛び込んできたのは長くて大きなテーブル。
真ん中にどーんとあって、一番遠いところにレノンに似た男の人が新聞を読みながら珈琲を飲んでいる。
その横には昨日会ったレノンのお母さんがにこやかに座っていた。




