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小さな妖精の恋の詩  作者: まるねこ


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37 チクリと痛む心

「レノン、大丈夫? 調子が悪い?」

「いえ、なんでもありません」

「ん? もしかして怒ってるの?」

「……」


「なんでー? マノノ、何か悪いことしたっけ?」

「いえ、マノノ様は何も悪くありません。これは私の問題ですから。しばらくそっとしておいてください」

「レノンはそう言って私に背を向けた」


 ……どうしよう。


 レノンが怒ってる。

 なんでかな。


 私は窓際のソファに座った。


 レノンが怒っちゃった。

 どうしよう。


「うわーん。レノンが、レノンが怒ってる」


 私は悲しくなって涙がぽろぽろと零れ落ちた。


 きっと私が何かしたんだっ。

 レノンに嫌われちゃうのかな。


「……マノノ様」


 ふうと大きな息を吐いてレノンは私の元へやってきた。私はレノンの胸に飛び込む。


「レノン、レノン。レノン、マノノのこと嫌いになったー。マノノが学院に行ったからかな、マノノがわがまま言ったからかな、マノノが――」

「マノノ様、落ち着いて。怒っていたのは自分に対してです。セノールがマノノ様のことを心配しているのに自分は何も考えていなかった。

 それが恥ずかしかったんです。それにセノールに言われたから意地になっていたんです。彼は幼い頃から優秀で、非の打ち所が無い。嫉妬してしまうほどのいいやつなんです」


「マノノ、ごめんね。セノールとお話しちゃったから……」

「マノノ様、泣かないでください。そんなことありませんよ」


 私はレノンの胸でたくさん泣いたの。


 レノンは頭を撫でてくれている。


 レノンに心配かけちゃった……。


 悲しくなってまた涙がでたの。

 マノノがわがまましちゃったから。




 いっぱい泣いて気づいたらまた私は眠っていたみたい。


 目覚めると、日の光が射している。


 私は一人ベッドの中にいた。


 ふわりと飛び上がってレノンのベッドを確認するけれど、レノンは居ない。


 部屋の扉が少し開いているってことは……。


 レノンはもうお部屋にいないんだ。



 悲しくてレノンを探しに行こうと思ったけれど、きっともう学院に行ってしまったんだと思う。


 しばらく部屋で一人ひなたぼっこをしていると、クスターさんが部屋にやってきた。


「マノノ様、起きておられますか?」

「クスターさん、マノノ起きているよー」

「マノノ様、食事をお持ち致しました」

「うん」

「マノノ様、昨日学院で何があったのですか? 今朝のレノン様はマノノ様を心配しておられましたが、時間になってもマノノ様が眠っておられたので学院に出かけられました」


「えっとね、マノノ、昨日学院へ行った時にレノンのクラスで日向ぼっこをしていたの。その時にね、セノールって人がマノノに話し掛けてきたんだ」

「セノール……。セノール・リスティア伯爵子息様ですか。リスティア伯爵子息様がレノン坊ちゃんに何か言ったのでしょうか?」


「ううん。セノールが私を心配して声をかけてくれたの。多分それでレノンが怒ったの」

「そうでしたか。マノノ様には少し不安にさせてしまいますが、心配しなくてももう少しすれば坊ちゃんもまた元に戻りますよ。どうぞ、お食事をお召し上がりください」

「うん」


 私はクスターさんに言われて用意されたパンと果実水を食べた後、部屋でゆっくりと過ごした。 


 私がレノンと一緒に学院に行くと、レノンが怒っちゃう。


 寂しくてもお家にいた方がいいんだよね……。





 そうして私は中庭に出てお花の蜜を飲んだり、土の妖精とお話をして時間を過ごしているうちに学院の休みの日になった。


 ようやくレノンと一緒にいられると思ったのに。


 レノンは朝からにこにこと笑顔で鏡に向かって何度も髪の毛を撫でている。


「レノンー。今日は何して遊ぶ?」

「マノノ様、すみません。今日はエリシャ様が来るのでマノノ様と一緒に遊ぶのは午後からになります」

「そうなの? ずっと待っていたのに」

「あとで一杯遊びますから」

「本当? 絶対だよ?」

「ええ、約束します」


 そう言ってレノンは胸ポケットを開けていたけれど、私はどうしても行く気にはなれなかった。


 きっと二人で仲睦まじく話をしているのを見ているだけだもの。


「マノノ様?」

「マノノ、この部屋にいるから。レノンは会ってくればいいの」

「? わかりました。では行ってきますね」

「レノン、早く戻って来てね」

「もちろんですよ」


 そう言ってレノンは嬉しそうに部屋を出て行ってしまった。


 私はあの時のことを思い出してまた少し悲しくなったけれど、泣くのを我慢する。


 だって今日は午後からレノンと一緒にいられるから。


 楽しみだな。

 何をして遊ぼう。




 そうして一人窓際で風を感じながら過ごしていると――。


 下から声が聞こえてきた。どうやらエリシャが家に来たようだ。侍女さんたちが慌ただしく動いている。


 気になるけれど、絶対に会いに行かないって決めたの。


 私はぬいぐるみと一緒にふわふわと踊りを踊っていると、廊下から足音とともに声が聞こえてきた。


「エリシャ様、こちらです」


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