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小さな妖精の恋の詩  作者: まるねこ


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27/43

27 黒鈴

 私たちは明り取りの鉄格子の前に降り立った。


「マノノ、気を付けろよ?」

「もちろんだよ」


 私たちは窓の隙間から中へと入っていく。


 石造りの地下牢は下に行くほど薄暗くてジメジメしていて、カビの匂いもしているし、私は好きになれそうにない。


 地下牢はいくつかの部屋にわかれているようだが、私たちが入ったところはちょうどミナがいる場所だった。


 ここの部屋にはベッドと壺が一つ置かれているだけ。



 彼女はベッドに座って何か独り言を呟いている。


 私たちは彼女の頭の上までやってきた。もちろん彼女の手の届かない場所だ。


「誰!?」

「あら、気づいたの? さすが祝福を受けた子供ね」

「私を助けに来たんでしょう? 私は妖精から祝福を受けているんだから妖精に助けてもらえるの」


「何を言っているんだ、コイツは。妖精の祝福を受けていても妖精に仇なす者を許す理由はないだろ」

「シャン、早くしようよ。レノンのお母さんが起きちゃう」

「ああ、そうだな」


 私は黒い鈴を付け、シャンは黒い笛をポケットから取り出した。


「妖精の祝福は我らの願いと共に呪いに変われ」


 私はそう言いながらチリンと鈴を鳴らすと、シャンは笛を吹き始めた。


「!! はあ? 呪いってなによ! 私はそんなの信じないんだから!」


 ミナはそう言って飛び上がり、私たちを捕まえようとするけれど、私たちは更に上に飛ぶ。


「くるり、くるりと舞え。全ての悪しきものよ、この妖精の祝福を受けた者に集まれ。我らの祝福に仇なす者に苦しみを。くるり、くるり、集まれ、集まれ。祝福は呪いに切り替われ。くるり、くるり」


 私が踊り始めると、壁や床の隅から黒いモヤが滲みだしてきた。


「ヒッ!」


 ミナにも黒いモヤが見えるようだ。


 私たちはミナを見下ろしながら踊りを続ける。


 黒いモヤはじわじわとミナの周りに集まりはじめた。


「嫌! あっちにいって!」


 ミナはベッドの上に乗って黒いモヤから逃げようとしているが、逃げ場のないこの場所では抵抗することもできず、じわり、じわりと足元からモヤがミナに纏わりついてきた。


「いやぁぁぁぁ! たすけてぇぇぇ!」


 黒いモヤは彼女を包み込んでいき、とうとう彼女は黒一色になった。


 モヤは彼女の口や目、鼻などから中に入り込んでいく。


 それでも私たちは踊りを止めない。


 シャンの笛の音に合わせて鈴が鳴る。



 そうして私たちが踊り終わる頃には黒いモヤは無くなり、また静かさを取り戻した。


 ミナは目を見開き、どこか一点を見つめている。


「シャン、いこっか」

「ああ。こんなジメジメで薄暗い部屋なんて一刻も早くおさらばしようぜ」


 私たちはまた明り取りの窓から外へと出た。


「マノノ、この後どうするんだ?」

「私はまだこの家にいるよ。レノンのことが好きだし、離れたくないの」

「……そっか。俺はこのまま長老の元へ戻るよ」

「わかった。シャン、いつもありがとう」


 私は黒い鈴をシャンに渡した。

 シャンは真剣な表情で鈴と笛を鞄に仕舞っている。


「マノノ、また何かあったら俺を呼べよ? 心配だな。マノノは人間を好きすぎるからな。また同じようなことが起こらないといいんだが」

「大丈夫だよ。マノノも、もっとしっかりしないといけないと思ってるもん」


「心配だ。じゃ、俺は行くから」

「シャン、ありがとう。またね!」


 シャンはそう言って聖樹の方へ飛んでいく。


 私も部屋に戻るために向きを変えた。




 ミナという人間はこれから苦しみが訪れるだろう。


 死のうとしても、苦しみを味合わせるために生かされている状態になる。


 もちろん今まで見えていた妖精たちの姿は一切見えなくなる。


 でもそれは彼女が望んだことだし、しかたがないよね。




 私は何事もなかったかのように部屋に戻ると、レノンのお母さんはまだ休んでいたわ。


 レノン、まだ帰ってこないなぁ。


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