33マノノピンチ!恋のライバル!
翌日からもレノンは変わらず一日学院で過ごし、家に戻ってからは領地の勉強をしていて忙しそう。私も変わらずレノンのお母さんの部屋で過ごしていたんだけど、ここ数日はレノンのお部屋で過ごしている。
なるべくレノンから離れないようにレノンがいる時はなるべくくっついているようにしているけれど、それでも離れている時間が長いと疲れやすいかも。
―そんなある日のこと。
「レノン、どうしたの?」
レノンはいつものように家で領地の勉強をしていると、クスターさんが一枚の手紙を持ってきた。
レノンは手紙を受け取り、そこに記された名前に思わず笑みを漏らした。
そして彼は丁寧にペーパーナイフで封を開けて手紙を読み、何度も見返して笑みを溢している。
きっとこの手紙はエリシャからよね。
寂しい。
レノンの笑顔は私だけだったのに。
「エリシャ様からの手紙です。私の体調を気遣ってくれているのと、今度街に遊びに行こうというお誘いを受けたんです」
「マノノも行きたいっ」
「マノノ様はお留守番ですよ? 学院の帰りに行こうと書いてますし」
「マノノも行きたいの」
「ならこの日は母とお出かけできるように話をしておきます。いつも私の部屋だけでは退屈でしょうから」
「……えーんっ。マノノ、レノンと行きたいっ。レノンと過ごしたいのっ」
私は手紙を取り上げようとぱたぱたと飛び回るけれど、レノンは笑いながら手紙を大事そうに机の引き出しに入れて鍵を掛けた。
私はこんなにレノンのことが好きなのにっ!
なんでわかってくれないのっ?
悲しくて涙が止まらない。
だって、私はレノンと一緒にいなくちゃ……。
「もういい! レノンなんて知らないっ!」
私は窓際の自分のベッドにもぐりこんだ。
レノンのばかっ。
レノンのわからんちん!
私はもっとレノンの傍にいつだって居たいのに。 どうやれば伝わるの?
悲しくて、心が苦しくて、涙が止まらない。
いっぱい泣いて気づいたら眠ってしまっていたみたい。
私は窓を打つ雨音で目が覚めた。周りを見渡してもレノンの姿はない。
「レノン、レノンは?」
私が探し回っていると、私の声を聞いたクスターさんが部屋に入ってきた。
「マノノ様、おはようございます。レノンお坊ちゃんはもう学院へお出かけになりましたよ?」
「えーん。レノン!レノン!」
「マノノ様、今日は雨ですからいつもよりレノンお坊ちゃんはすぐに帰ってこられますよ」
「……うん」
いつまでも泣いていたってレノンは帰ってこないし、お腹も減った。
「マノノ様、アリーサ様のお部屋に参りましょうか。お食事もお持ちいたします」
「……うん」
私は元気なくクスターさんの肩に乗り、レノンのお母さんの部屋へ向かった。
「マノノ様、おはようございます」
「……レノンのお母さん、おはよう」
「目が腫れて。大丈夫ですか?」
レノンのお母さんは心配そうに私に駆け寄り、ハンカチを濡らして私の目に当ててくれる。
「レノンと一緒にいたいの。でも、レノンが私を置いていったのー」
「そうでしたか。最近レノンはマノノ様に身体を治してもらって嬉しくてしかたがないのでしょう」
「でも、でも。マノノは傍にいたいのに。いなくちゃいけないのに。マノノ妖精だからっ」
「マノノ様、私と一緒に美味しい物を食べませんか?先日、マノノ様が美味しいと言っていたお茶と、お菓子をお持ちします」
「うん……」
レノンのお母さんは一生懸命に私を宥めようとしてくれている。
その気持ちはとても嬉しいの。
泣きたくなる気持ちをぐっと我慢して私はレノンのお母さんと一緒にお菓子を食べることにした。
「マノノ様、お持ちしました。朝食と先日のお菓子ですが食べられそうですか?」
クスターさんは心配そうに聞いていたけれど、今の私なら難なく食べられそう!
「クスターさん、問題ないの! マノノ、全部食べられる!」
「無理をなさらないでくださいね」
クスターさんはそう言いながら私用のテーブルに置いてくれる。
「いただきます」
そうして私は運ばれてきた朝食と、お菓子をお腹いっぱいになるまで食べた。
窓の外に視線を向けるけれど、まだ雨は強く降っている。
レノンは大丈夫かなぁ。
心配だなぁ。
早く会いたいなぁ。
こんな日はとっても悲しくなってくる。
「奥様、レノン様から……」
クスターさんがレノンのお母さんに知らせがあったみたい。
「レノン! レノンは何て言ってたの?」
私は思い出したようにレノンのお母さんに聞いた。彼女は少し困ったような表情をしながら私に話をしてくれる。
「マノノ様、すみません。レノンの帰りは少し遅くなりそうです」
「なんで? まだ雨が降っているのに?」
「ええ、クラスメイトと一緒にお茶をしてくると」
私はその言葉を聞いて苦しくて涙が出てきた。
「えーん。マノノ、レノンに会いたいの! レノンが早く帰ってくるから我慢して待っていたのに。えーん」
私は無意識に部屋を飛び回っていた。
レノンが、レノンが離れていくの。
マノノから。
「マノノ様っ。落ち着いて下さい」
「えーん、えーん。マノノ頑張っているのにっ。レノンがっ、レノンがっ」
「マノノ様、危ないっ」
私は涙で視界がぼやけ、周りが見えていなかった。
クスターさんの声が聞こえてふと前を見ると、ランプが目の前にあり、気づいた時にはもう遅かった。
強い衝撃とともに私の意識はゆっくりと暗転していった。




