29 レノン視点
「レノン、体の方はもう大丈夫なのか?」
「ああ、ようやく完治することができた。これからはみんなと変わらず運動してもいいと医者も言っていたよ」
「よかったな。今日は倶楽部の見学だっけ?」
「ああ、ちょっと楽しみにしているんだ」
「ちゃんと木剣や防具は揃っているのか?」
クラスメイトのジャスケードが心配して聞いてきた。
「もちろんさ。あらかじめ先生から聞いて準備はしておいた。見学だけだけど、もしかしたら少し参加するかもしれないっていっていたし」
「なら大丈夫だな。じゃあ、そろそろ行こうぜ」
「ああ」
私はジャスケードや倶楽部に入っている他の友人たちと一緒に練習場へと向かった。
騎士を目指している人も多いため、練習場はみんな真剣に練習に取り組んでいる。
こんなにも真剣に取り組んでいるのに私は将来騎士を目指すわけではない。
それに家でも教師を付け、練習をしていたけれど、集団について行けるほどの体力があるかどうか。
私は彼らの様子を見て少し不安になった。
「おいおい、レノン。大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」
「いや、練習を真剣に取り組んでいる彼らを見て付いていけるか心配でさ」
「最初はみんな同じように感じたさ。軽いものから始まって徐々に強度を上げていくから問題ないさ」
「そっか」
「先生―、レノンを連れてきたぜ」
「レノン君、よく来た。さっそく見学をしようか」
ジャスケードは「じゃあ」と言って他の友人たちと行ってしまった。
私は倶楽部の先生の説明を受けながら練習場を回っていく。そして不安に思っていたことも先生はしっかりと聞いてくれた。
「レノンは将来子爵になることが決まっている。ここの倶楽部に所属している生徒たちの何人かは将来爵位を継ぐ者もいるし、後を継がなくても何かあった時に替れるように領地の勉強をしている生徒もいる。心配しなくてもいい」
先生の話を聞いていくうちに不安も取り除かれ、前向きに考えられるようになった。
残り少ない学生のうちは身体を動かしたい。
マノノ様は寂しがるけれど、きっと喜んでくれるに違いない。
そして練習場を回った後、倶楽部が終わるまでの時間を練習着に着替えて他の人たちに混じって練習を始めた。
やはり他の人との体力差があり、付いていくのはきつい。けれど、先生も周りも「ゆっくり慣れていけばいい」と優しかった。不安も取り除かれ、私は入部することに決めた。
くたくたのまま家に戻ると、マノノ様が心配していたようでぴたりとくっついて離れそうにない。
嬉しいけれど、湯あみまで入ってこようとするのにはちょっと困ったかな。
父も母も私のことを凄く心配していたようだったけれど、楽しかったという話をすると、二人とも笑顔になっていた。
倶楽部に入ってから毎日練習をしていくうちにだんだんと体力も付いてきた。
体力があると授業も集中して聞くことができるし、前向きな気持ちになる。
友人も以前に比べずっと増え、会話も弾む。たまに「街へ遊びに行こう」なんて誘いもくるようになった。
病弱だった頃には考えられない生活だ。
そして倶楽部で練習をしているうちに気づいたんだ。練習場の端にはいつも数人の女の子たちがいて練習をしている人を見ては声援を送っている。
最初は私を見てくすくすと笑っていたけれど、みんなに追いつこうと必死に練習をしているうちに次第に応援してくれるようになってきた。
最近は練習終わりにタオルを渡してくれる子もいてちょっと気恥ずかしい。
倶楽部を終えて家に戻ると、元気な姿の母がマノノ様と一緒に出迎えてくれる。
母も元気になり、中庭でお茶をしたり、ダンスの練習をしたりと父の手伝いの傍らで趣味に勤しんでいるようだ。
母は以前よりもずっと元気になった。
そのおかげで父にも笑顔が戻ってきている。
ずっとこの幸せが続けばいいと思う。




