↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな妖精の恋の詩  作者: まるねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/43

40 シャンの心配

「レノン! レノン!」


 いくら呼んでも返事が返ってこない。


 やはりレノンは私という存在を忘れはじめている。


 たまに思い出したように私の声に反応して私を撫でてくれるけれど、心はどこか遠いところを向いている。


 ……やっぱりレノンは私のことを忘れちゃうのかな。


 悲しくて涙がぽろぽろと零れ始める。


 昔から妖精たちは人間の元へと向かい、また聖樹に戻ってくる。ずっと人間と一緒に過ごしている妖精もいるけれど、数としては少ないんじゃないかな。


 ほとんどの妖精は人間から忘れられる。


 それはとてもいいことなの。願いごとが叶ってその人たちが次のステップに進んでいるということだから。


 分かっているの。

 レノンもそうなんだって。


 でも、マノノはずっとレノンと一緒にいたい。

 レノン、私を忘れないで欲しいの。


 でも、レノンを応援したい。だってマノノはレノンのこと大好きだから。




 そうこうしているうちにまたエリシャがレノンの家にやってきた。


 私はレノンの肩に止まって彼女の様子をじっと観察している。


「エリシャ様、ようこそ我が家へ」

「レノンさん、お出迎えありがとうございます。とっても嬉しいです。あ、あのっ、アリーサ様は……」

「母さんはサロンでエリシャ様を待っているよ。サロンに行こうか」

「はい」


 レノンはエリシャに手を差し出している。エリシャはというと、はにかみながらそっとレノンの手を取り、二人でサロンへと歩き出した。


 私は二人の姿を見て苦しくなったの。

 胸が痛い。

 私がここにいるのに気づいてくれない。


 悲しくてまた涙がぽろぽろと流れてくる。


「エリシャ様が来ることを母は今か今かと待っています」

「嬉しいわ。アリーサ様にはいつも良くしてもらっているの」


 聞こえてくる二人の会話。

 レノンの優しい声。


 ……もう、やだ。


 私はいたたまれず、ふわりとレノンの肩から飛び出し、部屋へと戻った。


「やっぱり、私はここにいちゃいけないのかな……」


 私はレノンの作ってくれたうさぎのぬいぐるみを抱えて窓の桟に座り、一人外を眺める。


「マノノ―!」

「シャン!」

「久しぶり! ……どうしたんだ? 目が腫れているじゃないか」

「……うん」


 シャンは私の様子に気づいてすぐに腫れた目を治療してくれる。

「何かあったのか? お前の契約者はどこだ?」

「レノンは今、サロンにいるの」

「お前、離れて大丈夫なのか? 好きなんだろ?」

「うん。でも、なんだかレノンを見ているのが辛くて」


「見ているのが辛い? どういうことなんだ?」

「レノンはね、エリシャって人が好きみたい」

「えっ!?」


 シャンはとっても驚いたような顔をしている。そしてわなわなと体を震わせて怒り始めた。


「なんて勝手なやつだ! マノノがこんなにも頑張って願いを叶えたってのに! マノノは死にかけたんだぞ!? なんでだよ! これだから違反者の子孫は――」

「シャン!」


 シャンが言いかけた言葉を制止する。


「だってそうだろ? マノノが悲しい顔になるのはおかしい。マノノばかり損しているじゃないか」

「でも、シャン。マノノはレノンのことが好きだから頑張ったの」


 シャンは私の手をぎゅっと握った。


「マノノ、聖樹に戻ろう? 俺は心配なんだ」


 真剣な表情でシャンは私に戻ろうと言ってくれている。


 でも、今戻ったらレノンはどうなるのかな。

 でも、レノンは私を忘れ始めている。


 きっと私が去っても何の問題ないのかもしれない。

 でも……。


「シャン、ごめんね。マノノ、もう少しだけ、もう少しだけここに居たいの」

「だめだ。戻るぞ! マノノを悲しませるやつのところになんて置いて置けるわけがない」

「シャン」


 私はシャンの名前を呼ぶことしかできない。悲しくてまた涙が零れる。それを見たシャンは自分のことのように私の涙を拭ってくれる。


「……マノノ。もう少しだけだぞ?」

「……うん」

「もう少しだけ、待って無理だったら俺が迎えにいくから」

「……うん」


「マノノ、これ。いつものやつ。俺、ちょっと用事を思い出したからもう行くわ」


 シャンは私に聖樹の朝露の入った水筒を渡してくれる。


「シャン、ありがとう。マノノ、大丈夫。無理しないから」

「そうだな。じゃあ、またくる」

「うん! シャン、ばいばい!」


 シャンに手を振って別れたはいいものの、レノンのことを思うと心が重くなってくる。やっぱりシャンについて行った方が良かったのかな。


 私がここに居てできることは限られている。


 私にできること……。


 私は心を落ち着かせるように息を一つ吐いた。


「くよくよするなんてマノノらしくないよね!」


 私は立ち上がり、クローゼットから鈴を取り出し、手に付けた。


 ―チリン。

 小さな鈴が音を立てる。


 例えレノンが私に気づかなくなっても、私という存在を忘れたとしても、私はレノンの幸せを祈ることしかできないし、レノンが幸せならそれでいいのかもしれない。


「くるり、くるり、幸せを運べ、レノンの元へ。マノノの祈りが彼の者に伝わるように。くるり、くるり、幸せを彼の者の元へ、くるり、くるり」


 私にできるのはレノンに幸せを呼び込むことだけ。

 この祈りだけは誰にも譲れない。私の踊り。


 汗が滲み、息が上がっても踊り続ける。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。