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小さな妖精の恋の詩  作者: まるねこ


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3/18

3身体が強いのはいいことなんだね!

「凄いねー。とっても丁寧に作られてる。レノンは器用なんだね!」

「褒めていただいて嬉しいです。私の趣味はあまり人に勧められるものではないので……」


 レノンの顔は途端に曇った。


 どういうことなのかな?

 こんなに器用に作れる人なんてそういないのに。


「なんで? とっても素敵だよ?」

「貴族は『強さ』を求められることが多いんです。けれど、私は昔から身体が弱くて剣術を習うこともできず、ただ本を読んだり、こうして小さな木工細工を作ったりするくらいしかできないので……」

「ふぅん。身体が強いのはいいことなの?」

「そうですね。身体が丈夫であれば乗馬や剣術などができるようになりますし……」


 レノンは少し困ったような表情をしながら答えた。


 身体が弱いからやりたいことができないんだ。

 なら治しちゃえばいいんじゃないかな?


 きっと元気いっぱいになればレノンも喜ぶに違いないよね!


 私は顎に手を当て、うんうんと頷きながらレノンに話をする。


「そっか。じゃあレノン、ベッドに横になって」

「……? 寝ればいいのですか?」

「うん」


 レノンは突然ベッドに寝ろと言われ、戸惑いながらも素直に横になった。


 私はふわふわと彼のお腹の上に乗り、ポケットから鈴の付いた腕輪を取り出す。


「そのまま力を抜いていてね」

「はい」


 私が彼に呼ばれた理由。

 レノンが困っていたら助けてあげるの。


 私はふうと息をゆっくり吐いた後、チリン、チリン、と鈴を鳴らし、ステップを踏みはじめた。


「くるり、くるり、あしきもの、かろやかなおどりとともにうきあがれ、くるり、くるり」


 私は踊りながら歌い、彼の胸の上でステップを踏んでいく。


 私の声に呼応するかのように彼の胸を中心に黒い靄が身体からじわりと滲みだしてきた。

 浮き上がった黒い靄を鈴の音が散らしていく。


「ふぅ、疲れちゃった。今日はこれくらいかな。レノン、少し元気になった?」


 私はレノンの顔元へ行って声を掛けると、レノンは驚いたように飛び起きた。


「ひゃぁっ」


 その勢いで私はころころと転がり、ベッドから落ちそうになるのを寸前のところで受け止められた。


「す、すみません。マノノ様が踊っていると、今まであった胸の息苦しさが徐々に減っていって、驚きのあまり、起き上がってしまいました。……身体が、今までに感じたことがないほど軽いです」


 彼はゆっくりと私をベッドに置くと、立ち上がって身体を動かして確認している。


「レノン、胸のあたりが特に悪いみたい。丈夫になるにはもう少しマノノ、踊らないとね」

「マノノ、踊ったら疲れちゃった」

「マノノ様!?」


 彼は驚いて駆け寄ってくるのが見えたけれど、私は気にすることなく、そのまま彼のベッドの上で目を閉じた。


 今日は初めてのことばかりで本当に疲れた。果実水も飲んだし、レノンにも会えた。


 明日はレノンとたくさん遊べるかな。





 翌日、私は鳥のさえずりに目を覚ました。


「う、うーん。いっぱい寝た。今日は何をして遊ぼうかな」


 そう言いながら目を開けた私は大きなベッドにちょこんとお布団が掛けられていることに気づいた。


 そういえば、ここは聖樹の枝じゃなかったんだった。


「お腹が減ったな……」


 私は大きなベッドから出て、ふわふわと部屋を動き回ってみるけれど、誰も居ない。


 扉を開けようとしても丸い持ち手のドアノブを回すこともできない。


「……どうしよう。レノン、レノン。どこー?」


 何度も呼んでみても静かな部屋には返事も返ってこない。このまま一人だったらどうしよう。


 部屋から出られない不安と恐怖が私の心に押し寄せてくる。


 ――カタン。


 部屋を飛び回り、窓際で一人泣いていると、羽根が木の人形に当たり、床に落ちてしまった。


 すると、物音が響いたのか部屋の外で誰かの足音近づいてくる音が聞こえてきた。


 私は怖くなり、急いで大きなベッドの布団に隠れたとき、扉が急にカチャリと開いた。


「マノノ様、どうされましたか?」


 その声の主は昨日、私をここへと連れてきたレノンだった。


「レノン! レノン! 怖かったっ」


 私は先ほどの緊張が解け、泣きながらレノンにしがみついた。


「どうされたのですか」

「起きたら誰も居なくて、お腹が減っても食べるものもないし、部屋からも出れないの」

「……それは本当にすみませんでした。すぐに用意をさせます」


 レノンはどうやら私が寝てしまったので隣の部屋で過ごしていたみたい。


 そして朝になって自室から物音がして部屋に入ってきたという。


 私はレノンにしがみついた。


 不思議と彼が傍にいると、先ほどの不安や空腹も一気に消えてなくなっていく。


 あまりレノンから離れるのはよくないみたい。


 レノンはすぐにクスターさんに指示を出している。食事の準備をしてくれるようだ。


「マノノね。どうもレノンと離れるのはだめみたい」

「そうでしたか。なるべくマノノ様と一緒にいるようにします。マノノ様が寝てから隣の部屋で作っていたんですが、窓際にマノノ様の部屋を用意してもいいですか」

「ん? 私の部屋?」


 私が不思議そうにしているとレノンはふっと笑みを浮かべ、隣の部屋からいくつかの木で作られた家具を持ってきた。その中には私の身体の大きさに合ったベッドもある。


「凄い! ベッドだ。ふっかふかだね。掛け布団の刺繍がとっても綺麗」

「喜んでもらえたのでほっとしています。木のベッドを作ったのは私ですが、マノノ様の話を聞いて布団を作ったのは母なんです」

「そっか。レノンのお母さんにちゃんとお礼を言わないとね」

「母も喜びます」


 私たちが話をしていると、ノックの後に扉が開かれた。


「マノノ様、朝食をお持ちしました」


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