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小さな妖精の恋の詩  作者: まるねこ


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32 大好きなレノン!

「マノノ様」


 そうしてみんなでおしゃべりをしていると、私を呼ぶ声がして振り向いた。


「レノン!!」


 私はレノンがお茶会に来るとは思っていなかったので、嬉しくなってレノンに向かって飛ぼうとした。


 けれど……私は動けずにいたの。


「レノンさんっ」


 エリシャと呼ばれた女の子はレノンの名前を口にした。


「君は……」


 二人の視線が合い、動きが止まった。


 その様子を見ていた夫人たちはお互い視線でやり取りをし、扇子で口元を隠している。


 彼女たちは今の二人がどういう状況なのか理解しているみたい。


「……えっと、レノン、おかえりなさい。とりあえずここに座りなさい」


 レノンのお母さんが二人の間に入るように声をかけた。


「突然、お茶会に参加してしまい、申し訳ありません。マノノ様のことが気になってしまって。この方は……」

「彼女はエリシャ様よ。覚えているかしら?」

「ああ、エリシャ様だったのか。二つ下で幼い頃、我が家で遊んだのは覚えています」

「そうね。今日は私の快気祝いに駆けつけてくれたのよ」


「そうでしたか。エリシャ様、久しぶり。元気でしたか」

「はい。学年が違うとなかなか会えないものですね」


 二人は幼馴染なのかな? お互いを探るように視線を合わせて会話をしているように見える。ちょっと悔しい。


「あらあら、私たちはお邪魔のようね」

「ふふっ、本当に」


 横では夫人たちがそう会話をしている。


 レノンのお母さんも空気を読むように口を開いた。


「みなさま、ちょうどいい時間ですからそろそろこのお茶会もお開きにしましょうか」

「そうですわね」

「お茶会を邪魔してしまい申し訳ありません」

「いえいえ、構いませんわ。ふふっ、若いっていいわね」

「では私たちはこれで」


 夫人たちはにこやかな笑顔でレノンのお母さんに挨拶をして中庭を後にしていく。レノンも一緒に挨拶をしている。


「レノンさん、また連絡しますね」

「はい」


 二人はにかみ合うようにそっと視線を下に反らし、エリシャは母のオリーシュアと一緒に中庭を後にした。


「レノン、みんな帰ったし、マノノたちもお部屋に戻ろうよ」

「そうですね」

「ふふっ、嬉しいことばかりだわ。これもマノノ様が我が家へ来てくれたおかげです」

「? そうなのかな」


「母もこうして元気になったし、父にも笑顔が戻った。私もこうして毎日剣の練習もできるようになったし、マノノさまのおかげですよ」

「えへへ」

「レノン、少しサロンで話をしましょう」

「はい」


 レノンのお母さんはレノンを連れてサロンへと向かった。


 もちろん私もレノンの胸ポケットの中に潜り込んで一緒にサロンへ向かう。


 サロンに入ると、各々自分の椅子に座り、従者がお茶を準備している。


「レノン、エリシャ様のことをどう思ったのかしら?」

「た、単刀直入ですね。久々に会ったけれど、可愛い令嬢だと思います」


 お母さんの言葉にレノンは苦笑している。


「でもエリシャ様には婚約者がいるでしょう?」


 二人の会話はレノンの婚約者をどうするのかっていうことなのかな?


 マノノがここにいるっていうのにっ!


 モヤモヤするけれど、私は大人だから黙って二人の話を聞いている。


「それがね、彼女の婚約は無くなったのよ」

「えっ、そうなのですか」

「エリシャ様の婚約者が懇意にしていた女性にお子ができたらしいの」

「……その女性は平民ではなかったのですか」

「ええ、男爵令嬢よ」


 二人の声や表情を見ていると、貴族の女性だとだめなのかな。


 よく分からないけれど、貴族は色々と面倒なことが多いみたい。


 レノンはそれを聞いて少し微笑んでいる。


「婚約者は責任をもって男爵令嬢を妻に迎えるらしいわ。エリシャ様としていた婚約はもちろん白紙よ。私の快気祝いという名目でエリシャ様は我が家に来ていたのよ。新しい婚約者を探しにね」

「そうだったんですね」

「レノンはエリシャ様で問題ないかしら?」

「彼女なら私は構いません」

「そう。分かったわ」


 レノンのお母さんは彼の言葉を聞いて満足そうにお茶を飲んでいる。


「レノンはマノノとずっと一緒にいるの!」

「そうでしたね。私はマノノ様の傍にいますから」


 レノンは優しく微笑み、マノノの頭や頬を撫ではじめた。


 このまま変わらなければいいのに。


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