↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな妖精の恋の詩  作者: まるねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/43

41 ズーズの助言

 ――カチャリ。


「エリシャ様、少し待っていてくださいね」


 突然レノンは部屋へと戻ってきたみたい。


 私はレノンが私のことを思い出してくれたのかと思って、彼の顔の前まで飛んでいき、彼の名を呼ぶ。


「レノン! レノン」


 レノンは私の姿が見えていないのか呼ばれても返事をすることもないし、私と視線も合っていない。


「あった。エリシャ様、これ……」


 そう言って彼は机の引き出しから小さな髪飾りを取り出した。


「これは、私が昔よく使っていた髪飾り。あの時、私はまだ幼かったのに。ずっと持っていてくれたんですね」

「ええ」


 レノンはエリシャに髪飾りを手渡している。エリシャもレノンも昔のことを懐かしんでいるように微笑んでいる。


「私は、あの頃からレノンさんのことが好きでした。それは今も変わりません」


 彼女がそう言うと、レノンの目は大きく見開いた。


 ……レノン。


 私はレノンの胸元で服をぎゅっと掴んでいるけれど、彼は気づかない。


「エリシャ様……。私もエリシャ様のことが好きです。婚約者に決まった時はとても嬉しかった。幼い頃からずっと身体が弱くてエリシャ様との婚約を諦めざるを得なかった。だけど、こうして病も完治した。もう誰にも遠慮はしたくない」

「レノンさん……」


 私は二人の姿を見ているのが苦しくて、窓から外へと飛び出した。


 涙が止まらない。


 レノン、レノン、レノン。


 マノノはずっとレノンのことが好きだってお話していたのに。


 レノンはマノノのことなんてどうでもよかったんだ。


 苦しいよ。

 こんなに好きなのに。

 一生懸命伝えていたのに。どうして伝わらないの? マノノが妖精だから?


 涙が止めどなく溢れてくる。私はどうすればいいの?


 私は泣きながら当てもなく飛んでいると、花壇の方からキラリと光るものが見えた。


 ……なんだろう?


 鼻をすすりながら私は光るものの方へと向かっていく。


「マノノ、よく気づいたな」

「ズーズ!」

「なんじゃ、泣いておったのか」


 ズーズのその言葉に抑えていた気持ちが堰を切ったように溢れ出てくる。


「えーん! レノンがっ、レノンがね……」

「契約者の人間に何かあったのか」

「うん。私の姿が見えなくなってきているの」

「……そうか。それは辛かったの」


 ズーズは私の横に座り、頭を撫でてくれる。


「マノノ、ずっとレノンといたいの」

「だが、レノンという契約者はマノノのことが見えんのじゃろう?」

「うん……」

「辛いのぉ」

「うん……」


「マノノは幸せを運ぶ妖精だから契約者に幸せが訪れたんじゃな」

「うん……」

「マノノ、お前さんは素晴らしい妖精じゃな。泣かずともよい。きっとお前さんのことを思い出す日もくる。ただ、それが今ではない。思い出すまでの間、お前さんは一度聖樹に戻るといい。他の仲間はお前さんを待っているんじゃろ?」


「うん……。シャンがマノノのことを心配してくれているの。聖樹に戻ろうって」

「そうか、よかったの」

「でも、レノンは本当にマノノのことを忘れてしまったのかな。マノノ、一生懸命頑張ったの」


「きっと今、契約者はマノノから送られた幸せに浸っている最中で、周りを見る余裕がないのじゃよ。マノノ、今は無理をせずともそのうち契約者は気づくはずじゃ」

「そうなのかな……」


 ズーズはそう言って花の蜜をぽわりとどこからか取り出した。


「ほらっ、これでも食べて元気をだすんじゃ」

「これは?」

「これはこの中庭の花々から集めた蜜じゃ」

「いいの? マノノが貰って」


「いいんじゃよ。マノノのおかげでこの庭の花々が元気になってきとる。蜜集めもそう難しくない」

「ズーズ、ありがとう」


 私はズーズから花の蜜を受け取り、一口ぱくりと食べてみた。


「……美味しいね。幸せの味がする」

「そうじゃろう? これもみんなマノノのおかげなんじゃ」


 ズーズは私の頭をぽんぽんと撫でてくれる。


 花の蜜の美味しさと、ズーズの優しさでまた涙がぽろりと地面に落ちた。


「マノノ、今まで聖樹から出たことがなかったの。レノンと目が合って、レノンの優しさに嬉しくなっていっぱい頑張ったの。いっぱい、いっぱい頑張ったの。


 もっとレノンのそばに居たい、もっと好きになって欲しい。でもレノンは元気になっていくうちに私といる時間が減っていったの。それに私の姿が見えなくなって苦しかったの。

 苦しくて、悲しくても聞こえないの。それでもマノノはレノンのことを思って踊るしかできないの」


「そうじゃな」

「もう、いいのかな」

「そうじゃな。無理をすれば我々は消えてしまう。マノノはよく頑張った」


「……うん。マノノ、頑張った。ズーズ、聞いてくれてありがとう。マノノ、少し元気が出た。」

「それは良かった」

「ズーズ、マノノはもうレノンの部屋に戻るね」

「マノノ、我々はそこかしこにおる。いつでも呼べばいい。あまり無理をするんじゃないぞ」

「うん。じゃあまたね!」


 私はズーズに話を聞いてもらって、いっぱい泣いたら元気になってきた。


 いっぱい落ち込んだらあとは浮上するだけだよね。


 レノンの部屋に戻ってみたものの、レノンの姿はない。


 マノノはレノンが大好きだけど、きっとレノンはマノノの姿をもう見ることはできないと思う。


 契約者が妖精の姿を見ることができなくなってもずっと妖精は傍にいることもあるけれど、マノノは悲しいまま踊っても、レノンにあんまり幸せを運んであげられないと思う。


 無理をすればマノノも消えちゃう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。